受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

そこが知りたい!


東大合格者の3人に2人が学んだ
中高一貫校は
どうして強いのか

 東京大学への合格実績は、高校の進学指導の力を測る目安の一つともなり、毎年、週刊誌などのメディアでも大きく取り上げられます。保護者の方も、学校ホームページの進学状況やこれらの記事をチェックして、お子さんの志望校選びの参考にすることもあるかもしれません。今年の実績でも、順位の変動はあるものの、おなじみの中高一貫校の名前が並んでいます。今回はY-SAPIX東大館の奥村直生館長に、中高一貫校が難関大学に多くの合格者を輩出する理由や、これからの大学入試に求められる力とその対策について伺いました。

難関大学・医学部進学への
意識が高い中高一貫校生

 東大合格者数の高校別ランキングは、受験業界のみならず、一般的にも関心が高い話題です。2018年度の結果を見てみると、開成が175名でトップの座を守りました。これで37年連続の1位です。2位以下もおなじみの顔ぶれで、筑波大学附属駒場(109名)、麻布(98名)、灘(92名)、栄光学園(77名)、桜蔭(77名)、聖光学院(72名)と、中高一貫校が続きます。

 一方で公立の中高一貫校も健闘しており、東大合格者数を大きく伸ばしている学校もあります。県立千葉が22名、都立武蔵が13名、都立小石川中等教育学校が12名、神奈川県立相模原中等教育学校が9名、都立白鷗が6名、都立桜修館中等教育学校、都立南多摩中等教育学校、横浜市立南がそれぞれ5名の合格者を出しています(併設型の場合は高校からの入学者の実績を含む)。

 現役東大生が編集・発行している『東京大学新聞』では、新入生の出身高校を調査しています。同紙に掲載された今年の新入生アンケート(回答率91.5%)によると、新入生に占める私立の中高一貫校出身者(高校からの入学者を除く)の割合は51.7%。これに公立(5.3%)と国立(5.1%)の中高一貫校出身者を加えると、新入生全体の62.1%に上ります。これに対して、中高一貫ではない公立高校は28.8%と3割を切りました。今後も中高一貫校に衣替えする公立高校は増えていくでしょうから、中高一貫校出身者の割合がさらに増えていくものと思われます。

 また近年は、国公立大学の医学部医学科も、人気の進学先として注目を集めています。今年の国公立大学医学部医学科の合格者数を見ると、東海(130名)、洛南(95名)、灘(94名)、ラ・サール(85名)、四天王寺(61名)、愛光(61名)、東大寺学園(58名)、西大和学園(55名)、久留米大学附設(55名)など、特に西日本の中高一貫校が強さを見せています(「週刊ダイヤモンド」2018年5月19日号より)。

 このように中高一貫校の強さが続いていることについて、Y-SAPIX東大館の奥村直生館長は次のように話します。

 「中学・高校の6年間を同じ環境で学び、高校入試を挟まずに一貫したカリキュラムで学習することは、大学入試に対しては断然有利です。2020年度から始まる新しい大学入試に向けても、中高一貫校ではすでに対策をとっているところも多く、今以上に強さを発揮することが考えられるでしょう」

東大合格者の出身高校
東大新入生アンケート/東京大学新聞調査(2018年回答率91.5%)
東大合格者の出身高校

中高一貫校の強み1 英語の民間試験利用では
先取りできるカリキュラムが有利

 現在の高1が大学入試を迎える2020年度から入試制度が大きく変わります。では、その新しい入試制度において、中高一貫校の生徒が有利なのはどのような点でしょうか。

 現在実施されている「大学入試センター試験」に代わって、2020年度から導入されるのが「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」です。そのなかで最も大きく変化するのが英語。「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を評価するため、民間の資格・検定試験を活用することが決定しています。2023年度までは共通テストと民間試験を併用し、それぞれの大学が利用方法を指定することになっていますが、国立大学では共通テストと民間試験の両方を利用することが、すでに発表されています。

