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私立校・国立校とどう違う? 中学受験のとして考える 「公立中高一貫校」の疑問に答えます

 公立中高一貫校は、学校教育法の改正によって、1999年に制度化されました。それ以来、次々に開設され、現在では全国で100校以上設置されています(連携型を除く)。首都圏でも東京都立の伝統校が相次いで一貫校に改組されるなど、年々数が増えており、難関大学への合格実績でも一定の成果を残しているため、中学受験の選択肢の一つとして、多くの受検生を集めています。ここでは、公立ならではの特徴、入学者の選抜方法とその対策について紹介します。

応募倍率の高さが特徴
大学合格実績も人気に拍車

 公立中高一貫校の入学者選抜には、毎年多くの受検生が挑戦します。現在、首都圏(1都3県)には全部で22の公立中高一貫校がありますが、各校に共通しているのが応募倍率の高さです。2020年度の応募倍率が最も高かったのは、千葉県立東葛飾中の10.8倍。千葉県ではほかにも、県立千葉中が9.0倍、千葉市立稲毛高等学校附属中が8.1倍と高い人気が続いています。

 神奈川県では、県立相模原中等教育学校が7.2倍と、3年連続で県内トップの倍率。横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中が6.1倍で続き、県立平塚中等教育学校が5.3倍、横浜市立南高等学校附属中が5.2倍、川崎市立川崎高等学校附属中が4.1倍となっています。

 埼玉県を見てみると、さいたま市立浦和中が7.7倍で、高い倍率を維持しています。県立伊奈学園中は5.1倍。開校2年目のさいたま市立大宮国際中等教育学校は、前年の人気(6.3倍)の反動のためか、4.4倍にとどまりました。

 東京都の場合は、全部で11校の公立中高一貫校があり、受検生が分散するため、全体的に倍率は落ち着いています。2020年度は、両国高等学校附属中の7.1倍が最高で、ほかに6倍以上を記録したのは、白鷗高等学校附属中の6.9倍、千代田区立九段中等教育学校の区分B(千代田区民以外の都民を対象)入試の6.8倍、桜修館中等教育学校の6.0倍でした。2021年度からは、都立富士高等学校と都立武蔵高等学校が高校募集を停止し、附属中の募集定員を拡大する予定です。これが各校の応募倍率にどのように影響するのか、注目されるところです。

 一方、私立校と同様、公立中高一貫校の人気に影響を与える一つの要素となるのが、大学合格実績です。今春の東大の合格者数(浪人を含む)※を見てみると、県立千葉高等学校が20名、都立小石川中等教育学校が10名、都立桜修館中等教育学校が9名、都立武蔵高等学校が8名、横浜市立南高等学校が7名、都立両国高等学校と都立大泉高等学校がそれぞれ6名、神奈川県立相模原中等教育学校が5名の合格者を輩出しています。このように、多くの公立中高一貫校が一定の合格実績を残しているため、今後も人気は続いていくと思われます。

 2021年4月には、川口市立高等学校が附属中学校を新設。埼玉県内で4校目の公立中高一貫校となります。また、併設型の千葉市立稲毛高等学校と附属中学校が、完全中高一貫校へと段階的に移行することを発表しました。このような、附属中の新設や中等教育学校への移行の情報にも注目する必要があるでしょう。

※併設型の場合は、高校からの入学者の実績を含む。中学からの入学者が卒業を迎えていない学校は除く。

 

首都圏1都3県の公立中高一貫校
(2019年度現在)

開校年 学校名
03年 埼玉県立伊奈学園中学校(伊奈町)
05年 東京都立白鷗高等学校附属中学校(台東区)
06年 千代田区立九段中等教育学校(千代田区)
東京都立桜修館中等教育学校(目黒区)
東京都立小石川中等教育学校(文京区)
東京都立両国高等学校附属中学校(墨田区)
07年 さいたま市立浦和中学校(さいたま市浦和区)
千葉市立稲毛高等学校附属中学校(千葉市美浜区)
08年 千葉県立千葉中学校(千葉市中央区)
東京都立立川国際中等教育学校(立川市)
東京都立武蔵高等学校附属中学校(武蔵野市)
09年 神奈川県立相模原中等教育学校(相模原市南区)
神奈川県立平塚中等教育学校(平塚市) 
10年 東京都立大泉高等学校附属中学校(練馬区)
東京都立富士高等学校附属中学校(中野区)
東京都立三鷹中等教育学校(三鷹市)
東京都立南多摩中等教育学校(八王子市)
12年 横浜市立南高等学校附属中学校(横浜市港南区)
14年 川崎市立川崎高等学校附属中学校(川崎市川崎区)
16年 千葉県立東葛飾中学校(柏市)
17年 横浜市立横浜サイエンスフロンティア
高等学校附属中学校(横浜市鶴見区)
19年 さいたま市立大宮国際中等教育学校
(さいたま市大宮区)

