受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

新渡戸文化中学校

2021年7月17日(土)

新たな学校改革を推進し、幸福な社会の発展に貢献する「自律型学習者」を育成

 東京・中野区にある新渡戸文化学園は、教育者・農学者であり国際連盟の事務次長も務めた新渡戸稲造博士と、その弟子の森本厚吉博士らによって1927年に開設されました。戦前は女子経済専門学校として女子教育の推進に努め、現在では子ども園から短期大学までを擁する総合学園となっています。2027年の創立100周年を前に、2014年に中学が男女共学化され、2017年には高校も共学化されました。生徒の主体的な学びを重視する教育改革が進められており、2020年度には経済産業省の「未来の教室」モデル校に選定されました。外部事業者と連携しての教材開発にも取り組んでいます。

 オンラインで開催されたこの日の説明会で、校長の小倉良之先生は、同校の教育シンボルである「Happiness Creator(幸せ創造者)」について次のように説明しました。「これは自分の幸せを追求するのみならず、幸福な社会の発展に貢献する人物の育成を意味します。そのために本校では『全ての主語を生徒に』『社会とつながる』『笑顔』の三つを軸に教育改革を進め、みずから学びに取り組む『自律型学習者』を育てています。生徒一人ひとりが可能性を無限に広げ、自分と社会の幸せをデザインできるようになるのが本校のめざす学びです。本学園が取り組む新たな教育を知り、選択肢の一つに加えていただけると幸いです」と話しました。

 次に、中学高校統括校長補佐の山本崇雄先生が具体的な教育内容を紹介しました。長年にわたり公立校で英語教員として勤め、「教えない授業」を実践してきた山本先生は、「教員が一方的に教える従来型の授業とは異なり、生徒が主体的に学習に取り組む『教えない授業』は、自律型学習者を育てる学びにつながります」と強調します。

 同校のカリキュラムは大きく分けて三つの学びで構成されます。一つ目は、基礎的な知識・技能をしっかりと身につける従来型の学び「Core Learning」です。二つ目は、教科を横断したプロジェクト型の学習「Cross Curriculum」です。三つ目の「Challenge Based Learning」では、企業や外部団体と連携して、社会で起こっている課題の解決に挑戦します。これらに加えて、「Self-Pased Learning(SPL)」という自己学習の時間があるのも特徴的です。そこでは学びたい内容を自分でデザインし、個々のペースで探究的な学習を行います。

 また、同校は3学期制ですが、それぞれの学期には生徒を自律型学習者へと導く仕掛けがたくさんあります。まずは学習の導入に当たる「エンゲージメント週間」で、学びの目的を明確なものとし、一般の学校では中間考査に当たる「実力テスト」によって、基礎的・認知的な学力を確認します。さらに、学びの内容や成果を表現する「アウトプット型テスト」で学習の仕上げを行うのです。このうち「実力テスト」は成績評価の対象にはしていないとのことです。「テストの点数を上げるために学習するという意識を変えてもらうためです。『自分で学ぶこと』や『仲間と高め合うこと』にポジティブな意味を与えて、正解が一つではない問いに取り組む『課題解決型の力』を培います」と山本先生は話します。

 そのうえで、「好きはとことん伸ばすべき」と語る山本先生。そうした観点から、学年や教科の枠を超えて生徒が自由に学びを深めることが奨励されています。同校では「Core Learning」の時間において、「Qubena(キュビナ)」というAI型学習教材を活用して基礎学力を身につけていますが、これを効果的に使って、中1で中学数学の学習内容をほぼ終えた生徒もいれば、中2で高校までの英語の学習範囲を学び終えて英検®準1級を取得した生徒もいるとのことです。「飛び抜けた能力を発揮する生徒がいると、波及効果で、周囲の生徒に『自分にもできる』という気持ちが広がります。本校がめざすのは、大学受験の先にあるリアルな社会に生徒をつなげることです。そうした教育をデザインすることに力を注ぐとともに、大学入試を突破できる学力を身につけられるような指導を実現するため、改革を行っています」と山本先生は説明しました。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

イメージ写真 自由なものづくり施設「VIVISTOP NITOBE」や、プレゼンテーションの場となる「NITOBE THEATOR」など、さまざまな表現をすることを通して学ぶための環境が整っています

www.nitobebunka.ed.jp/ 別ウィンドウが開きます。

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