受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/関西情報

共学になっても変わらない
心と体を鍛える伝統行事
未来へと「関学精神」を貫く

関西学院中学部中学部長 安田 栄三 先生

他者を助けるために
学び、体を鍛える

先生写真
中学部長 安田 栄三 先生

薮田 「体育」では、どんな取り組みをされているのでしょうか。

安田 本校では体を鍛える行事もすべて、キリスト教につながっています。入学後すぐに関西学院千刈キャンプ場(三田市)で2泊3日のオリエンテーションキャンプを行うのですが、そこではわざと水をまいたグラウンドで、みんな泥んこになりながら、一つのボールを追い掛ける「メチャビー(めちゃくちゃなラグビー)」というゲームをします。ここには「人のために泥をかぶれる人間になれ」という教えを込めており、本校の中学教育はそこからスタートするということです。こうしたキャンプには選ばれた中3生がリーダーとして参加しますが、その中3生には、自分のために参加するのではなく、中1のために奉仕をするということを学んでほしいという思いがあります。

 次に、中2になると、夏に無人島の青島(岡山県瀬戸内市)で4泊5日のキャンプをし、ここで1キロの遠泳に挑戦します。これは、自分が泳げなければ、溺れている人を助けることはできないという考えからきています。さらに、暑い時期に大自然のなかで仲間のために奉仕する精神を培います。また、全員で草刈りをし、人のために汗を流すことを学びます。

 そして、最終日にはキャンプファイアーをするのですが、その際に、一人ひとりが自分の決意をみんなの前で述べます。それ以外は、何をするかは各班に考えさせてプログラムを作ります。釣りをする班もあればカヤックを漕ぐ班もあり、それを各班に付く大学生のリーダーがサポートします。

 このほか、週4日、中1から中3までの全員が7時間目に「駆け足」をします。走る距離は生徒によって違いますが、多くの生徒は1回に3~8キロ走ります。なかには、中学部在学中の走行距離が1000キロを超える生徒もいます。この「駆け足」の集大成として、11月のマラソン大会では、男子は10キロ、女子は7キロ走ります。この行事も、自分の体を鍛えなければ人を助けることはできないという考えに由来します。このように、本校の行事には「他者のために自分を生かす」という理念が、どの場面を切り取ってもあるのです。

キャプション付き
上/約6万冊の蔵書のある中学部専用の図書館。読書の授業でも使用されます
中/本部棟2階にある旧礼拝室。現在は1200名を収容する高中部礼拝堂で日々祈りを捧げています
下/2011年に完成した中学部校舎。1階が中1、2階が中2、3階が中3の教室です

溝端 無人島キャンプは、中3が相手にものを伝えることを学ぶ機会にもなっているようですね。

安田 そうです。本当に成長するのは中3のほうでしょう。たとえば、中1に敬語の使い方を教えますが、頭ごなしに言っても伝わらないので、自分なりに試行錯誤します。そういったことが生徒を成長させるのです。

薮田 無人島キャンプが行われる瀬戸内海の青島は、関西学院の所有だそうですね。

安田 はい。新制中学部の初代部長だった矢内正一先生の時代に買った島です。本校はイギリスのパブリックスクールに範を取っており、矢内先生も本当は寄宿舎を造りたかったのだと聞いています。それがかなわないなら、せめて外部と隔離された無人島での生活を体験させたいと考えたようです。この行事も50年以上続き、伝統になりました。

 そんな中学生のキャンプに大学生となった卒業生たちがリーダーとして参加するのも本校の伝統です。ありがたいのは、卒業生が先に島に入り、ある程度の草刈りなどの準備をしておいてくれることです。地元の方にも、食材の用意をしてくださったり、島まで水を運んでくださったりと、お世話になっています。そんなふうに、いろいろな人に支えられて行事が実施できているのです。生徒にとっては、自分が独りで生きているわけではないことを知る機会になり、親から離れることで親のありがたみもわかります。

 班ごとに、何をするか自分たちで考え、意見をまとめて決めるというのも勉強になります。たとえば、食事は班ごとに自炊しますが、そのメニューも生徒たちが考えます。野菜は自由に使えるようにしており、「明日の夕食は食材として牛肉が使える」といった情報を伝えると、生徒たちはカレーや肉じゃがなど、班ごとにメニューを考えます。まとめ役の班長も、そうした経験を通じてかなり成長します。

溝端 最近は、盛んにアクティブ・ラーニングということがいわれていますが、そういうことを自然と親しみながら体験できる環境なのですね。携帯電話など、ふだん身近にあるデジタル機器からも離れ、みんなで過ごす体験ができるのはすばらしいことだと思います。

18年6月号 さぴあインタビュー/関西情報:
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