受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

さぴあインタビュー/全国版

刺激し合い、高め合う
独自の教育プログラムで
みずから学び成長する力を育む

本郷中学校・高等学校 理事長 松平 賴昌 先生/校長 佐久間 昭浩 先生

「より充実したものにしたい」
教員の熱意で発展する卒業論文

聞き手1
サピックス
小学部教務部
岡本 茂雄

岡本 中3で取り組む「卒業論文」も本郷ならではのものですね。

佐久間 卒業論文は「みずから進んで学ぶ」という、本校がめざす教育の中学段階での集大成です。始めてから10年近くがたちますが、これは今後の本校の肝になるプログラムだと思っています。最近になって、現場からいろいろと積極的な意見が上がってきたからです。

 最初は、自分を客観的に見て、何に興味があるのかを考え、自分で調べて人にわかるように伝える、という作業を中学生のうちにやらせようということで始めました。指導は学年の教員を中心に行ってきましたが、社会科の教員から「もっと充実させたい」「社会科の授業のなかで小論文指導をやりたい」という声が上がりました。教科で担うと負担が増すにもかかわらずです。

 小論文ですから、添削するなどていねいな指導が必要です。事前に面談をして、何に興味があるかを引き出す誘導もしてあげなくてはなりません。とても手間がかかる作業ですが、「クラスを2分割」することによって教員の負担を軽減し、より効率的な指導ができるようにしました。

キャプションあり
上/図書室の前に設けられたラーニング・コモンズ。プレゼンテーション、数学の合同授業、放課後の自習など、さまざまに対応できるスペースです
下/定期的に企画展示やビブリオバトルを実施するなど、図書室でもさまざまな取り組みが行われています

 お話ししたように、「どういうアプローチをすると子どもたちのためになるかを第一に考えよう」というのが共通項としてありますから、展開は速かったですね。

松平 生徒のために、教員がそういう気持ちになってくれたのはうれしいことです。

岡本 先生方の情熱が伝わってきますね。

佐久間 そうやって教科としてアプローチしてくれるようになって、1年間やってみたところです。今は中学ではなく、高1になってから取り組んでもいいのではないかという意見も出ています。大学入試も変わり、これから先は知識だけで書いた答案で合格できる時代ではなくなります。「自分はどんなことに取り組んできたか」という履歴書のようなものを大学に示して合否が決まるということも確実に増えてきます。そうしたことを見据えると、中学卒業論文という形にこだわる必要はないという議論にもなってきます。

神田 アメリカの大学でも、エッセイが合否を左右します。英文が書けるのは当然として、中身が非常に重視され、自分が調べたことや自分の考えをどう相手に伝えるかが、エッセイの評価の大きな指標になってきます。論文作成の力をつけておけば、海外に進路を見いだしていくときも大きな武器になると思います。

22年6月 さぴあインタビュー/全国版:
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