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で上位を独占!中高一貫校はどうして強いのか

 毎年、週刊誌などのメディアでも大きく取り上げられ、世間の注目を集めている東京大学の高校別合格者数ランキング。今年も上位には毎年顔を出すおなじみの中高一貫校の名前が並び、合格者数を大きく増やした学校もあります。お子さんの志望校選びの際に、大学の合格実績を参考にする保護者の方も少なくないのではないでしょうか。今回はY-SAPIX東大館の奥村直生館長に、中高一貫校が難関大学の入試に強い理由や、これからの大学入試への対策について伺いました。

東大合格者数の6割以上を占める
中高一貫校出身者

 2019年度の東京大学の高校別合格者数ランキングを見てみると、相変わらず中高一貫校が強さを発揮しています。トップは開成の186名で、なんと38年連続という記録です。2位以下にも中高一貫校が並び、筑波大学附属駒場(119名)、麻布(100名)、聖光学院(93名)、灘(74名)、渋谷教育学園幕張(72名)、桜蔭(66名)、駒場東邦(61名)と続きます。特に聖光学院と渋谷教育学園幕張は、昨年から20名以上伸ばし、順位を上げました。

 一方で、公立の中高一貫校も着実に力をつけ、安定した実績を出し続けています。県立千葉が19名、都立小石川中等教育学校が16名、都立武蔵と横浜市立南がそれぞれ8名、都立桜修館中等教育学校が7名、都立両国と神奈川県立平塚中等教育学校がそれぞれ5名、都立三鷹中等教育学校とさいたま市立浦和がそれぞれ4名の合格者を出しています(県立千葉など併設型の場合は、高校からの入学者の実績を含む)。

 このような中高一貫校の強さは、現役東大生が編集・発行している『東京大学新聞』の調査にも表れています。同紙に掲載された今年の東大新入生アンケート(回答率92.0%)によると、新入生に占める私立の中高一貫校出身者(高校からの入学者を除く)の割合は52.2%。さらに公立(5.1%)と国立(5.0%)の中高一貫校出身者を加えると、新入生全体の62.3%を占めます。これに対して、中高一貫ではない公立高校は29.3%。多少の増減はありますが、ここ数年は30%前後で推移しています。都立の併設型中高一貫校5校(富士・武蔵・両国・大泉・白鷗)が2022年までに高校募集を停止するのをはじめとして、今後も公立高校の中高一貫化が予定されているため、中高一貫ではない公立高校の出身者の割合は、さらに減っていくことも考えられます。

 また、最近、東大や京大と並んで人気の進学先となっているのが、国公立大学の医学部医学科です。今年の国公立大学医学部医学科の合格者数は、東海(116名)、灘(90名)、洛南(78名)、ラ・サール(68名)、甲陽学院(63名)、開成(61名)、久留米大学附設(56名)、東大寺学園(54名)などとなっています(「週刊朝日」2019年4月26日号より)。特に西日本の中高一貫校が強いことが特徴です。

 このような中高一貫校の強さについて、YーSAPIX東大館の奥村直生館長は次のように話します。

 「中学・高校の6年間を、高校入試を挟まずに一貫したカリキュラムで学習するのが有利であることは、東大や医学部医学科の合格実績から見ても明らかです。目前に控えた大学入試改革では、『多面的・総合的評価』に変わっていくため、『高校で何をやってきたか』が大きな意味を持つようになり、中学校から連続して6年間、さまざまな活動に取り組める中高一貫校が、さらに強さを発揮することも考えられます」

東大合格者の出身高校
東大新入生アンケート/東京大学新聞調査(2019年回答率92.0%)
東大合格者の出身高校

中高一貫校の強み1 先取りできるカリキュラムのため
英語の民間試験の受検が有利に

 では、どのような点で中高一貫校の生徒が有利になるのでしょうか。

 現在の高2生が大学受験をする2021年度入試より、新しい制度の入試がスタートします。「大学入試センター試験」に代わって「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」が導入され、現在はすべてマークシート方式であるのに対して、国語と数学で記述式の問題が3問程度出題されるようになります。

