受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

横浜創英中学校

2022年6月1日(水)

「主体的に学ぶ」カリキュラムで、「考えて行動できる人」を育成

 中学受験において、大規模な学校改革で評価が高まり、応募者が急増する学校があります。横浜市神奈川区にある横浜創英中学・高等学校もそんな学校の一つです。改革を推し進めるのは、2020年4月に校長に就任した工藤勇一先生。以前、在籍していた千代田区立麹町中学校では、宿題・定期テスト・固定担任制といった学校教育での「当たり前」を廃止する大胆な改革に踏み切り、一躍注目の的となった経歴の持ち主です。

 オンラインで開催された説明会の冒頭、工藤先生は「これまでの本校は、学習サポートや進学支援が充実した『面倒見の良さ』で知られ、吹奏楽・サッカー・ダンス・バトンなど全国レベルで活躍するクラブも多い、文武両道の学校。しかし、残念ながらICT化という点では非常に後れをとっていました」と、着任当時を振り返りました。生徒はもとより、教員さえも専用の端末を所持しておらず、日常の授業でICT機器を使うこともほとんどなかった状態から、試行錯誤をしながらほぼ2週間で体制を整え、5月の連休明けには、午前4時限、午後2時限のオンライン授業を実施したそうです。

 続いて、同校の建学の精神である「『考えて行動のできる人』の育成」を紹介。工藤先生は、「科学技術の発展とともに変化が目まぐるしい時代において、人々の働き方は大きく変わっていきます。さらに、地球環境も変化し、人類の存続のためには世界が一丸となって取り組まなければなりません」と指摘しました。これからの社会で不可欠なものとして、「自己決定する力」と、異なる価値観を持つ相手との「対立を解決していく対話力」を挙げた工藤先生は、「それらを養うためには、足りない部分を努力で補って点数をあげていく従来の勉強法ではなく、学習者主体の教育に切り替えていくことが必要です」と強調します。その一例として紹介したのが、数学の授業です。先生が教壇に立って教える従来型の授業を廃し、生徒はタブレット端末などを活用して自分が学びたいものを単独で学びます。わからないところは先生に質問したり、周囲の友だちと一緒に解いたりしながら進めていくそうです。特筆すべきは、学習の進度も使う教材も決めるのは生徒本人という点です。「中高で学ぶ体系的な数学は、一つひとつ段階を踏んでいけば習得できるため、『理解できたら次に』と進めていくほうが効率良く学べます。得意な生徒であれば、1年分の履修範囲を20時間程度で終わらせることも可能です。一方、苦手な生徒は、つまずきを克服しながら、ていねいに学んでいけばよいのです」と工藤先生。英語と数学では、自由進度学習をサポートするAIアプリも導入されています。

 コロナ禍で中止となった高1の海外研修に代わり、国内で実施することになった修学旅行も生徒主体で行われました。行き先や現地で体験するプログラムを数十名の有志がプランニングしたそうです。旅行会社と折衝を重ね、完成させた7コースから選択する形となり、「参加者が150名を超えたコースから10名に満たないものまでありましたが、とても有意義な経験となりました」とのこと。また、中2を対象に新設された「4Cスキル合宿」では、「感情の対決を利害の対決に落とし込む」をテーマに、体験型のプログラムに挑戦。深い思考・創造・協働・コミュニケーションのスキルを養います。そのほか、企業とのコラボレーション授業や、第一線で活躍する研究者や企業家による講演会など、「世界を知り、社会の一員として貢献する」ことを学ぶ取り組みも拡充していく予定です。

 なお、中学では、中高一貫型の「サイエンスコース」と、高校進学時に適性に合ったコースに進む「本科コース」を設定していますが、カリキュラムについては「両コースともにほぼ共通」とのことです。

イメージ写真 JR横浜線「大口」駅より徒歩8分の閑静な住宅街にある校舎は、全館にWi-Fiを完備。2021年7月に県内屈指のすばらしい人工芝グラウンドが完成しました

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