首都圏1都3県の公立中高一貫校
 サピックスからの合格実績

学校名 開校年 18年 19年 20年
都立桜修館中等教育学校 06年 9名 5名 12名
都立大泉高等学校附属中学校 10年 3名 3名 3名
都立小石川中等教育学校 06年 37名 37名 35名
都立立川国際中等教育学校 08年 1名 1名 1名
都立白鷗高等学校附属中学校 05年 1名 3名 2名
都立富士高等学校附属中学校 10年 1名 2名 2名
都立三鷹中等教育学校 10年 5名 1名 6名
都立南多摩中等教育学校 10年 2名 0名 0名
都立武蔵高等学校附属中学校 08年 2名 4名 1名
都立両国高等学校附属中学校 06年 3名 2名 5名
千代田区立九段中等教育学校 06年 8名 7名 15名
神奈川県立相模原中等教育学校 09年 4名 1名 3名
神奈川県立平塚中等教育学校 09年 1名 1名 0名
川崎市立川崎高等学校附属中学校 14年 0名 0名 0名
横浜市立南高等学校附属中学校 12年 2名 4名 4名
横浜市立横浜サイエンス
フロンティア高等学校附属中学校
17年 7名 9名 8名
千葉県立千葉中学校 08年 28名 40名 38名
千葉県立東葛飾中学校 16年 13名 21名 18名
千葉市立稲毛高等学校附属中学校 07年 4名 1名 2名
埼玉県立伊奈学園中学校 03年 0名 0名 0名
さいたま市立浦和中学校 07年 2名 7名 7名
さいたま市立大宮国際中等教育学校 19年 2名 2名
22校計 133名 151名 164名

学費の安さは何よりの魅力
指導体制が確立していない部分も

 安定した進学実績ももちろんですが、なんといっても学費の安さが公立中高一貫校のいちばんの魅力といえるでしょう。附属中の3年間、中等教育学校でも中学校に当たる最初の3年間は義務教育のため、授業料は無料です。この3年間は給食があるので、昼食の用意の負担も軽減されます。高校の授業料は2014年度から始まった「高等学校等就学支援金制度」によって、年収がおおむね910万円未満(「モデル世帯」の場合)の世帯に、公立高校の授業料に相当する月額9900円が支給されます(国立・私立の高校でも同じ条件で支給。私立の場合は、年収がおおむね590万円未満の世帯では支給額を加算)。

 一般の公立中高と同じ負担で、私立と同じような中高一貫教育を受けることができるので、公立中高一貫校に人気が集まるのも納得できます。このため、私立校を第一志望にしているご家庭が、公立校を併願するケースもあります。また、公立中高一貫校を第一志望にする、もしくは私立校は受験せず、希望する公立中高一貫校に不合格なら地元の公立中学に進学させるという方針のご家庭もあります。

 しかし、開設されて間もない学校も多く、教育指導体制が未知数であるケースも考えられます。また、さまざまな決定事項が行政に委ねられているため、カリキュラムや選抜方法などに学校現場の意向がなかなか反映されないという面もあります。今回のコロナ禍では、私立に比べると公立は対応が鈍く、オンライン授業が進まなかったという報告もあります。入学後に後悔しないよう、しっかり検討することが大切です。

 現在では、多くの学校がホームページでの情報公開に力を入れているので、参考にしてください。今年はオンラインで学校説明会などを行う学校も多いので、気になる学校の行事には積極的に参加して、雰囲気や指導体制を確認するとよいでしょう。

学校ごとに打ち出された個性を
志望校を選ぶ際にしっかり確認

 では、公立の中高一貫校は、実際にどのような教育を行っているのでしょうか。主な学校の教育方針や独自の取り組みなどを見てみましょう。

 都立武蔵高等学校附属中や千代田区立九段中等教育学校は、6年間を通してキャリア教育に力を入れ、主体的に進路を選択できる態勢を整えているのが特徴です。「職場訪問・体験」「進路講演会」を行うなど、中学生のうちから進路への意識や関心を高める取り組みを実践しています。

 また、都立小石川中等教育学校や都立両国高等学校附属中などは、充実した国際理解教育が魅力。海外での研修のほかに、オンライン英会話やディスカッションなど国内での国際交流プログラムによって、英語で論文作成やプレゼンテーションなどができるよう、高い語学力とグローバルな視点を養っています。

 都立白鷗高等学校附属中は、日本の伝統文化を取り入れた教育を行っています。中学で行う地域めぐり、高校での地元の伝統的行事への参加など、地域との連携により伝統や文化に触れる貴重な機会を作っています。

 チューター制度を実施しているのは、都立桜修館中等教育学校。指導員として同校の卒業生である現役の東大生などが、平日は夕方5時から7時まで、土曜日は午後1時から4時まで常駐しています。

 また、千葉県立千葉中では、各教科をバランス良く学ぶカリキュラムを編成し、独自の授業を展開。総合的な学習の時間では、実社会への共感力と社会貢献の志を育て、社会の中で自己実現を遂げる意欲を高める「プロジェクト」を実施しています。

 このように、公立校でも、中高一貫校は学校ごとにさまざまな個性を打ち出しています。志望校を選ぶ際には、教育方針やカリキュラムなどをしっかり確認してください。

20年10月号「そこが知りたい!」シリーズ Vol.5:
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