 そのなかでも、制度として最も大きく変化するのは英語です。「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を評価するため、民間の資格・検定試験を受検することが必要になります。2024年度入学者までは共通テストと民間試験を併用し、それぞれの大学が利用方法を指定することになっていますが、現在のところ、国立大学では共通テストと民間試験の両方を課す方針の大学が多く見られます。

 共通テストの実施時期は、センター試験と同様の1月中旬ですが、民間試験は高3の4~12月に2回まで提出が可能で、良いほうの成績を利用します。仮に高3の4月に受検し、それなりの点数を獲得しようと思ったら、英語の学習をかなり前倒しで終えなくてはなりません。

 奥村館長は、「6年間をフレキシブルに使うことができる中高一貫校では、もともと高3の内容を高2までに学び終えるカリキュラムを採用している学校が多く、高3では志望校合格に向けての問題演習などに時間を割くことができます。もちろん中高一貫ではない高校でも、3年間で学ぶ内容を高3の夏ごろまでに終える学校もありますが、学校行事や部活動なども含めて、多くの活動を短い期間に詰め込まなくてはなりません」と話します。

 中高一貫校では、独自のプログラムを取り入れやすいため、中学の段階から英会話の授業や留学のシステムなどが充実している学校も多くあります。これまで特に弱点とされてきた「書く」「話す」の技能を、早い時期から習得できる環境が整っています。もし、高3の早い時期に英語の民間試験で良いスコアを残せれば、それ以降は英語以外の科目や共通テストの英語の対策に専念することも可能になります。

中高一貫校の強み2 学校内外での活動が
「eポートフォリオ」で評価される

 これまで筆記試験が中心だった一般入試の内容も、大きく変わる可能性があります。2021年度以降の一般選抜では、筆記試験だけではなく、調査書や部活動・コンクールの活動歴などの評価を取り入れることとされています。これに伴い、生徒の学校内外での活動を記録し、データとして管理する「eポートフォリオ」の活用を発表した大学もあります。合否にかかわる形での活用を発表したところはまだ少ないようですが、今後の動向が注目されます。

 さらに、国公立大学や医学部で、総合型選抜(現・AO入試)や学校推薦型選抜(現・推薦入試)の入学者を拡大する方針が示されています。もちろん一定の学力は必要ですが、高校の内外での部活動・行事・ボランティアなどの活動が、これまで以上に評価されるようになると考えられます。これらの活動ではエビデンス(証拠・根拠)が重視されるため、自分に合うものを見つけて積極的に挑戦し、成果を出すことが求められます。

 「中高一貫校では高校入試がないため時間的に余裕があり、部活動や学校行事に打ち込んだり、科学系のオリンピックやさまざまな分野のコンクールに参加したりするなど、自分の興味があることに思う存分チャレンジできます。科学オリンピックやコンクールへの出場・入賞については、どうしても長期間の準備が必要になり、高校に入学してから挑戦しようと試みても、現実的には難しいケースもあります。中高一貫校には、生徒一人ひとりが自分のやりたい活動ができる可能性が広がっているのです」(奥村館長)

東大合格者 高校別ランキング

学校名
(所在地)
合格者数
2019年
(内現役)
2018年
◎ 開成(東京) 186(140) 175
△ 筑波大学附属駒場(東京) 119(88) 109
◎ 麻布(東京) 100(70) 98
◎ 聖光学院(神奈川) 93(77) 72
◎ 灘(兵庫) 74(59) 92
◎ 渋谷教育学園幕張(千葉) 72(47) 48
◎ 桜蔭(東京) 66(53) 77
◎ 駒場東邦(東京) 61(41) 47
◎ 栄光学園(神奈川) 54(34) 77
◎ 久留米大学附設(福岡) 50(36) 23
  日比谷(東京) 47(29) 48
◎ 海城(東京) 46(31) 48
△ 東京学芸大学附属(東京) 45(23) 49
◎ 西大和学園(奈良) 42(22) 30
  県立浦和(埼玉) 41(19) 22
◎ 浅野(神奈川) 39(33) 42
◎ 東海(愛知) 37(26) 30
◎ 甲陽学院(兵庫) 34(24) 27
◎ ラ・サール(鹿児島) 34(20) 42
△ 筑波大学附属(東京) 32(22) 38

※各高校のホームページより 学校名の前の◎は私立、△は国立、無印は公立

19年7月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.3:
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