受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

自由な校風の下、
学び合い、高め合いながら
社会貢献できる人をめざす

青山学院中等部 部長 上野 亮 先生

草の根的に交流することが
将来の国際理解を深める

キャプションあり
上/中等部のメディアセンター(図書室)の蔵書数は約2万5000冊。2階にはICT教室やミーティングルームがあります
下/パイプオルガンが設置された礼拝堂。約800席あり、中等部の全生徒が一堂に会することができます

神田 国際交流が盛んなことも、特色の一つだと思います。現在はオーストラリア、韓国、フィリピンと交流されています。韓国ではソウルにある梨花女子大学附属中学校と交流されているとのことですが、同校は有数の名門校ですね。

上野 梨花女子大学附属中学校は同じキリスト教系の学校で、学校を訪問するほか、生徒の家庭で1日お世話になるホームビジットもさせてもらっています。昨年度に続き、今年度も現地に行くのは難しいため、オンラインで交流することになりました。それから、新しく中国との交流も始まりました。今年の3月に北京大学附属中学校を訪問する予定でしたが、これもできなかったので、代表の生徒たちがオンラインで交流をしました。

神田 政治の世界では歴史的な経緯があって、対立が先に出てしまいがちですが、子どもたちは好奇心がありますから、「どんな生活をしているの?」「何が好きなの?」といったことで、自然に交流ができると思います。それがきっかけで大人になってからもわかり合える関係が築ければ、政治的にもずいぶん変わってくる気がします。

上野 中国にしても韓国にしても、政治的には日本と対立する部分がありますが、そういうときこそ、若い人が自分たちの感覚で交流することが大切だと思います。同じものが好きだったりすれば価値観を共有できますから、そういうところから草の根的な交流をしていくことが将来のためにもなると思います。

岡本 フィリピン訪問プログラムはどのような内容ですか。

上野 中等部が支援しているNGO「チャイルド・ファンド・ジャパン」の子どもたちの現状を知って、フィリピンの生徒との交流を通して相互の理解を深める目的で行っています。フィリピンでは、通常の観光では立ち寄らないところにも行きます。電気も水道もないような家に行くこともありますが、現地の子どもたちの笑顔はとても明るくて、生徒たちはそれぞれに思いを抱くようです。ただこれも今年は実施できませんので、秋に初等部・高等部と一緒にオンラインで交流する予定です。

神田 現地の子どもたちの笑顔に触れながらも、そこにある厳しい現実を目の当たりにするのは意味のあることですね。そんななかで生きている人の状況とともにたくましさを知ることは、国際理解を深めるうえではとても大切です。

上野 わたしたちにとっては、学校に行って勉強するのは当たり前のことですが、彼らにとっては、学校に行くこと自体が難しいことです。生徒にとっては「学校に行きたい」「勉強をしたい」ということを、逆に学ばせてもらう貴重な機会になっていると思います。

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岡本 フィリピン訪問と韓国訪問は、隔年で実施されているのですね。

上野 はい。そこに今後は北京訪問も加えたいと思っています。ですから、中等部にいる間にオーストラリア、フィリピン、韓国、中国といった国と交流し、さらに高等部ではカナダ、イギリス、イタリアなど欧米の国々と交流することができます。

神田 国際社会に出て行く準備として、さまざまな道筋をつけて成長していくことができますね。オーストラリア訪問は夏休みに行うのですか。

上野 例年、夏休みに希望者が2週間のホームステイを行っています。ホームステイ先の子どもが通うI・L・Cという中学校に一緒に登校しますが、結構〝サバイバル〟です。まだ英語力が十分に身についていない段階の生徒たちが、日本語が通じない世界に放り込まれるわけですから、コミュニケーション能力が問われます。しかし、そうした経験が次に高校や大学で留学するきっかけとなることが多くあります。向こうの生活や価値観を学ぶことによって視野が広がり、「もっと世界を見てみたい」という気持ちにつなげてほしいですね。

21年9月号 さぴあインタビュー/全国版:
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