受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

No.97

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回はクモの糸のお話です。クモの糸は細くて、触るとべたべたしています。クモはこの糸で巣を作りますが、巣は大きな虫が掛かっても切れないくらい丈夫です。クモの糸の秘密を探ってみましょう。

クモの糸は何でできているの?

細くて丈夫、種類もいろいろ

げんちゃん 公園でクモの巣を見つけたよ。大きなガが掛かって、羽をばたばたさせていたけど、クモの巣って破れないんだよね。
えりちゃん わたしも、1本の糸に大きなクモがぶら下がっているのを見たことがあるわ。強いのよね、クモの糸って。
ピグマ博士 クモの糸は強いだけじゃなく、とてもよく伸びて、太さが同じなら、ナイロンの糸より切れにくいといわれているよ。大きな虫が巣に掛かっても、糸が全体に伸びて虫の体を受け止めるから、切れにくいんだ。
さやかちゃん 1本1本はとても細いのにね。
ピグマ博士 クモの糸は直径約1000分の5ミリで、10~20本合わせてやっと、人間の髪の毛1本の太さになるよ。そのクモの糸1本も、本当は1本ではなく、何本もの細い糸が集まって1本になっているんだ。
ひかるくん クモはどこから糸を出すの?
ピグマ博士 「糸いぼ」という毛のような細い管がクモのお尻にたくさん付いていて、そこから液を出すんだけど、液が空気に触れるとすぐに糸になるんだ。その糸はどれも同じじゃないよ。それぞれの糸いぼから違う種類の糸を出して、使い分けているんだ。
げんちゃん クモの糸なんてどれも同じに見えるけどね。みんな、べたべたしているし。
ピグマ博士 べたべたしていない糸もあるよ。網を作るクモは、「横糸」に粘り気がある糸を使うんだ。網に掛かった獲物がくっついて、逃げられないようにするためにね。でも「縦糸」はべたべたしていないよ。クモはこの縦糸を伝って網の上を移動するんだ。縦糸までべたべたしていたら、クモも歩けないだろ? さっき、えりちゃんが言った、クモがぶら下がっている1本の糸も「牽引糸」という命綱にもなる糸で、これも粘り気はないよ。
ひかるくん へえー。クモの糸って全部べたべたしてるのかと思ったけど違うんだね。
ピグマ博士 ねばねばした横糸は伸び縮みしやすく、縦糸や牽引糸は丈夫で硬いのが特徴だよ。クモの巣を見つけたらよく見てごらん。横糸には、べたべたする粘着性の液体の小さな粒が付いているのがわかると思うよ。クモの種類によっても違うけど、網を作る糸には横糸と縦糸のほかにも、巣の周囲を作る「枠糸」や、その枠糸を周囲の木や軒下などにつなぐ「繋留糸」などがあるよ。

着たい? 着たくない? クモ糸の服

えりちゃん クモの糸って何でできているの?
ピグマ博士 主な成分はたんぱく質だよ。たんぱく質はアミノ酸からできていて、そのアミノ酸の組み合わせの違いで、いろいろな糸が作られているんだ。
ひかるくん 糸を出すっていえばカイコもそうだよね。
ピグマ博士 カイコの幼虫は自分がその中でさなぎになる繭を作るために糸を出すんだけど、クモの糸と同じで、成分はたんぱく質。カイコの糸からは絹ができるよね。その絹も、羊毛からとるウールも、動物性たんぱく質でできている繊維で、植物からとれる木綿や麻と比べて丈夫でしなやかなんだ。
げんちゃん クモの糸が絹やウールと同じ動物性たんぱく質からできている繊維なら、クモの糸でも服が作れるんじゃないの?
さやかちゃん なんか気持ち悪くない?
げんちゃん そうかなあ。クモの糸で作ったクモスーツを着たら、スパイダーマンみたいになれそうな気がするけど(笑)。
ピグマ博士 スパイダーマンにはなれないけど、クモの糸で作った服はあるよ。
げんちゃん ほんと!?
ピグマ博士 クモの糸が強くて切れにくいことは昔から知られていたけど、カイコみたいに大量に飼育することが難しいんだよ。草食であるカイコと違って、クモは肉食で、縄張り意識が強いからね。でも、人工的にクモの糸を作る研究は世界中で進んでいるよ。日本でも、クモの糸の主成分になっているのと同じたんぱく質を、微生物に代わりに作らせて、そのたんぱく質で作った糸から、アウトドアジャケットを作った会社があるよ。
げんちゃん すごいね。着てみたいなあ。
ピグマ博士 衣料だけでなく、医療機器や自動車部品などに使えるようにする研究開発も進んでいるよ。クモの糸は石油に頼らない、環境に優しい未来の素材として期待されているんだ。

■保護者の方へ

 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』には、人がクモの糸につかまって登る場面が出てきます。そんなありえないような話も物語の中だけとはいえなくなりました。クモの糸は高強度で伸縮性に富み、熱にも紫外線にも強い、優れた性質を持っています。このため昔から注目され、ヨーロッパではクモの糸で織物が作られたこともありました。量産化を可能にしたのは遺伝子組み換え技術で、本文で紹介した例のほか、カイコにクモの糸の遺伝子を組み込んで糸を作る技術も研究が進められています。クモ以外にも身近な生き物の特性は、さまざまな技術に応用され、人々の生活を支えています。嫌われがちなクモですが、どのように糸を出して巣を作るのか、調べてみるのもいいかもしれません。

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