受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

学校説明会レポート

鹿児島県立楠隼中学校

2022年10月3日(月)

地域の特色を生かした「宇宙学」で生徒の視野を広げ、多様な進路を実現

 鹿児島県立楠隼(なんしゅん)中学校・高等学校は、公立中高一貫校としては全国初となる全寮制の男子校で、県外からも生徒を受け入れています。2015年の開校以来、「大志」「叡智」「至誠」の校訓の下、新たな時代を生きる次世代型リーダーの育成をめざしています。

 オンライン説明会の冒頭、校長の德留敏郎先生は「鹿児島に古くから伝わる教育メソッド」として、薩摩藩の「郷中(ごじゅう)教育」を紹介しました。「郷中教育」とは、年齢の近い子どもたちが集まり、年長者が年少者の世話をしたり、武術や学問を教えたりすることで、教育的役割を担う仕組みです。この教育効果を現代に取り入れたものが、寮生活を中心とした同校の学校生活というわけです。寮では、26都道府県から集まった326人の生徒が生活しており、高2の生徒がリーダーとなって下級生の面倒を見たり、相談に乗ったりしています。德留先生は「出身地も年齢も異なる集団による寮生活は、多様性を学ぶうえでも非常に価値のあるものだと考えています」と話しました。

 その教育効果は、大学合格実績にも表れています。2022年春は、東京大学・九州大学・北海道大学などの国公立大学に合格者を輩出しました。德留先生は、東大に進学した卒業生の「楠隼の規則正しい生活のなかで、さまざまな価値観を持つ仲間に巡り会い、互いに切磋琢磨できた経験は宝物です。楠隼でなければ、ここまで意欲的に勉強に取り組むことはできなかったでしょう」というコメントを紹介しました。

 同校が立地する肝付町には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所があります。この特色を生かした取り組みが「シリーズ宇宙学」です。これは、企業や大学の協力を得て作成したオリジナルテキストや、専門家による講義などを通して、宇宙について学ぶものです。德留先生は、大学教授による揚力実験の様子をスライドに映すと、「生徒たちは、目の前の実験を食い入るように見つめています。こうした機会を通して、好奇心や想像力・思考力を高めることが『宇宙学』の目的です」と述べました。ここでの学びをきっかけに、「生物の起源」に興味を持つようになって理学部に進んだ卒業生もいれば、宇宙における国際問題への関心が高まり、国際関係学部に進学した卒業生もいます。宇宙という一つの切り口からそれぞれが学びたいと思う専門分野へとつなげ、多様な進路を実現しているのが特徴です。

 ほかにも、ビジネスの第一線で活躍する方を招いて講義を聴く「トップリーダー教室」、九州大学を訪問して研究の最前線を見学する「フロントランナーとの出会い」など、みずからのキャリアを主体的に描くためのイベントが多数あります。

 続いて、広報担当の黒石遼也先生からは、併設の楠隼寮について詳しい説明がありました。全6棟のうち1棟は大学受験を控えた高3専用で、残りの5棟では中1から高2までが入り交じって生活します。夜の学習の時間には、学習指導員による個別指導や、タブレットを使った映像コンテンツによる自学自習が行われるほか、今年度からは、英検®対策に特化した学習も開始されました。また、携帯電話の持ち込みは禁止となっています。生徒が家庭に連絡するときは公衆電話を使い、家庭から生徒への連絡は寮事務室に電話すれば取り次いでもらえます。黒石先生は「通学に往復2時間かかり、スマートフォンに1日2~3時間を費やす一般的な中高生と比較すると、楠隼で生まれる時間は6年間で400日分以上になります」と説明し、いかに学習に集中できる環境であるかを強調しました。

 2023年度の募集人数は60名で、適性検査Ⅰ(言語に関する内容)、適性検査Ⅱ(自然や社会、数理に関する内容)と面接が課されます。近年の受検生の解答の傾向を解説した黒石先生は、「日ごろから新聞や本をできるだけ多く読み、自分の意見を書く練習を積むとよいでしょう」とアドバイスし、説明会を締めくくりました。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

イメージ写真 1月22日に実施される2023年度入学者選抜は、本校(肝付町)のほか、東京・大阪・福岡・鹿児島市に会場が設けられます

www.edu.pref.kagoshima.jp/sh/nansyun/ 別ウィンドウが開きます。

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