受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

そこが知りたい!

東大合格者のうちの6割以上を占める 
中高一貫校はどうして強いのか

 東京大学の合格者数は、毎年、週刊誌などのメディアでも大きく取り上げられています。高校の進学指導の力を測る目安の一つともいえるので、保護者の方のなかにも、それぞれの学校の進学実績などをチェックして、お子さんの志望校選びの参考にする方も少なくないのではないでしょうか。今年の高校別合格者数ランキングでも、上位には常連となっている中高一貫校の名前が並んでいます。そこで、今回はY-SAPIX教育情報センターの堅田一郎室長に、中高一貫校が難関大学に多くの合格者を輩出する理由や、これからの大学入試への対策について伺いました。

東大合格者数ランキング
上位にはおなじみの中高一貫校

 受験業界のみならず、一般的にも大きな話題となる東大合格者数の高校別ランキング。2020年度もトップは開成(185名)です。これで39年連続の1位となりました。2位は筑波大学附属駒場(93名)。以下、桜蔭(85名)、灘(79名)、渋谷教育学園幕張(74名)、麻布(63名)、駒場東邦(63名)と、こちらも昨年度とほぼ同じ顔ぶれの中高一貫校が続いています。

 一方で、公立の中高一貫校も健闘しており、安定した合格実績を出しています。県立千葉が20名、都立小石川中等教育学校が10名、都立桜修館中等教育学校が9名、都立武蔵が8名、横浜市立南が7名、都立両国と都立大泉がそれぞれ6名、神奈川県立相模原中等教育学校が5名の合格者を出しています(県立千葉など併設型の一貫校の場合は、高校からの入学者の実績を含む)。

 現役東大生が編集・発行している『東京大学新聞』では、新入生の出身高校を調査しています。同紙に掲載された昨年の新入生アンケート(回答率92.0%)によると、新入生に占める私立の中高一貫校出身者(高校からの入学者を除く)の割合は52.2%。これに公立(5.1%)と国立(5.0%)の中高一貫校出身者を加えると、新入生全体の62.3%に上ります。これに対して、中高一貫ではない公立高校は29.3%と3割を切っています。

 都立の併設型中高一貫校では、都立富士と都立武蔵が21年度から、都立両国と都立大泉が22年度から、それぞれ高校募集を停止し、中学での生徒募集の規模を拡大します。都立白鷗は時期は未定ですが、同様に完全中高一貫校に移行することが予定されています。また私立でも、本郷が21年度から、豊島岡女子学園が22年度から高校募集を停止します。このような傾向に注目すると、中高一貫校出身者の割合が今後さらに増えていくことが予想されます。

 近年は、西日本の学校を中心に、国公立大学の医学部医学科も、進学先として人気が高まっています。今年の国公立大学医学部医学科の合格者数は、東海(94名)、灘(79名)、洛南(69名)、四天王寺(67名)、久留米大学附設(65名)、愛光(63名)、青雲(61名)、ラ・サール(61名)の順になっています(週刊朝日2020年4月24日号より)。西日本の中高一貫校が、圧倒的な強さを見せています。

 このように中高一貫校の強さが続いていることについて、Y-SAPIX教育情報センターの堅田一郎室長は次のように話します。

 「中学受験で激しい競争を経験した生徒は、『負けずにがんばる』という強い気持ちを大学受験にも生かすことができます。周りの生徒のレベルも高い環境で質の良い授業を受け、6年間をかけて大学受験に備えることができるのは、かなりのアドバンテージになるといえるでしょう」

東大合格者の出身高校
東大新入生アンケート/東京大学新聞調査(2019年回答率92.0%)
東大合格者の出身高校

中高一貫校の強み1 数学は特に積み重ねが大切
6年間のカリキュラムが有利に

堅田 一郎 室長(Y-SAPIX教育情報センター)
堅田 一郎室長
(Y-SAPIX教育情報センター)

 堅田室長は「中学受験での算数と同様に、大学受験では数学が鍵を握ります」と話します。その理由は、一つひとつの学習内容を積み上げていくことが特に大切な科目であるため、後から挽回しようと思ってもなかなか難しくなってしまうからです。

