受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

共に学ぶ喜びを感じながら
未来を心豊かに生きる
たくましさを育む

日本女子大学附属中学校・高等学校 校長 椎野 秀子 先生

迷ってもいい、変えてもいい
この時期に「志」を持つことが大事

中野 進路については、先ほど卒業生の約80%が日本女子大学に進むというお話がありました。日本女子大学にない学部をめざす生徒のほかにも、難関の国公立大学にも合格できる学力のある生徒たちがたくさんいると思いますが、それでもこれだけの生徒が日本女子大学に進んでいるのは、すごいことですね。

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椎野 成績上位の生徒だけが他大学に行くわけではありません。高校時代から日本女子大学の話を聞いたり、見学をしたりしていますから、その内容から進むべき道を選んでいます。

中野 中学入試は2月1日と3日の2回ですが、今後は日程や募集人員を変更される予定はありますか。

椎野 一昨年、第一志望で来てくださる方がなるべく早く合格を決められるよう、1日の第1回の定員を90名から100名に増やしました。それから、今年は第1回と第2回入試を同時出願してくださる受験生には、1月下旬に事前面接ができるようにしました。これはとても好評でした。面接は、夢を持って中学に来てもらうための楽しいコミュニケーションの第一歩です。自己紹介カードに、自分はどんな人間で、入学したらどんなことをやりたいかを書いていただき、面接ではそれを土台にしながらお話をして、「がんばってますね」という励ましと同時に出会いの場としています。面接だけのために来ていただくことになりますが、皆さん、とてもいい表情をしていましたので、来年も続けていきたいと思っています。

神田 最後に、受験生と保護者の方にメッセージをお願いします。

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椎野 グローバル化が進む変化の著しい時代で豊かに生き抜いていくために必要なのは、「しなやかに、したたかに、おおらかに」自分をつくることです。しなやかに変化に対応していく力、したたかに正しく情報を読み解いて選択していく力、そしておおらかに異質な存在を認め合う力です。この三つの力をきちんと身につけていくと、新しい時代を生きていくたくましさになると思います。

 だからといって、迷いがない人生になるというわけではありません。先日、ある卒業生から手紙が来ました。彼女は慶應義塾大学の法学部政治学科の4年生で、大学院に進むことは決めているけれど、このまま政治学を専攻するか、それともペン一つで世界を変えていける道を選ぼうかと悩んでいました。彼女はわたしが担当した中3の最後の詩の授業が心に残っていて、「この授業を受けたら、世界中から戦争がなくなる」と思ったそうです。「それが政治学科を選んだ原点だ」と言ってくれました。そういう志がある子でも自分の人生を迷っています。そして迷ったとき、ここに戻ってきてくれました。わたしは彼女の選択に正答を与えることはできませんが、「話を聞くことはできるよ」という存在の教員でありたいですし、そういう学校でありたいと思っています。

中野 学校というと、第一に勉強を教えるところだと思いがちですが、先生のお話を伺っていて、人間を育てるところなんだなとつくづく思います。

椎野 人生は常に選択の連続です。そのときに大切なのは、選んだ自分の道に納得できるような思考回路を持っているかどうかです。そこで次の選択肢の数が違ってきます。その意味で「わたしはこうしたい」「こう思う」ということを中高時代に一つでもきちんとつかめた生徒は、5年後、10年後が変わってくると思います。ですから、わたしはいちばん大事なのは生徒の志を育てることだと思って、毎日生徒に向き合っています。受験生の皆さんは、目の前の受験のことを考えると憂鬱になるかもしれません。でも、本校は自分を見つけられる学校です。受験のその先にある「自分を見つけられる世界へようこそ」という気持ちで、わたしたちは皆さんをお待ちしています。

神田 今日の先生のお話は学校の教育理念や教育内容だけでなく、学校とは何か、そしてどんなことを大切にして学校を選んだらよいか、考えるきっかけを与えてくださるお話だったと思います。ありがとうございました。

21年8月号 さぴあインタビュー/全国版:
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