 共通テストの実施時期は、センター試験と同様の1月中旬ですが、民間試験は高3の4〜12月に2回まで受験が可能で、良いほうの成績を利用します。これは、英語の学習をかなり前倒しで終えなくてはならないということを意味します。

 奥村館長は、「中高一貫校では、もともと高3の内容を高2までに学び終えるカリキュラムを採用している学校が多く、高3では志望校合格に向けての問題演習などに専念できる環境です。中学の段階から、英会話の授業や留学のシステムなども充実しているので、特に『書く』『話す』を重視した実践的な英語力を身につけることも可能です」と話します。

 中1から高3までを見据えたカリキュラムで学習でき、独自のプログラムを取り入れることもしやすい中高一貫校は、入試改革後の英語に対してはさらに有利な状況です。もし、高3の早い時期に英語の民間試験で良いスコアを残せれば、それ以降は英語以外の科目や共通テストの英語の対策に専念することも可能になり、ほかの科目でも優位な立場になります。

東大合格者 高校別ランキング

学校名(所在地) 合格者数
2018年(内現役生) 2017年
◎ 開成(東京) 175(116) 161
△ 筑波大学附属駒場(東京) 109(80) 102
◎ 麻布(東京) 98(61) 79
◎ 灘(兵庫) 92(70) 95
◎ 栄光学園(神奈川) 77(50) 62
◎ 桜蔭(東京) 77(58) 63
◎ 聖光学院(神奈川) 72(56) 69
△ 東京学芸大学附属(東京) 49(22) 46
◎ 渋谷教育学園幕張(千葉) 48(32) 78
  日比谷(東京) 48(33) 45
◎ 海城(東京) 48(41) 49
◎ 駒場東邦(東京) 47(27) 52
◎ 浅野(神奈川) 42(36) 32
◎ ラ・サール(鹿児島) 42(32) 40
△ 筑波大学附属(東京) 38(23) 39
◎ 早稲田(東京) 38(30) 30
◎ 女子学院(東京) 33(29) 36
◎ 東海(愛知) 30(17) 30
◎ 西大和学園(奈良) 30(26) 35
◎ 武蔵(東京) 27(18) 32
◎ 甲陽学院(兵庫) 27(19) 39

※各高校のホームページより 学校名の前の◎印は私立、△印は国立、無印は公立

中高一貫校の強み2 学校内外でのさまざまな活動を
「eポートフォリオ」で評価

 英語と並んで大きな変化といえるのが、一般選抜(現・一般入試)でも筆記試験だけではなく、調査書や部活動・コンクールの活動歴などの評価を取り入れることです。これに伴い、生徒の学校内外での活動を記録し、データとして管理する「eポートフォリオ」の整備も進んでいます。入試の際にどのように利用するのか、まだ具体的には示されていませんが、もし点数化されるのであれば、これらも大きな得点源になるものと考えられます。

 「中高一貫校では高校入試がないため、部活動や学校行事に打ち込んだり、科学系のオリンピックやさまざまな分野のコンクールに参加したりするなど、自分の興味があることに思う存分チャレンジできます。なかには、長期間の準備が必要な活動もあるので、高校に入学してから始めようと思っても難しいケースもあります。中高一貫校では、生徒一人ひとりが自分のやりたい活動を見つけ、それを実現できる可能性が広がっているのです」(奥村館長)

 さらに今後は、国公立大学や医学部で総合型選抜(現・AO入試)や学校推薦型選抜(現・推薦入試)の入学枠を拡大する方針が示されています。もちろん一定の学力は必要ですが、「高校でどんな活動をしてきたか」ということがこれまで以上に評価されるようになると考えられます。また、こうした選抜は一般選抜よりも入試日程が早いため、早期に準備を進めることが必要になります。これについても、やはり6年間を使って、さまざまな活動に取り組むことができ、進路についてもじっくりと考えることができる中高一貫校のほうが有利といえるでしょう。

18年7月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.3:
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