受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

16.2月号 さぴあインタビュー/関西情報:
目次|3|

2016 FEBRUARY /「大部屋寮生活」を通じて
たくましい人間力を持つ
真のエリートを育成/函館ラ・サール中学校・高等学校/校 長フェルミン・マルチネス 先生/副校長井上 治 先生

聞き手:サピックス小学部 教育情報センター部長 広野 雅明・サピックス小学部 関西統括責任者 溝端 宏光

中学生の約7割、 高校生の約6割が寮生活を送る


中学からの入学生は3年間、高校からの入学生は1年間、大部屋寮での生活を送ります。寝食を共にした友との絆は何物にも変え難いと卒業生は言います

溝端 函館ラ・サールといえば、やはり寮教育が大きな特徴ですね。

井上 学校というものは、歴史や校風が違っても、やっていることにそれほど大きな違いはありません。しかし、寮での教育や生活は、同じ寮制の学校でも大きく異なります。本校はかなり特徴的で、寮教育の比重が大きい学校だと思います。

 そのことを客観的に示す数字が三つあります。一つは寮生の比率です。全寮制の学校を除くと、普通は全校生徒の2~3割程度という学校が多いですが、本校の場合は中学生の約7割、高校生の約6割が寮で生活しています。二つ目は、出身地がさまざまだということ。学校の寮というと、遠くの県からも生徒が集まっているだろうと思うかもしれませんが、ほとんどの場合、学校の周辺県の生徒が大半を占めているものです。しかし、本校では、中学生の半数以上が東京・大阪・名古屋の三大都市園の出身者。北海道と東北出身者の合計よりも多いのです。そして、三つ目が生活形態。最近は、中学生でも個室や2〜3人の部屋で過ごす寮が多いですが、本校では1学年の寮生60人ほどが一つの部屋で生活するという全国唯一の大部屋制を採用しています。

 寮では共同生活、団体生活が基本ですが、部屋が個室なら、そこで人間関係を“遮断”できます。しかし、大部屋ではそれができません。60人もいれば、どうしても気の合わない人間もいますが、それでもつき合わなければなりません。つらいこともあるでしょうが、今の子どもたちにいちばん欠けている人間関係力やコミュニケーション力を養うことができます。それは将来に大きく生きてくると思っています。

マルチネス 保護者の方と一緒に見学に来る子どもたちといろいろな話をしますが、最近、わたしは子どもたちの多くが「自立したい」と思っているということを確認しました。しかし、多くの保護者がそれを認めてくれません。まったく知らない人たちと生活を共にしても、うまくいくかどうかわからない。それでも、子どもたちはそれを試してみたいと思っているのです。

井上 本校の寮を巣立っていった卒業生たちは、口をそろえてこう言います。「受験勉強を通じて身につけた学力よりも、ラ・サールの寮生活で得たもののほうが大きい」と。しかも、「時にはとても嫌だと思うこともあるが、大部屋生活で得たものは何物にも替え難い」と言うのです。これが本校の土台です。

 中高合わせて600人近くの生徒がいることに加え、大部屋での生活ですから、通常の指導態勢ではやっていけません。そこで寮には、学校とは別に、寮専門の寮頭を置き、教員免許を持った寮教員と寮母を15人配置しています。寮では大小さまざまなトラブルが発生します。深刻なものは、最終責任者であるわたしたちのところに報告されます。個室にしたら、その報告も半減するでしょう。しかし、その半面、生徒が得るものも今の何十分の一かに減ってしまうと思います。寮生も教員も大変ですが、得るものが多いと確信しているからこそ、大部屋での寮生活を続けているのです。「嫌なこともたくさんあるけれど、みんなと一緒にいる楽しさのほうが大きい」と生徒たちは言います。そして、その嫌なことの経験も、将来、必要となる人間関係力やコミュニケーション力をつくるのに役立つのです。また大部屋生活では、全員が自分の良い面、弱い面、汚い面などを全部見せ合うわけですから、友人関係も濃くなります。


約600名の全寮生が同時に食事をとれる大きな寮食堂

マルチネス 本校には寮教育カリキュラムがあり、教員だけでなく、生徒がチューターを務める制度もあります。中2がチューターとなり、新入寮生に対し、どのように寮生活を送ったらいいのかを2か月間で教えるもので、50年ほど続いている制度です。チューター希望者はたくさんいますが、誰でもなれるわけではなく、希望者のなかから生活面や成績などを考慮して選んでいます。

 生徒たちにとって、本校は自分で選んだ“故郷”であり、自分でつくった“家族”なのです。卒業後も、3泊までならいつでも食費だけで寮に泊まることができるので、多くの卒業生がやってきます。遠くからわざわざ本校に集まって成人式をやる卒業生たちもいるくらいです。

16.2月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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リンク
16.2月号 さぴあインタビュー/全国版:
「国府台女子学院中学部・高等部」 学院長 平田 史郎 先生 掲載ページリンクへ移動します

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