受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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 幼いころの言語体験は、根本的なことばの力をつけてくれますが、読書はその大きな要素となり得るものです。“子どもならでは”の感性を持ち、時間的にも少し余裕がある低学年のうちが、この体験をさせるチャンスといえます。読書を生活の中に自然に取り入れるために、保護者はどのような役割を果たせばよいのでしょうか。新浦安校校舎責任者に伺いました。

第116回「低学年における
読書との付き合い方は?」
回答者/新浦安校校舎責任者

少しでも時間を作って読み聞かせを
保護者が主導して、興味を持てる本を探す

 6年生の入試直前期に国語の記述問題の採点をしていて、ことばで説明するのはとても難しい登場人物の細やかな感情を、極めて上手に説明できている解答に出合ったことがありました。入試が終わった後、その生徒の保護者の方にお話を伺ったところ、「幼いころにかなりの頻度で読み聞かせをしていた」とおっしゃっていました。わたしは「あの優れた表現は、幼いころに読み聞かせをしてもらった記憶があったからこそ書けたものなのだろう」と感じました。幼いころの言語体験は、かけがえのないものとして、子どもたちの心の中に残っていくと思います。
 お子さんが就学する前には、絵本の読み聞かせをしていたという保護者の方も多いのではないでしょうか。しかし、小学校に入学すると、生活の変化に対応することに精いっぱいで、余裕がなくなったり、保護者の方が「字が読めるようになったので、自分で読めるだろう」とお子さんに任せたりすることが原因となり、読み聞かせをする機会がなくなってしまったというご家庭も多いかと思います。
 そのような場合、興味があるお子さんはみずから本を読むようになっていきますが、一方で、本との距離ができてしまうお子さんもいます。そういうお子さんが自力で読書に向かうのはなかなか難しいため、低学年においても、保護者の方が読み聞かせをすることが理想だと思います。子どもは本を読んでもらうのが大好きです。夜寝る前の10分、あるいは休日に少しずつでも構いませんので、読み聞かせの時間を取るようにしてください。
 その際、保護者の方が読み聞かせをする本を探してあげる必要があります。まずは、お子さんが「楽しい」と思えるものを選ぶことが大切です。お子さんがおもしろいと思うものは、大人の理想とは違っても、どんどん読んであげましょう。
 そのうえで、世界を広げていくために、お子さんが興味を持ちそうな本を探してあげる必要も出てきます。たとえば、ファンタジーは設定が複雑だと、大人は楽しめても、まだ想像力が十分に発達していないお子さんには、難しく感じることもあります。また、絵本から本へ移行する時期には、挿絵が入ったもののほうが親しみやすいでしょう。インターネットで調べる、書店や図書館にお子さんと一緒に行く、場合によっては司書に聞いてみるなど、少し手間はかかるのですが、お子さんに合った本を見つけてください。
 低学年では、自然現象について疑問を持ち、「なんで、どうして?」を連発する時期もあります。そのようなときには、低学年向けに科学的な現象を説明した本を読むのもお勧めです。

幼いころに感じた本の世界の安心感が
思春期以降を支えてくれる
“心の貯金”に

 読み聞かせによって、お子さんが本に興味を持ち始めると、最初の部分を読んであげただけで自分で続きを読んだり、みずから図書館などで探して、さまざまな本を読み始めたりすることがあります。それでも、高学年でも継続して読み聞かせをするご家庭もあるようです。高学年になると、親子の関係も難しいものになりがちですが、読み聞かせは親子で穏やかな時間を共有できる貴重な機会にもなります。
 公立中高一貫校の一部には、入試で日本語の文章を聞かせてメモを取らせ、その内容についての設問を出す学校があります。授業の際に、わたしがテキストの文章をやや速めに読んで、生徒にメモを取ってもらい、問題を解かせたことがありますが、お子さんによって、ヒアリングの能力に差があることがわかりました。ヒアリングの能力と読み聞かせに関連があるのかはわかりませんが、「本を読んでもらって、じっくり聞く」という経験は、必ずプラスになるはずです。
 子どものころにだけある感性、たとえば、夕方家に帰ってきて、家から漏れる明かりや夕食の匂いを感じたときの安心感は、大人になるといつしか忘れてしまうものです。しかし、そのような時期に、本を通じて安心できる世界が心の中に広がると、思春期以降に葛藤があったときに支えてくれる経験となり、“心の貯金”ができると思います。

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