受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

この人に聞く

中高の6学年がそろい、活気づく校内 帰国生の影響で英語力と積極性が向上
広尾学園との連携プログラムも充実

 2021年4月、東京都文京区に誕生した広尾学園小石川中学校・高等学校。国内外問わず、難関大学への進学実績を伸ばしている広尾学園と教育連携していることに関心が寄せられ、中学入試では初年度から多くの応募者を集めました。文教地区という立地を生かした独自の教育なども期待されています。今回は、全学年に広尾学園小石川の生徒がそろった今年度の学校の様子や、具体的な教育内容について伺いました。

広尾学園小石川中学校・高等学校
校長 松尾 廣茂 先生

英語ゼロベースの生徒も
帰国生と同じ教室で過ごす

サピックス小学部 教育情報センター本部長 広野 雅明サピックス小学部
教育情報センター本部長
広野 雅明

広野 2021年の開校時より中学・高校それぞれで入試を行い、今年度、中高6学年が広尾学園小石川の生徒となりましたね。

松尾 はい。全校生徒805名というのも、この学校の歴史で最も多い人数です。一層活気が出てきたように感じます。

広野 貴校には本科コース(本科)とインターナショナルコース(インター)の二つがありますが、国際生入試を経て入学した帰国生はどのような雰囲気ですか。

松尾 インターはさらに、英語力の高い生徒を集めたアドバンストグループ(AG)と、入学後に英語力を強化していくスタンダードグループ(SG)に分かれます。AGの生徒はほとんどが帰国生です。非常に積極的なので、入学式初日から旧知の友人に接するような雰囲気でSGの生徒にも声をかけていました。

広野 社会人になっても、さまざまなパーティーや懇親会があったとき、交友関係を広げるうえでその積極性は非常に大事ですね。AGには英語圏からの帰国生が多いのですか。

松尾 欧米が中心ですが、滞在国や滞在地域はさまざまです。指導体制としては、インターは外国人と日本人教員のダブル担任制を採用し、ホームルームは英語で行います。AGの大半の授業で使われるのは英語です。道徳・美術・技術はAGとSGが一緒に英語で学びます。SGの生徒は英語環境に恵まれるだけでなく、AGの生徒のものの見方や考え方を知り、AGの生徒はSGの生徒の吸収力や向上心に影響を受けるなど、お互いに刺激し合っているようです。

広野 在校生全体の様子はいかがでしょうか。

松尾 広尾学園小石川としてスタートしたばかりの時期の生徒たちですから、どの学年の生徒も自分たちでこの学園を発展させていこうという意欲がみなぎっています。今年の高校の卒業生は広尾学園小石川になる前の入学生ですが、大いにがんばって国公立大学や医学部への進学実績を残してくれました。

広野 その生徒たちはどうして伸びたのでしょうか。

松尾 広尾学園の教育システムを導入したことに加え、能動的に学習する気持ちを育てたことが、スモールステップにつながったのではないかと分析しています。さらに、教員が生徒と面談を繰り返して、具体的なアドバイスを伝えてきたことも励みになったのかもしれません。

アクティブラーニング型授業で
生徒主体で考える力を育む

イメージ01グループを組んで、プレゼンテーションに向けて意見を出し合います

広野 能動的ということは非常に大きいですね。

松尾 「教えなくても勉強する生徒」を育むことをめざしています。自主的に勉強する生徒に指導力のある教員が加わったとき、どんな相乗効果が出るのだろうと期待しています。

広野 先生方はどんな授業をされていますか。

松尾 多くの授業で、生徒たちがグループを組んで、話し合ったものを発表するような場を設けています。あらかじめ与えられた課題を発表するときには、教員の説明よりも生徒たちの声が多く聞こえるような授業を心がけています。

広野 プレゼンテーションも重要ですね。生徒は最初から上手にできるのですか。

松尾 初めから理想的なスピーチができるわけではありませんが、向上しようという気持ちは非常によく伝わってきます。練習を相当重ねていると思われる生徒の発表には、聞く側の生徒も感心しているようで、お互いを高め合っています。

広野 発表することに苦手意識を持っている生徒も、中1の段階から経験を重ねれば、中学の間に慣れそうですね。

松尾 本校の生徒たちは、発表者には最後に必ず拍手を送っています。

広野 きちんとリアクションをして、相手をたたえ、リスペクトすることも教えているのですね。ところで、入学後はまだ文系と理系の方向性もはっきりしない状況かと思いますが、どんな進路をめざす生徒が多いのですか。

松尾 医療系を希望する生徒が多いですね。大学でいうと、現時点で東京大学を目標とする生徒も多数います。放課後は東大生のチューターを招き、生徒たちの質問に答えるようにしてもらっています。

広尾学園と連携した教育活動
生徒同士の交流も深まる

広野 広尾学園との連携教育についてお聞かせください。

松尾 日本全国の最前線で活躍する科学者やジャーナリストを招いて講義を行う「広学スーパーアカデミア」、アプリ開発やゲーム、映像、ウェブ制作などパソコンを使ったモノづくりを学ぶ「Tech Camp」をはじめ、キャリア教育を中心にさまざまなプログラムを合同で展開しています。運動系の部活動も頻繁に練習試合を実施し、生徒同士で交流を深めています。多様な体験を通して、広尾学園が築いたものを本校の生徒が吸収していることを実感します。

広野 広尾学園は先行して、いろいろと成果を出していますから、貴校の生徒にとっても刺激になりそうですね。

松尾 先日は、本校と広尾学園とさらに都立小石川中等教育学校の3校でサッカーの交流戦をしました。3校合同は初めてでしたが、有意義な交流の場となりました。

広野 スーパーサイエンスハイスクールに指定された都立小石川中等教育学校とは、小規模校同士の連携により、できることも増えるかもしれませんね。広尾学園とは海外研修も合同で実施するのですか。

松尾 はい。昨年の夏休みには合同でオーストラリアへ短期語学研修に行き、2人1組で1家庭にホームステイを実施しました。さらに、今年の春休みに、両校からの希望者を募って行ったのが、アメリカ・ボストンの「キャンパスツアー」です。ハーバード大学をはじめ、複数の大学を見学しました。今後も実施する予定です。このほか、広尾学園から海外の大学に進学した卒業生にキャンパスの様子を聞く機会もつくりました。

広野 こうしたプログラムに率先して参加するのはAGの生徒が多いのですか。

松尾 はい。ただし、SGの生徒も非常に興味を持っています。英語ゼロベースのSG生にも海外大学をめざす生徒がいるので、先輩たちとの交流に大いに刺激を受けたようでした。また、本校は来年度から高校募集を停止し、完全中高一貫校に移行します。全校生徒の数は広尾学園の半分ですが、インターの人数はほぼ変わらないので、遜色のない進路実績をめざしたいと思っています。

23年6月号 この人に聞く
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