受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

都立初の中高一貫教育校 ダイバーシティ教育を充実させ
世界で活躍するリーダーを育成

 公立の学校というと、画一化されているイメージがありますが、都立中高一貫校の場合はそれぞれスクールカラーもめざすところも違います。上野・浅草の近くに位置する白鷗が力を入れているのは、日本の伝統・文化を知る学習や、国際社会で生きるための語学教育。来年には創立130周年を迎える歴史ある学校ですが、新しい改革にも果敢に挑戦しています。その指揮を執っているのが、2016年4月に校長となった善本久子先生です。同校の教育の特色や、来年度からの生徒募集の変更点について伺いました。

東京都立白鷗高等学校・附属中学校
校長 善本 久子先生

校舎は東西2棟に分かれ
中1・2は東校舎で学習

サピックス小学部教育情報センター部長広野 雅明
サピックス小学部
教育情報センター部長
広野 雅明

広野 初めに、貴校の歴史から伺いたいと思います。

善本 本校の前身は、1888(明治21)年に創立された東京初の高等女学校である東京府高等女学校です。ですから、本校は来年、創立130周年記念の式典を予定しています。戦後は学制改革に伴い、1950年に東京都立白鷗高等学校と改称し、男女共学となりました。都立には地名を名乗る学校が多いなか、わたしはこの「白鷗」という校名も誇らしく思っています。

 ちなみに、本校の同窓会は「鷗友会」といい、この鷗友会が母校創立50周年記念事業の一環として、1935年に創設したのが世田谷区の鷗友学園高等女学校(現在の鷗友学園女子中学高等学校)です。

 本校は戦後、都立高校の進学校の一角を占めてきましたが、高校改革の流れのなかで公立の中高一貫教育校を創設することになり、2005年に附属中学校を開設して都立初の中高一貫教育校となりました。校舎は東西二つに分かれていて、中1・2が東校舎、それ以上が西校舎で学校生活を送っています。教職員は行き来が大変ですが、中1・2は、良くも悪くも、高校生のその自由さを目にすることなく、学習習慣をしっかり身につけることができます。特に中2は東校舎の最上級生ということで、一足早く中3生のような大人に成長します。一方、西校舎の中3生は、一足早く高校生の気分になるのです。

 本校は中高一貫化する以前にも、コース制を導入するなど、機会があるごとに東京都からいろいろなミッションを受けてきた学校です。そして2016年2月には、都立高校の将来の姿を計画する「都立高校改革推進計画・新実施計画」が策定され、そのなかに喫緊の課題として挙げられているグローバル人材の育成に関し、本校に白羽の矢が立ちました。

広野 「都立高校改革推進計画・新実施計画」の取り組みにおいて、貴校が育てたいと考える生徒像はどのようなものなのでしょうか。

善本 それは自己のアイデンティティーももち、個々の能力を最大限に発揮して課題解決を図るとともに、多様性の尊重を基盤に、国際的な「競争」と「協働」の両方ができる人材です。ダイバーシティ(多様性)の尊重が根底にあり、「競争」だけでも「協働」だけでもなく、その両方ができる人材こそが、グローバル化社会で真に求められていると思うからです。

日本の伝統・文化理解教育と
課題探究型学習を実施

外観写真2

Profile東京都立白鷗高等学校・附属中学校

所在地

附属中学校(東校舎)

〒111-0041 台東区元浅草3-12-12 03-5830-1731

http://hakuo.ed.jp

高等学校(西校舎)

〒111-0041 台東区元浅草1-6-22 03-3843-5678

広野 貴校ならではの授業やカリキュラムの特色について教えてください。

善本 世界で活躍するリーダーを育成するために、「日本の伝統・文化理解教育の充実」「ダイバーシティ教育の充実」「課題探究型学習の推進」という三つの柱を掲げています。もともと本校は、上野・浅草に近い下町にあるという地の利を生かし、日本の伝統・文化理解教育をしっかり行ってきた経緯があります。たとえば、高2では「日本文化概論」という、他校にはない科目を設けており、日本の伝統・文化について学んでいます。こうした日本の伝統・文化理解教育をさらに充実させ、来年度からは、上野・浅草地区に位置する地の利を生かした学習を計画しています。この地域は東京では珍しく、同業種が集まっている地域です。ある意味、小規模な「クラスター型産業地域」ですが、そんな上野・浅草地区について学ぶことで、ITのクラスターであるアメリカのシリコンバレーなどの学習にも発展させていくことができます。こうした学習を通して、中学では英語エッセイを、高校では英語論文を書けるようにさせたいと考えています。

