受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

共に考え、挑戦し、創造する。
発展的な学びの場が
新しい世界を開く人を育てる

筑波大学附属駒場中・高等学校 校長 北村 豊 先生/中学副校長 町田 多加志 先生

最後まであきらめずに考え抜く
コロナ禍で発揮された問題解決力

髙宮 小学生のときはそれぞれが集団の中でトップにいた子たちですが、筑駒では立ち位置が変わることもあります。そのことを受け入れられる子と、多少なりとも苦しむ子がいるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

町田 そういうケースは少なくありません。悩むところですが、本校にはスクールカウンセラーがいますし、専門家も含めて学校全体でサポートをしています。最初のうちは「ああ、自分はだめだな」という思いがあっても、そのうちに友だちのことをほめたり、認めたりすることができるようになります。それが彼らの成長の一歩だと思います。この部分については「あいつはすごい」、でも別の部分については「自分もすごいんだ」と思えるようになります。本校では、リーダーシップと同じように、フォロワーシップもとても大事だと考えています。行事でも勉強でも、いろいろなところでリーダーになったりフォロワーになったり、それが楽しくできていると感じます。

広野 学力試験の1位が必ずしもその学校の1番ではないですよね。自分の〝物差し〟をみずからつくることができて、自分が優位になれる物差しを何本か持っている子は強いですよね。

聞き手2
サピックス
教育情報センター部長
広野 雅明

町田 何かしようとするとき、お互いのことをわかっているので、すぐに「じゃあこれは彼に頼もう」となります。昨年の文化祭も、何とかして開催したいという気持ちがあって、生徒たちは互いにフォローしあいながら実現させました。

髙宮 多くの学校がオンラインのみの開催とするなか、来場者を保護者のみに限定したとはいえ、実地開催とオンラインを併用されたそうですね。

北村 最初は実地開催は難しいと判断し、オンラインでの開催のみということになったのですが、何とか実地でできるものはないかと考えて併用になりました。彼らは最後まであきらめないですね。さすがに食品は出せないだろうと思っていましたが、何とかできないかとぎりぎりまでがんばるんです。入場制限をする、別のところで食べさせるなど、さまざまに工夫していました。その熱意に引っ張られるように教員たちも一生懸命に応援していて、見ていて感動しました。

町田 校内で開催するとき、一番の問題は来場者の行動です。そこで来場者には事前登録してもらって、一人ひとりにQRコード付きの入校証を渡しました。それを会場や教室に入る際に提示してもらって、スマートフォンで読み取ってパソコンで集約するようにすれば、誰がいつどこにいたかを把握できます。何か起きた場合に追跡できるようにする必要があるということで、生徒が自分たちで考えて、そういうアプリを開発しました。午前と午後で人の入れ替えをしましたが、「まだ、構内にあと何人残っている」と本部ですぐ把握でき、てきぱきと対応していました。

髙宮 先ほどの点字アプリの例のように、何が必要かをみずから考えて、自分たちのスキルでつくっていったわけですね。例年どおりの文化祭ができなかったことは残念ですが、ざまざまな課題があるなかで、あきらめずにトライしたことは、子どもたちが社会に出たときに生かされますね。

北村 そういうことができるのが本校の生徒です。けっして「偏差値エリート」ではなく、問題解決能力があります。卒業生たちがさまざまな分野で活躍しているのは、そういう力があるからだと思います。

21年6月号 さぴあインタビュー/全国版:
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