受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

東京農業大学第一高等学校中等部

2022年9月8日(木)

体験を積み教養を深める「知耕実学」を実践。社会性を高めて興味のある分野で活躍できる人に

 榎本武揚が徳川育英会に、1891年に育英黌農業科を創設したことに始まる東京農業大学は2021年、創立130周年を迎えました。その旧制予科を前身とする東京農業大学第一高等学校に中等部が併設されたのは2005年のことです。「知耕実学」という教育理念を掲げ、隣接する東京農業大学の施設も生かしながら、体験・観察・実験を重視した総合学習を実践しています。

 この日のオンライン説明会の冒頭で、入試広報部の川崎剛先生は「主体的に判断し行動できる人」「自分の頭で思考、判断、行動、表現できる人」「多様な価値観を理解する社会性のある人」という生徒像を紹介しました。そのような生徒を育てるために、同校では「課題研究発表」「一中一高ゼミ」「ENAGEED(エナジード)」に取り組んでいます。

 まず中3の「課題研究発表」では、自分の興味や関心のある分野で課題を設定し、約2年間かけてまとめ、プレゼンテーションを行います。生徒は社会問題から身近なことまで、それぞれ好きなテーマに取り組んで研究・考察し、最後には1枚のポスターにまとめて発表します。この課題研究を通して、「情報収集」「資料の作成」「発表」の基礎を学び、思考力・表現力を鍛えます。

 そして、同校ならではのプログラムが「一中一高ゼミ」です。これは、教員が各自の専門分野・得意分野を生かして年間約80講座、月あたり約10講座を開講するものです。主に平日の放課後、生徒たちは教科や学年を超えて自由に講座を選択し、ゼミ形式で学んでいます。講座のテーマは「JAXA職員に聞く宇宙の課題」「もぎ模擬国連」などさまざまです。川崎先生は「教科教育はもちろん大切ですが、社会に出て役立つ『教養』や『興味を持ったことに熱中してみるという経験』も重視しています」と語りました。

 一方、「ENAGEED」は、次世代型キャリア教育コンテンツを用いた取り組みです。「今はない未来の仕事とは」「クラスで協力し合うには」といった正解のないテーマに対してグループワーク形式で学びます。グループワークは「ポジティブフィードバック」「アクティブリスニング」「オーバーコミュニケーション」の三つのルールに沿って行われます。川崎先生は「『ENAGEED』のコミュニケーションで重視しているのはポジティブな姿勢です。『自分の考えを発信することや、小さな失敗をすることは恥ずかしくない』と理解し、意見を出し合いながら改善することの大切さを学ぶのが狙いです」と話しました。

 このような取り組みの成果として、近年では学外コンクールへの出場者が増えているそうです。「全日本高校模擬国連大会の本大会には2チームが出場しました。また、模擬起業グランプリというコンクールでは女子3人のチームが入賞し、化粧品の開発に携わりました。2022年度の入賞者は、野菜のごみから蛍光ペンを作るプロジェクトを進めています」と川崎先生は紹介しました。

 続いて、同校の教育環境の強みについて、川崎先生は「東京農業大学の施設を活用した体験学習ができること」を挙げました。東京農業大学の厚木キャンパスで行う中1の稲作体験では、田植えから稲刈りまで、米作りの一連のプロセスを体験します。中2では、大学の研究施設を利用して新米と古米の味の違いを科学的に検証する「お米の科学」、中3では麴や発酵について学ぶ「味噌づくり」などの実習を行います。

 最後に、卒業生の進路について、川崎先生は「学校名から理系が多いと思われがちですが、例年、理系は55%、文系は45%程度です。東京農業大学に内部進学するのは卒業生の約5%で、大半は他大学に進学します」と話しました。

イメージ写真 世田谷区という便利な立地にありながら、広大な敷地に人工芝のグラウンド、体育館、図書館、食堂など充実した施設・設備がそろっています

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