 また、課題探究型学習としては、プレゼンテーション能力を育てることにもかなり力を入れています。たとえば、中1の夏休みには2泊3日の宿泊体験学習があり、そこでは議論や課題解決のためのプレゼンテーションの手法を学びます。生徒たちには、たとえば「女性が社会で活躍できるようにするにはどうしたらいいか」などといったテーマを与え、課題解決の提案を、パワーポイントを使ってプレゼンテーションさせるのです。また、中2・3ではプレゼンテーションの授業が週1コマあるほか、高2・3では英語でプレゼンテーションをする授業が週1コマあります。これは本校ならではのものです。

外観写真2

Profile東京都立白鷗高等学校・附属中学校

所在地

附属中学校(東校舎)

〒111-0041 台東区元浅草3-12-12 03-5830-1731

http://hakuo.ed.jp

高等学校(西校舎)

〒111-0041 台東区元浅草1-6-22 03-3843-5678

ダイバーシティ教育を充実
中2から全員が第2外国語を学ぶ

善本 ほかの都立中高一貫校と入学時点で比較すると、いわゆる偏差値では必ずしも高いとの評価を頂いていませんが、現中2生は、入学後1年間しっかり学習した時点での学力調査では、まず英語が都立中高一貫校のなかでトップレベルに伸びました。また、英数国の3教科合計でも、トップ校と肩を並べるまでになっています。たとえば、中学入試の時点での都立小石川と本校の偏差値はかなり差がありますから、1年間で追いつき、追い越すくらい、しっかり学習をしているということです。

広野 なぜそんなに英語力が伸びるのか、理由が知りたいですね。貴校の英語教育にはどんな特色があるのでしょうか。

善本 教員が4技能をまんべんなく育てることに対して非常に前向きなため、ほぼ全員がICTを用い、そうした力を身につける授業を実践しているのです。授業はクラスを習熟度別に分割し、少人数で行います。さらに、理解不足の生徒に対しては、放課後の補習も行っています。また、「英検」に関するフォローも、2次の面接対策を含めて行っています。実は、中学生の間に生徒の7割が「英検」準2級を取得するという目標を学校経営計画に盛り込みました。そうしたところ、それまで中3で5割を切るくらいだった準2級の取得率が9割に上がりました。そのうち3分の1の生徒は、2級を取得しています。その生徒たちが高1になり、今度はTOEICにチャレンジしたところ、ある生徒は満点の990点を取りました。2017年6月から始めた海外留学生の受け入れも、この高1生たちを中心に行っています。

 また、本校では、来春の中学入学生以降、中2から第2外国語(フランス語、中国語、スペイン語など)を学ぶ予定です。第2外国語の授業がある都立高校は、わたしが教育委員会にいたころで約50校ありましたが、それは高校で一部の生徒が選択科目として学ぶものです。これに対して本校では中2から全員が学び、大学入試でも勝負できるレベルにしたいと考えています。

 このほかにもダイバーシティ教育として、いろいろな仕掛けをしています。たとえば、校内にランゲージルーム(仮称)を設ける計画で、今年度中に完成する予定です。ランゲージルームにはJETプログラム(外国語青年誘致事業)の学生やネイティブ教員がいて、海外に関する資料もあり、自由に学習・交流ができる環境です。また、これまで中3の修学旅行の行き先は奈良・京都でしたが、現中2(2018年度)からは、アメリカ西海岸に変更し、スタンフォード大学のセミナーを受け、現地校の生徒たちと交流する予定です。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

イメージ01 中1の数学の授業。生徒によるプレゼンテーションの場を多く設けています

イメージ02 中1のちょうちん作りの様子。日本の伝統文化を理解することは、国際的に活躍していくうえでの礎になります

17年12月号 この人に聞く
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