受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回は和紙のお話です。一部の和紙は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されていますが、和紙はノートや教科書、画用紙など、ふだんわたしたちが使っている紙とどう違うのでしょうか。

和紙ってどんな紙?

植物の繊維がからみ合っている!?

えりちゃん 6年生のいとこが、卒業証書に使う紙を手すきで作ったんだって。いいなあ、わたしも、手すきの和紙を作ってみたいな。 えりちゃんイラスト
げんちゃん 「和紙」ってなに?
ピグマはかせ 日本独特の紙だよ。それに対して「洋紙」というのは、主に木材から繊維を取り出して作られる「パルプ」を原料に、機械を使って大量生産される紙のこと。以前は西洋から輸入されていたから「洋紙」というけれど、紙というのは、もともとは2000年ほど前に中国で発明されたものなんだ。西は中東を経てヨーロッパに伝わったよ。東は日本に伝わり、独自の発展を遂げたんだ。
さやかちゃん それが和紙なのね。じゃあ、「手すき」ってなに?
ピグマはかせ 「すく」というのは、原料を水に溶かし、木製の「すのこ」と呼ばれる道具の上に薄く広げたあと、それを乾かしてなにかを作ることなんだ。和紙の場合は植物の皮をすいて作るんだ。本来は「手すき」といって、手作業ですくんだけど、機械ですく場合もある。それも和紙というよ。
ひかるくん どんな植物の皮を使うの? ひかるくんイラスト
ピグマはかせ 最も多く使われているのは、全国の野山に生えているコウゾ。ほかにガンピ、ミツマタという植物もよく使われるよ。一般的に樹皮の内側の白い繊維の部分をはいで使うんだ。それを蒸したり乾かしたり水にさらしたりして、柔らかくする。これに水と、植物の根などから作った粘り気のある液体を加えるよ。これが繊維と繊維をくっつける役割を果たすんだ。こうした一連の作業を「流しずき」というよ。テレビや本で、竹ひごなどで編んで作った「すけた」という道具を、溶液の中で揺れ動かしているところを見たことがないかな。そうやって原料の繊維がからみ合うようにしてすいて、一枚一枚作るんだよ。

外国の文化財も和紙で修復

えりちゃん でも作るのが大変そう。機械ならもっと簡単に紙が作れるのに。
ピグマはかせ 確かに手間がかかるけど、その分、和紙ならではの良さがあるんだよ。和紙は原料となる植物の繊維そのものが強く、その繊維がからみ合っているので、丈夫で破れにくいんだ。だから書道用紙や便せんのような、文字を書く紙以外に、ふすま紙や壁紙などにも使われている。傘も昔は和紙で作られていたんだよ。
さやかちゃん 紙の傘って、雨にぬれて破れないの? さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ 水をはじくように、和紙に油を塗るから簡単には破れないよ。紙の寿命は材料や製法によっても違うけど、一般に洋紙は100年、和紙は1000年といわれている。実際に、奈良県奈良市の正倉院には、和紙に書かれた約1300年前の戸籍がきれいな状態で残っているんだ。
えりちゃん 1300年とはすごいね。古くなると黄色くなる新聞紙とは違うのね。
ピグマはかせ 日本のお札にも、ミツマタなどの植物繊維を加工して作った和紙が使われているんだ。だから何度も折り畳まれたり、機械に通されたりしても、破れにくいんだよ。
げんちゃん そういえば、お母さんが間違って千円札を洗濯したときも、破れていなかったよ。 げんちゃんイラスト
ピグマはかせ 和紙は繊維と繊維の間に細かいすき間があるので、光や空気を通しやすいのも特徴だよ。それを生かして障子や照明器具、衣類の保管袋などにも使われているよ。
ひかるくん いろいろなところに使われているんだね。
ピグマはかせ 文化財の修復にも和紙は使われているよ。日本には和紙を限界まで薄く作る技術があって、厚さが0.02ミリ、1平方メートル当たりの重さが2グラムのものまであるんだ。しかも強くて寿命が長い。だから海外でも、大きな博物館や美術館などでは、古い書物や絵画の傷んだ部分を直すのに和紙が活躍しているんだ。
さやかちゃん すごいのね、和紙って。だからユネスコの無形文化遺産にも登録されたのね。
ピグマはかせ 2014年にユネスコの無形文化遺産に「和紙 日本の手すき和紙技術」として登録されたのは、島根県の「石州半紙」、岐阜県の「本美濃紙」、埼玉県の「細川紙」の三つ。このほかにも全国にはたくさんの産地があって、地域ごとに特徴のある和紙が作られているよ。

保護者の方へ

 日本で作られた和紙で年代のわかる最古のものは、正倉院に保存されている飛鳥時代(702年)の戸籍です。当時、紙は貴重だったので、次の時代には裏面を帳簿をつけるための用紙として再利用しています。今のわたしたちが過去を詳しく知ることができるのは、石器や土器、住居跡などの考古資料とともに、文字や絵で昔の情報を伝えてくれるもの(史料)が残されているからです。和紙に記された文字は1000年以上の時を経て、わたしたちに当時のことを伝えてくれます。
 日本の風土の中で生まれ育った和紙。洋紙が主流となった今でも、和紙はその強さやしなやかさ、そして柔らかな風合いを生かして、生活のさまざまな場面で使われています。身の回りのどんなところに和紙が使われているのか、お子さんと一緒に探してみませんか。

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