さぴあインタビュー/全国版
学び合いを重ねながら
「自己探究」を深め
未来に生きる力を培う
東京都市大学付属中学校・高等学校 校長 篠塚 弘康 先生
自分の未来を見据えて学ぶ
「キャリア・スタディ」
神田 早い時期からの意識づけが大事とのことですが、中3の「キャリア・スタディ」は、将来について考える取り組みの一つですね。
篠塚 「キャリア・スタディ」は、大学のその先にある自分の将来像についてじっくり考えてもらうためのプログラムです。中3の生徒たちが1年間かけて取り組みます。最初は校内で社会人OBによる講演・講話を聞きます。中高時代、大学時代にどんなことを学び、現在はどんな仕事をしているのか、さまざまな職業に就くOBの体験談は、自分を投影して聞くことができます。新型コロナの影響で最近はできていませんが、夏休みには、数ある協力企業のなかから選んで企業研修にも行きます。研修に行くにはアポイントを取らなくてはなりませんから、電話の掛け方、あいさつの仕方などを事前にマナー講座で学びます。企業にはグループ単位で行き、学んだことをクラスメートの前で発表します。全体での発表会もあります。
サピックス
小学部教務本部
中野 英樹
実はこのプログラムは、社会人OBたちの全面的なバックアップで成り立っています。同窓会のなかに「キャリア・スタディ」の委員会が組織されていて、定期的に学校と打ち合わせを行っています。協力企業の募集、連絡、打ち合わせのほか、企業訪問のコーディネーターもお願いしています。
神田 すばらしいですね。「後輩たちのために」という、卒業生の皆さんの思いが伝わってきます。
中野 高校生になると「中期修了論文」があります。これも特色ある取り組みですね。
篠塚 「中期修了論文」は、高1生がそれまでの学習の集大成としてチャレンジするもので、4000字以上の論文を執筆します。生徒たちは興味・関心のあることをテーマに選び、フィールドワークや文献調査などによる検証・論証を経て、結論を導き出します。論文執筆後は、テーマごとに8名程度のグループに分かれて発表し合い、相互評価を行います。教員が入ってゼミ形式でアドバイスする時間もあります。教員も自分の得意分野とは限りませんから、勉強をしなくてはならないときもあり、緊張するようです。生徒たちは結構おもしろい論文を書いてきますよ。
神田 わたしも優秀論文をいくつか読ませていただきました。「ドナー不足の解消に家畜を用いることは正しいのか」「リズムから見る民族間の音楽性の違い」「環境に優しいクリーンなバイオディーゼル燃料」など、テーマは多岐にわたっていますね。「現代の日本の学力の低下~受動的に勉強する日本の学生~」という論文では、指定校推薦の問題点、学習環境の変化、世界と比較した日本の学力など、細かいデータを示しながら、幅広い視点から自分の意見を論じていて感心しました。すばらしいですね。
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