受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

「基礎英語1」の元講師が教える〈英語学習の基本ポイント〉

英語を学ぶとともに培いたい
「ことば」への意識とセンス

田中 敦英さんTanaka Atsuhide

(たなか あつひで)1979年東京生まれ。桐朋中学校・高等学校英語科教諭。東京外国語大学大学院博士前期課程修了後、2003年より同校の教壇に立つ。2016年度より2018年度までNHKラジオ「基礎英語1」で講師を務める。著書に高等学校英語教科書『English Navigator I』、『English Navigator II』(共著、旺文社)、中学校CDシリーズ英語『声に出すリスニングトレーニングCD』(共著、ELEC同友会英語教育学会監修、クリエイティヴ・コア)などがある。

 小学校高学年における外国語の教科化、大学入試での英語4技能の重視など、英語教育を取り巻く環境が大きく変わろうとしています。そうしたなか、中学校・高等学校での英語教育はどうあるべきで、実際にどのような授業が行われているのでしょうか。また、その前段階として、小学校ではどのような力を身につければよいのでしょうか。NHK「基礎英語1」の講師経験もある、桐朋中学校・高等学校英語科教諭の田中敦英先生に語っていただきました。

英語を学ぶ魅力の一つは、
いつもと違う自分に変身できること

広野 田中先生は、桐朋中学校・高等学校の英語科の教師であるとともに、2018年度まで3年間にわたってNHKラジオ「基礎英語1」の講師を務められ、人気を博していらっしゃいました。先生はそもそも、どういうきっかけで英語に興味を持たれたのですか。

田中 現在、わたしは桐朋中学校・高等学校で教えていますが、実は本校の卒業生でもあります。そして、わたしが英語に初めて触れたのが、まさに桐朋での授業であり、NHKの「基礎英語」でした。どちらもとても楽しく、学んでいくうちに、英語が言語として「おもしろいな」と思えるようになっていきました。勉強しながら文法や語彙が増えていくのも楽しかったのですが、それだけではなく、英語を使っていると、「日本語で生活しているときの普段の人格とは違う自分になれる」という点に新鮮な驚きを感じたのです。気持ちがオープンになったり、人に向かってポジティブな発言をすることにためらいを覚えなくなったり、感情表現が豊かになったり。そういった、「いつもと少し違う自分に変身できる」ということがとても魅力的でした。

 おもしろさや魅力がわかると、ますます英語が好きになっていって、ESS(English Speaking Society)というクラブに入って英語でディベートをしたり、英語劇を演じたりするうちに、英語を通して誰かに向かって何かを表現するという仕事に興味を持つようになったのです。

広野 そして東京外国語大学に進学されたわけですね。教員をめざすようになったのはなぜですか。

田中 大学に進学した当初は、どんな仕事につくのかまだ迷っているところがありました。自分自身が教育に恵まれたという思いがあったので、今度は教える立場で還元したいという気持ちはありました。ただ、それ以外にも声で表現することに興味があったため、たとえばアナウンサー・司会・ナレーター・声優といった仕事にもあこがれを抱いていました。また、英語教育研究という分野には教育心理学や統計学、言語学など多様な側面があって興味深く、「研究者の道もいいな」という思いもありました。

 いろいろと悩んだ末に、結局、大学3年生になったころから、「現場の教員になれば、教えることもできるし、研究することも、生徒たちの前で声を使って表現することもできる。一石三鳥でいいかもしれない」と考えるようになり、教師をめざすことにしたのです。教育実習を通じて十代の子どもたちと触れ合ったときに、その年齢ならではのさまざまな悩みや葛藤に寄り添っていくことに対して、やりがいを感じたことも大きな要因となりました。そのあとは迷いなく突き進んでいって、大学院の修士課程を経て、2003年に本校に着任しました。

日本語を使いこなしていないことが
英語学習のネックになっている


サピックス小学部 教育情報センター
部長 広野 雅明

広野 実際に中学・高校の教壇に立ってみて、どんなことをお感じになりましたか。

田中 本校では多くの場合、担任が中高6年間持ち上がっていきます。最初の6年間は無我夢中でしたが、2013年度から2周目の担任をしたときには、生徒の学習に対する意欲や取り組み方などについて、いろいろな課題が見えてくるようになりました。なかでも気になったのは、男子中学生が言語を学ぶことの難しさです。この年代の男の子と向き合っている保護者の方はご存じかもしれませんが、彼らは、そもそも日本語でもきちんとことばを使ってコミュニケーションをとりたがりません。日ごろからことばを細やかに使いこなしていないことが、英語習得のネックになっているということを強く感じるようになりました。

 ですから今は、授業以外の場面でも生徒が「先生、プリント…」とやって来たら、言いたいことを察して対応するのではなく、あえて、「プリントがどうしたの、ちゃんと文で言ってごらん」と促すようにしています。いわば、〝教育的不親切〟を実践するようになりましたね(笑)。


桐朋中学校・高等学校
〒186-0004 東京都国立市中3–1–10
TEL:042-577-2171
URL:www.toho.ed.jp 別ウィンドウが開きます。

広野 授業はもちろん、日常生活でも語学を学ぶ素地は培われるというわけですね。英語の授業といえば、保護者世代の人がひたすら和訳・英作文をしていたのに対して、今の授業は非常に楽しいものになっていますね。

田中 オーラルでの実践を中心にしつつ、英語のルールやボキャブラリーもきちんと教えていって、英語4技能をバランス良く育てるというカリキュラムや授業の在り方自体は、それこそ30年、40年前から実践していた学校もあったのだと思います。それが中学校で主流になってきたのはここ10年、15年のことでしょうか。今では、中学校の英語の先生方の工夫と改良により、授業の内容も教科書も実践的で楽しいものになっています。

 ここ桐朋においても、20年、30年前とは授業のスタイルが変わってきています。それに伴って桐朋生たちも、ここ10年ほどで英語を学ぶことにより意欲的になっているように感じます。

広野 貴校では、具体的にはどんな授業を展開されているのですか。

田中 たとえば、中学3年生では本校オリジナルの「英語演習」という科目があります。これは表現することに主眼を置いたもので、中学英語を復習しながら、まとまりのあるエッセイを書く練習をします。あるときは書いたものを元にスピーチコンテストを実施したり、修学旅行で撮った写真をベースにフォトエッセイを書いてプレゼンテーションをしたりすることもあります。習った英語を実際に使って、みんなでそれをシェアしていこうという活動が活発になってきました。

広野 貴校では最近、海外大学に進学する生徒さんが増えていると伺っていますが、そうした取り組みの積み重ねが実績につながっているのですね。


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21年3月号 子育てインタビュー:
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