受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあ何でも相談室

 特に中学入試の算数においては、粘り強く考え抜く力が求められますが、これは一朝一夕に身につくものではありません。なるべく低学年のうちから、日常生活でも考える経験をしておくことが、将来の思考力につながります。保護者はどんなことに気をつけたらよいのか、豊洲校校舎責任者にアドバイスを頂きました。

第119回「思考力を養うために低学年の
保護者が気をつけることは?」
回答者/豊洲校校舎責任者

子どもが困ったときに助けるのではなく
どうしたら解決するかを考えさせる

 サピックスのカリキュラムは、4年生からの3年間で入試に備えるようにできているので、4年生になる前に「学びの姿勢」を養うのが理想的です。
 現代では、1世帯当たりの子どもの数が減少しており、子ども1人にかかわる大人の数が増えています。塾や学校で「面倒見の良さ」をアピールしているところも多く、そこでは子どもたちがつまずいたり困ったりしないように、サポートする態勢が整えられています。しかし、このような環境が、子どもが自分で考える機会を奪い取っているともいえるのです。
 本来は日常生活でも勉強でも、困ること・間違えること・うまくいかないことは当たり前にあります。そのようなときに、お子さん自身が、何が原因で困っているのか、どのようにすれば乗り越えられるのかを考えることで、思考力を育むための経験が積み上げられていきます。保護者の方は、お子さんが失敗することを恐れて、手を貸してしまいたくなるかもしれませんが、じっと我慢して見守ることも大切です。そうすると、お子さんは何とか自分で工夫して、解決する方法を見つけられるようになるでしょう。
 勉強においては、「たくさんの知識を、速く、正確に、アウトプットすること」が注目されがちですが、「じっくりと考えること」が本来の学びの姿勢だと思います。「どうしてこの解き方になるんだろう」「何が原因で解けなくなっているのだろう」とお子さんが考えているときに、大人がすぐに「こうしてごらん」と教えてしまうのは好ましくありません。サピックスの授業でも、解き方のポイントごとに考える時間を設けて、講師が“待つ”姿勢をとるようにしています。
 ご家庭でお子さんに「この問題はどう解いたらいいの?」と聞かれたときは、「これはこう解くんだよ」とすぐに説明するのではなく、「一つ前の問題はできたかな?」「前の問題とどこが違うのかな?」というように、寄り添いながらも自分で考える姿勢を引き出してあげましょう。

興味を持ったことにみずから取り組み
将来につながる考え抜く力を培う

 どうしても「正解を出さなくてはいけない」と思い込み、結論を急いでしまう保護者の方もいらっしゃいますが、そもそも初めて見る問題は間違えたり、うまく解けなかったりする可能性が高いものです。そこですぐに解き方を説明してあげたのでは、考えることをしなくなってしまいます。思考力は「これをやらせたら身につく」というものではありません。お子さんが自分で考えるようになるためには、どのような時間の使い方をすればよいのか、考えてみることも大切だと思います。
 たとえば授業において、算数があまり得意ではないお子さんは、「解けない」と判断するタイミングが早く、考える時間を使わずに、ただ解説を待っているだけになっていることがあります。一方、算数が得意なお子さんは、「解けない」とあきらめずに、考える時間を最大限に使って自分で解決しようと努力します。実は、このような「考える時間の積み重ね」が思考力を伸ばすことにつながっていくのです。
 また、低学年では、勉強とそれ以外のものとの境目がはっきりしていない部分もあります。お子さんが自分で興味を持ったこと、おもしろそうだと思ったことにのめり込み、みずから調べてみるという経験も貴重です。自分でこだわって追い求める姿勢が、考え抜く力の源になります。一見、勉強に関係がないように思えることでも、将来につながる可能性もあるので、保護者の方はできるだけ制止せずに温かく見守っていただけたらと思います。
 小さいうちの勉強は、言われたことを言われたとおりに実行すれば済んでしまうかもしれませんが、将来は「何を学ぶのか」も自分で決めなくてはなりません。自分なりに考えて解決をめざすことは時間がかかり、効率が良いものではありませんが、大人が“待つ”姿勢を持ち、お子さんが自分でやるという姿勢を大切にしてください。

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