受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

早くも校内には活気が 広尾学園のシステムをベースに
グローバル教育の新たな可能性を追求

 2021年4月、文京区小石川の地に、共学の広尾学園小石川中学校・高等学校が誕生しました。日本の中等教育に新しい風を巻き起こしてきた広尾学園と、女子の伝統校だった村田女子高等学校との教育連携によって開校しただけに、その注目度は高く、中学入試では初年度から多くの志願者を集めました。初代校長は広尾学園中学校・高等学校で教頭を務めた松尾廣茂先生です。同校ではどんな生徒を育てようとしているのでしょうか。その理念や具体的な教育内容などについて伺いました。

広尾学園小石川中学校・高等学校
校長 松尾 廣茂 先生

出願者数は都内トップ
予定より2クラス増に

サピックス小学部 教育情報センター部長 広野 雅明サピックス小学部
教育情報センター部長
広野 雅明

広野 今春に行われた初年度の中学入試にはたいへん多くの受験生が集まったようですね。合格ラインは各回ともかなり厳しかったのではないでしょうか。

松尾 はい。そうなったことに関しては、受験生の皆さんに申し訳なく思っています。おかげさまで出願者数は都内トップの3801名。募集人員は120名でしたが、最終的に198名が入学しました。クラス数は予定より二つ増やして5クラスとし、本科コース(本科)3、インターナショナルコース(インター)2という編成にしました。

広野 男女比はいかがですか。前身の村田女子高校は女子の伝統校でしたから、やはり女子が多いのでしょうか。

松尾 インターは男女半々で、本科は女子が若干多いですね。思ったより男子が多く入学してくれました。

広野 松尾先生は広尾学園で教頭を務められ、学校改革の責任者でもあっただけに、その辺のご事情はよくご存じですね。先ほど新入生を見かけましたが、元気があって、校内は活気に満ちていると感じました。

松尾 入学式ではみんな緊張していましたが、今はもう楽しそうにしています。学校に早くなじんでもらうために、提携している和敬塾(男子学生寮を運営する公益財団法人)の施設をお借りして、4月にオリエンテーションを行いました。このオリエンテーションでは生徒一人ひとりが6年間の目標を話しました。やりたいことをみんなの前で宣言するのは、6年間の学校生活を始めるモチベーションを上げるうえで大いにプラスになります。昨今の子どもたちはみんなの前で自分をさらけ出すことをやりたがらない風潮がありますが、改まった場で話した目標は自分の中で次第に重みを増していくもの。高い目標を伝え合う機会は大切です。

広野 この新しい学園で生徒たちにどんな力をつけさせたいとお考えですか。

松尾 本校の教育理念は「自律と共生」です。生徒たちはこれから、変化と進化が激しい時代のなかで未知の課題に直面していかなくてはなりません。そんな現実のなかで、みずから課題を発見して解決する道筋を構築できる力、多様な価値観を持つ人たちと一緒に物事に取り組んでいく力が求められます。

 そうした力を育む過程で、わたしがつけさせたいと思っているのは「再び立ち上がる力」です。人はうまくいっていないときにこそ、その人の真の価値が問われると思います。何かに失敗しても、けっしてくじけず、再び立ち上がる。友だちや仲間、先生など周りにいる人の大切さに気づき、何かあったときは話したり相談したりしてきちんと解決できる。そんな人になってほしいと思っています。

 人生のすべてが順風満帆という人はまずいません。壁にぶつかって立ち止まってしまうこともあるでしょう。その際、再び立ち上がれるよう、中高時代に壁にぶつかって乗り越える気持ちを持てるようにすることはとても大切なのです。

広野 最近の親は子どもに失敗をさせたくないという思いが強いので、壁にぶつかって苦しんだ経験のない子もいるようですね。

松尾 入試が壁になることもあります。本校の生徒も必ずしも第一志望で入学したとは限りません。入学後の初期の段階で、そうした経験を乗り越えてがんばろうという気持ちを生徒にどれだけ持たせることができるか。そこはわたしたち教員の力量だと思っています。

実績ある外国人教員を中心に
広く英語を使う環境を整備

イメージ05多くの受験生が集まった入試当日

広野 インターは広尾学園と同様、英語で学ぶアドバンストグループ(AG)と、これから英語力を強化していくスタンダードグループ(SG)に分かれますね。

松尾 はい。中学ではAGとSGに分かれていますが、高校では一本化します。クラスはそれぞれを二つに分けて、AGとSGが一緒に学ぶクラスが二つあるという構成です。AGの生徒が同じクラスにいることで、SGの子どもたちは言語だけでなく文化的なものも吸収できます。AGの生徒のほうが新しい環境に早くなじんだ様子なので、そういった部分でもよい影響があると思っています。

広野 保護者の方は貴校の英語指導に大いに期待していると思います。英語の授業にはどのような特徴がありますか。

松尾 AGは週34時間のうち24時間が英語での授業で、SGは週8時間が英語の授業です。英会話も重要ですが、英語で物事を考える力をつけさせたいという視点から、ディスカッションを中心にする方針です。授業に加え、朝礼、終礼もすべて英語。インターナショナルコースのクラスは日本人教員と外国人教員が1名ずつ担任になり、ホームルームはすべて英語で行います。SGの生徒は美術と技術家庭も英語で学びます。このように、授業だけにとどまらず、広い領域で英語に親しませていきたいと考えています。

広野 ネイティブの先生には若い方が多いようですね。熱意にあふれ、生徒たちを伸ばそうという意欲が感じられます。

松尾 外国人教員は全員、広尾学園で実績を積んでいますから、経験を生かしてがんばってくれると確信しています。こうした英語教育の恩恵はインターの生徒だけのものではありません。本科の生徒も含め、全校生徒が英語力を高めていけるよう、さまざまなプログラムを検討しています。

イメージ05和敬塾でのオリエンテーションの様子

 たとえば、オールイングリッシュの「英語村」のようなエリアをつくって、校内留学に近いことができるようにしたいと考えています。小規模な学校ですから、そうしたことが軽いフットワークで始められます。コロナ禍で海外研修・留学が難しい折、その有効性は高いと思います。また、本校のすぐそばにアジア文化会館があるので、そこの留学生たちとの交流も構想しています。欧米だけでなくアジア諸国とも交流することはとても大事です。留学生たちの協力を得て、授業とは別の枠で韓国語・中国語・ベトナム語など、英語以外の言語を学べる機会もつくっていきたいですね。

広野 今後に向け、海外研修制度、長期・短期の留学制度などで予定されていることはありますか。

松尾 海外研修や短期留学は、イギリスで実施しようと計画しています。校内で培った英語力を、実際に英語が使われている国を訪れて試すことは、とても貴重な経験になります。新型コロナが収束したとき、スムーズに実行に移せるよう準備を進めています。

21年7月号 この人に聞く
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