受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

子育てインタビュー

グローバル時代の今、礼法を学ぶ意義を考える

「礼法とは形ではなく、
『心の美しさ』を求めるもの」

 グローバル化の進展を受け、多くの学校が語学教育・国際教育に力を入れています。一方で、グローバル社会だからこそ、自国の文化や日本古来の礼法を大切にしなければならないという声もあります。今回は、光英VERITAS中学校・高等学校(旧・聖徳大学附属女子中学校・高等学校)で長年にわたって礼法の授業を担当する小笠原流礼法師範の井出徹先生に、礼法を学ぶ意義について伺いました。

自分に付加価値をつけるためにも大事
伝統を知ることで人生も豊かになる

広野 サピックスでも、さまざまな職種で採用活動を行っていますが、やはり面接での最初の印象はとても大切なような気がします。

美しい所作のポイント

履物を脱ぐとき

玄関から入って履物を脱いだら、式台の上に正座し、玄関に向けて履物をきちんとそろえ直します。

座布団を使うとき

正座したかかとを立て、座布団の隅からひざで入り、そのまま手をつきながらひざで中央に進み、正面に向き直ります。

井出 大学入試においても、最近は総合型選抜など、面接を重視するケースが増えています。そうした面接では、ドアをノックするところから、用意された椅子に座るまでの印象が面接全体の方向性を決めることがよくあります。お辞儀一つとっても、腰から頭まで背筋をまっすぐ伸ばして倒すのと、だらしなく、頭だけぺこりと下げるのでは、印象がまったく違います。「この人は本当にちゃんとした人なのか」、相手はまずはその人のちょっとした動作や行動を見て判断します。生徒たちには、そういうところを6年間かけて学ぶのは、自分に付加価値をつけるためにも大事だよと話しています。「余計なお世話」と思う生徒もいるかもしれませんが、社会に出る前に、きちんとした所作を身につけてほしいと願っています。

 そして、その際に重要なのが、心です。小笠原流礼法では、「心の美しさ」も重視しています。人に対して、どういう心を持ち、どう接したら失礼にならず、トラブルを起こさないか。相手のことをきちんと思いやることができれば、いじめもなくなるはずです。こうした話は、礼法の授業はもちろん、ホームルームの時間などでもしています。礼法というのは、日常生活全般にかかわることなのです。

広野 礼法は、人生において大きな力になってくれるものなのですね。国際的に活躍している方に話を聞いても、実は日本の伝統文化を知っておくことが海外の方とつき合ううえでとても大事だとおっしゃいます。そういう意味でも、礼法を学ぶ意義はありますね。

井出 礼法の時間では、「節供」の由来についても学びます。5月5日の「端午の節供」にはどういう意味があり、その際、何を食べて、何を飾るのか。そういった話は、海外の方にきちんと説明できるようにしておきたいですよね。いくら英語やテーブルマナーに熟達していても、「どうして5月5日に柏餅を食べるの?」と海外の方に聞かれて、「知らない」で済ませるのはあまりにも残念です。

 日本の伝統的な生活文化を知らなくても生きていけるかもしれませんが、周りの人とうまく折り合い、海外の人と相互理解をするには、やはりきちんと伝統を知っているほうがうまくいきますし、何より人生が豊かになるのではないでしょうか。

美しい所作のポイント

履物を脱ぐとき

玄関から入って履物を脱いだら、式台の上に正座し、玄関に向けて履物をきちんとそろえ直します。

座布団を使うとき

正座したかかとを立て、座布団の隅からひざで入り、そのまま手をつきながらひざで中央に進み、正面に向き直ります。

学校だけではなく、ご家庭でも
親子で礼法を学ぼう、実践しようという気持ちを

広野 子どもの「しつけ」について悩む保護者の方も少なくありません。礼法師範というお立場から、皆さんにアドバイスをお願いします。

井出 保護者の方からもしばしば「礼法の時間にしっかりしつけてほしい」という声をいただきます。本来は、基本的な所作は、ご家庭で身につけていくものなのですが…。とはいえ、ご自身でも正確な箸の使い方、正しい玄関の上がり方はわからない、自信を持って、「これだ」と教えられるのか不安になるという事情もわかります。そういった場合は、保護者の方々も、お子さんと一緒に学ぼう、実践しようという気持ちになっていただけるといいですね。礼法を教えているのは本校ばかりではありません。お子さんが学校で学んできたことを家族で共有し、実践なさるとよいのではないでしょうか。それが文化の伝承にもつながります。

広野 最後に、中学受験をめざす子どもたちとその保護者の方々に、「学校で礼法を教える」ことの思いをお聞かせください。

井出 マナーや礼儀、ことば遣いや立ち居振る舞いなど、本校では「余計なお世話」なのかもしれないことをあえて必修授業として展開しています。また、それについては成績もつけています。授業を受ける生徒たちのレディネス(教えを受け入れる状況)は家庭環境などによりさまざまですが、「できる」ことだけが目標ではなく、作法の意味を理解し、「伝わる」作法の習得を最終目標とし、その到達度を評価していることを知っていただけるとありがたいですね。

 本校では、生徒の皆さんに「やっておいてよかった」と思ってもらえるよう、「自然に」作法ができるように、繰り返し指導を行っています。「明日面接があるから練習しよう」と、にわか仕込みをするのではない、いつ、いかなるときでも作法の表現ができる生徒の育成を心がけています。学力のみならず、人間性・人間力を磨くために本校の礼法の時間が最大限の力になるものと確信しています。

 卒業時に取得できる礼法修了の資格「若紫傳」「花鬘傳」「花鬘正傳」は将来において、履歴書に書いて自己アピールに使えるものであり、中高での礼法の学びは、生徒の皆さんの未来にきっと役立ちますよ。

広野 礼法を学ぶことは、人を思いやり、その思いを形にできる、そんな人に成長できるきっかけとなるのですね。本日はありがとうございました。

21年5月号 子育てインタビュー:
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