受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

多様な仲間と学び合うなかで
自然に育まれる国際理解と
未来を創り出す力

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 校長 田村 哲夫 先生 副校長 高際 伊都子 先生

自分の人生の意味を考える
6年間36時間の「校長講話」

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校長 田村 哲夫 先生

水岡 「校長講話」も貴校ならではのプログラムだと思います。年間を通して学年ごと、学期ごとに行われるそうですが、どのようなお話をされているのでしょうか。

田村 「校長講話」については、各学期に2回、学年ごとに、生徒たちの発達段階に合わせたテーマを決めて話しています。内容はリベラルアーツであり、その目標は二つあります。まず、人類協同体の一員としての自覚をしっかり育てること。もう一つは自立した個人の存在です。つまり、人類協同体の一員である自分は自立した個人であり、その人格は自分自身でつくるということ。人格的自律権であり、これは基本的人権の中核の権利です。その自覚を持てるようになれれば、自分の人生にはどんな意味があるのかを考えることができるようになります。

 そのために、まず中1の最初の時間では、『知的生産の技術』の著者である梅棹忠夫さんの資料を配ります。梅棹さんのノートや直筆の原稿などにも触れさせます。テーマは「整理整頓」です。勉強することは整理整頓なのです。高3ではいろいろな資料をもとに人格的自律権の解説をして、最後は、1948年に国連総会で採択された「世界人権宣言」を渡します。この「整理整頓」から人権宣言に至るまでの6年間36時間の授業が「校長講話」です。

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副校長 高際 伊都子 先生

 そのなかで、わたしはその時々に応じていろいろな話をしますが、最近は特にAI(人工知能)の話をしています。これからはAIが社会を支配するといわれていますが、子どもたちはAIに支配されることなく「生きてきてよかった」と思える人生を送らなくてはなりません。それには何が必要かということを集中的に話しています。OECD(経済協力開発機構)が、新しい教育改革の方向性を示す「エデュケーション2030」で指摘していたなかに、「センス・オブ・エージェンシー」ということばがあります。OECDはこれを、SDGs(持続可能な開発目標)を実現するために自分の一生を捧げる力だと解説していますが、簡単にいえば、これは「自分らしさの力」です。人ごとにせず、自分のこととして生きていく力が、これからは最も大切になってくるので、子どもたちにも身につけてほしいと思っています。

神田 まず自分自身を知らなければなりませんね。自分自身を知って、初めて他人に貢献することができます。

高際 自分のことはなかなかわからないものですよね。でも中高時代には、友だちが鏡の役割をしてくれます。友だちとかかわるなかで、友だちとの違いを感じることで、何となく自分が見えてきます。それがいろいろな〝気づき〟につながります。そこが大事なところです。

田村 これはネットワークでやりとりする教育ではできないことです。

高際 本校で生徒たちは、日々さまざまなことを経験しています。中高の6年間は、そのときにしかできない経験のなかで自分をつくっていく大切な時期です。それは材料を混ぜて簡単にできるようなものではありません。とても時間がかかります。教育は促成栽培が利かないのです。その時間を「効率」という名で切らないことも、本校が意識しているところです。

水岡 だからこそ生涯続いていく力の土台になっていくわけですね。

19年5月号 さぴあインタビュー/全国版:
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