受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

共に学ぶ喜びを感じながら
未来を心豊かに生きる
たくましさを育む

日本女子大学附属中学校・高等学校 校長 椎野 秀子 先生

「わたしがわたしである」も
「あなたがあなたである」も大切に

キャプションあり
上/図書室の蔵書数は約5万5000冊。図書委員が自発的に運営しています。100席の閲覧席があり、授業に読書にと活発に利用されています
下/中学の音楽ではバイオリンが必修で、1人1丁を学校で用意。中1の授業では教員が1クラスに2名つき、持ち方からていねいに指導しています

椎野 今のコロナ禍で立ち止まっている子どもたちがいます。制約ばかりでやりたいことができない苦しさを感じながらも、その苦しささえ表現できない。うまくいかない現状のなかで、全員が「学校が大好き」と言えるかというと、そうではありません。「好き」と言えない1%の生徒に、「どうしたの?」「何を考えているの?」と尋ねてあげる姿勢が学校としても必要です。先頭を切って走っている優秀な生徒のためだけの学校にはしたくないと思っています。

神田 100人いれば100通りの楽しさ、おもしろさ、そしてつらさがあります。それを6年間で体験し、「友だちはあんなふうにしていた」「先生はこんなことを言っていた」ということをふと思い出して、「だったら、そんなに悩むことはないんだ」と思えるようなつながりが持てるといいですね。

椎野 文化祭で、受付では生真面目にあいさつをしていた生徒が、大ホールでは誰よりもユーモラスに歌い踊っていたということはたくさんあります。どう多角的に磨いて輝かせていくか、それは教員の役目ではなく、自分を輝かせる自分がいるからです。友だちに光を当ててもらうことで、自分の輝きがわかることもあります。

神田 そして、自分もまた友だちに光を当てるわけですね。

椎野 おっしゃるとおりです。そうやって「わたしがわたしであること」と、「あなたがあなたであること」を尊重し合う心を育てていきたいと思っています。

神田 貴校の一つの信念ですね。大学受験だけにこだわっている学校では、なかなかできないことです。

椎野 塾でも、受験に直結することだけをやっているわけではないですよね。だいぶ前ですが、授業で『地雷ではなく花をください』という絵本についてスピーチをしてくれた生徒がいました。彼女はサピックスに通っていたとき、「作文コンクールの課題図書として読んだ」と言っていました。「そんなすてきな取り組みをしている塾があるのね」と思ったことをよく覚えています。

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神田 作文コンクールは、受験勉強以外にも子どもたちと一緒にできることはないかと考えて始めたものです。受験に関係しなくても、読書を通して考えることはけっして無駄になりません。当時、その本を取り上げた関係で、NPO法人の「難民を助ける会」に行ってお話を聞いてきました。本を読むだけでなく、こういう活動をしている方々のお話を聞いて伝えなくてはならないと思ったからです。そういう話をすると、子どもたちは目を輝かせて聞き入ってくれます。

椎野 そうしたことを大事にしたいので、本校では何かの記念日には必ず講演会を開いています。聞いて「本当にそうだな」と思えるような、一流の方のお話を聞く機会をつくることができるのは、いちばんのぜいたくな教育だと思っています。発信は受容と共にあります。聞いたことをきちんと吸収して受け止めることができないと、自分で発信することはできません。国語のスピーチでも、たとえば1クラス42人のうち、1回は自分が語りますが、あとの41回は聞いているわけです。聞き手がきちんと育っていないと、良いスピーカーは育ちません。良い聞き手がいてこそ、自分の心の内側をえぐり出すようなスピーチが生まれてくるのです。

21年8月号 さぴあインタビュー/全国版:
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