 中学受験を経験した生徒は、算数でもかなり高度な内容まで踏み込んで学習してきたので、中学に入学した時点でも、すでに有利な立場にあります。高校入試を挟まず、6年間を見通したカリキュラムで学べることは、さらに有利になります。一般的に中高一貫校の数学の授業は進度が速く、高2までに高校3年間の内容を学び終えて、高3では演習を中心に行う学校も少なくありません。高校入試でいったんリセットされることがなく、中学から高校へそのままの流れで学習していけるので、積み重ねが成果を生みやすいのです。

 また、数学の知識は理科でも必要になります。特に物理は、数学と密接に関連しており、数学が苦手だと物理を理解することも難しくなるでしょう。

 「文系をめざすのであれば、数学は関係ない」と思うかもしれませんが、ほとんどの国公立大学では、大学入学共通テストの数学が必須です。また、東大などの難関国公立大学では、文系の学部でも二次試験において数学が課されます。私立大学の文系でも、社会と数学が選択できる場合には、選択肢を幅広く持つことができますし、経済・経営・商学部などでは入学後にも数学の知識が求められます。

 「中学受験の際に算数が苦手だったとしても、6年間で追いつくことは可能です。中1から新たな気持ちで数学に向き合い、こつこつと取り組むことが大切です」(堅田室長)

中高一貫校の強み2 読解力はすべての科目で重要
6年間で「読む」習慣をつける

 2021年度入試から実施される大学入学共通テスト。国語と数学の記述式問題、英語の4技能を評価する民間試験の導入は見送りとなりましたが、「従来のセンター試験とは出題の傾向が異なる」と堅田室長は言います。

 「マークシート式であっても、『何を問われているか』を理解するのが難しい問題が増えます。複数の文章や資料を読み取る複雑なプロセスを経て、出題の意図を正確にとらえる力が必要になります。国語だけでなく、どの科目でも共通して『読解力』が求められるのです」

 読解力を鍛えるためには、まず「読む」習慣をつけることが大切。中高一貫校に通う生徒は、大学入試まで6年間という時間があるので、読書をする時間もつくりやすいはずです。読書をすることで、「何を言おうとしているのか」という本質を理解する力がついていきます。また、さまざまな本を読むことで、教養が深まり、考え方の幅も広がります。

 難関国公立大学の二次試験では記述問題が多いため、表現力を磨くことも重要になります。中高一貫校のなかには、テーマに沿ってディスカッションをしたり、論文を書いてプレゼンテーションをしたりする授業を行っている学校も多く見られます。そのような授業を活用してしっかり取り組めば、自分の意見を整理し、人にわかるように伝える力が培われていきます。

東大合格者 高校別ランキング

学校名
(所在地)
合格者数
2020年
(内現役)
2019年
◎ 開成(東京) 185(119) 186
△ 筑波大学附属駒場(東京) 93(72) 119
◎ 桜蔭(東京) 85(71) 66
◎ 灘(兵庫) 79(57) 74
◎ 渋谷教育学園幕張(千葉) 74(56) 72
◎ 麻布(東京) 63(44) 100
◎ 駒場東邦(東京) 63(46) 61
◎ 聖光学院(神奈川) 62(53) 93
◎ 海城(東京) 59(38) 46
◎ 栄光学園(神奈川) 57(39) 54
◎ 西大和学園(奈良) 53(38) 42
◎ ラ・サール(鹿児島) 42(26) 34
  日比谷(東京) 40(25) 47
◎ 浅野(神奈川) 39(31) 39
△ 筑波大学附属(東京) 36(23) 32
◎ 東大寺学園(奈良) 36(24) 27
◎ 渋谷教育学園渋谷(東京) 35(27) 19
  県立浦和(埼玉) 33(15) 41
◎ 女子学院(東京) 33(26) 27
◎ 甲陽学院(兵庫) 33(31) 34

※各高校のホームページより 学校名の前の◎は私立、△は国立、無印は公立

20年7月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.3:
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