受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

探究・発信型の学びを基盤に
将来への意識を高める
新しい教育システムを導入

開智中学・高等学校 中高一貫部 校長 菅沼 健児 先生

自分で選ぶことに意味がある
進路に応じた4コースを新設

聞き手2
サピックス小学部
事業本部長
玉井 滋雄

玉井 大きく変わったコース制についても詳しく伺いたいと思います。四つのコースがあって、生徒たちは中学に入学してから自分でコースを選ぶのですね。

菅沼 入試が終わって入学が決まった段階で、4月からスタートする前に決めます。自分の生き方や将来を見つめて学び、自分の夢を実現させるためのコース制ですから、入試の成績は一切関係ありません。「先端ITコース」「先端MDコース」「先端FDコース」「先端GBコース」の4コースを設けています。

 すでにめざす大学がある生徒は「ITコース」が向いているでしょう。東京大学・京都大学・早稲田大学・慶應義塾大学など、難関大学をめざす生徒を応援するコースですが、その大学に入るのが目的ではなく、入った後に何を学ぶかを意識してほしいと思っています。それは早い時期に考えておく必要があります。

 「MDコース」は、医師や薬剤師など医療関係の仕事をめざす生徒のためのコースです。医師をめざす生徒は、小学生のころからあこがれを持つ場合が多く、早い段階から意識づけをしていくことができます。本校にはもともと医学部をめざす医系コースがあるので、「MDコース」に入った生徒は、高2・3では医系のクラスに入ります。

 グローバルな仕事やAI(人工知能)・ロボットなどの新しい技術分野に挑戦したい生徒は「GBコース」が向いています。今年2月、本校は国際バカロレア(IB)のディプロマプログラム(DP)候補校となり、2025年度より新たに高校でバカロレアDPのクラスをスタートさせる予定です。これにより、中1から高1までを「GBコース」で学び、高2・3ではDPクラスで学んで、DPを取得して海外の大学をめざすという道筋ができます。

キャプションあり
上/物理・化学・生物の分野ごとにそろう理科実験室。中1・中2では週2時間のうち、1時間の授業が実験室で行われます
下/校内には130名以上が利用できる自習室も完備。平日は7時30分から20時50分まで、土曜日は18時30分まで開放されています

 ただし、全員がこのように将来の希望が決まっているわけではありません。今はまだ決まっていないけれど、いろいろな経験をしてじっくり目標を決めたいという生徒はたくさんいます。そうした生徒のためにあるのが「FDコース」です。

 中1で選択を迫るのは早いのではないかという意見もあると思います。しかし、生徒に考えるきっかけを与えるのは大切なことです。選択を迫られる前に、希望や目標が内発的に高まったうえで決めるのが理想的ですが、選択を迫られないと考えないというケースもあります。考えないまま進んでしまうと、偏差値で入れる大学、入れる学部を決めてしまうことにもなりかねません。

 成績で進路を決めるのは好ましくありません。ただし、まだ中学生ですから、選んでみたけれどその後で考えが変わるということもあります。それはそのときに変更すればいいのです。基本的には中1でコースを選んで、同じコースを選択した生徒で均等にクラス分けを行います。中2の3学期になったら再度コースを選択し、学力別にクラスを編成します。さらに高2・3では、志望大学別のコースに分かれます。

神田 大学への合格だけを目標にすると、進学後に何をするのかを考えるゆとりがありません。先生がおっしゃったように、小学生のころから医師になりたいという夢があるなら、そのためのコースが学校にあるのはうれしいことですね。一方で、そうした道がまだ見えていない生徒には、時間をかけて選べるよう「FDコース」が設けられているのはすばらしいことです。ゆとりを持って自分の将来を考えられます。4コースから自分に合ったものを自分で選ぶことによって、目標意識も高まってきますね。その分、先生方は大変だと思います。

菅沼 今年は4コースとも、ほぼ同じような人数になりましたが、毎年そうなるとは限りません。効率的にするなら成績順でクラスを割り振るほうが簡単ですが、それではいけません。自分で考えて選ぶことが大切なのです。

21年12月号 さぴあインタビュー/全国版:
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