受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回はボールの動きについてのお話です。サッカーでも野球でも、試合で威力を発揮するのはボールの変化。左に曲がったり、右に曲がったり、急に下に落ちたり。なぜボールの向きは変化するのでしょうか。

ボールの向きが変化するのはなぜ?

回転させればボールは曲がる

げんちゃん もうすぐロシアでサッカーのワールドカップが始まるね。楽しみだなあ。
さやかちゃん げんちゃん、サッカーやっているもんね。 さやかちゃんイラスト
ひかるくん サッカーの試合を見ているといつも思うんだけど、フリーキックやコーナーキックのときに、真っすぐ前に進むように蹴ったつもりのボールが途中で曲がることがあるよね。どうしてあんなふうに曲がるんだろう。
ピグマはかせ ボールが回転しているからだよ。これは、サッカーでも野球でもテニスでも同じだよ。
えりちゃん どうして回転すると曲がるの?
ピグマはかせ ボールが回転すると、ボールの左側と右側、または上側と下側とで、空気の流れの速さが違ってくるんだ。そのため圧力、つまり空気がボールを押す力に差が出てきて、圧力の強いほうから弱いほうに曲がるんだよ。
さやかちゃん ふーん。ボールの周りの空気の流れの速さが変わると、圧力も変わるのね。
ピグマはかせ ボールは空気の層を押しのけて前に進むよね。そのときに、ボールが右から左に(反時計回りに)回転していると、ボールの右側を流れる空気は、ボールの回転と逆向きになるから遅く流れる。一方、ボールの左側を流れる空気は、ボールの回転と同じ向きになるから速く流れる。ところで、空気には、流れが遅いところでは圧力が強くなり、速いところでは圧力が弱くなるという性質があるんだ。だからボールは左方向に曲がるんだよ。逆にボールが左から右に(時計回りに)回転していると、ボールは右方向に曲がるんだよ。
ひかるくん 左に曲げたいときは左回転するように、右に曲げたいときは右回転するように蹴ればいいんだね。 ひかるくんイラスト
ピグマはかせ そうだよ。空気中を回転しながら進むボールは、進行方向と直角の方向に力を受けるんだ。左右に回転しながら前に進んでいるときは、左右のどちらかに向かう力を、前後に回転しながら前に進んでいるときは、上下のどちらかに向かう力をそれぞれ受けるわけだね。だから回転する角度をいろいろ変えていくと、ボールの進む向きもいろいろと変化させることができるんだ。野球の「カーブ」や「シュート」のような変化球も、そうやって投げているんだよ。

無回転シュートはなぜ取りにくい?

ピグマはかせ 実は、野球の「ストレート」も回転を利用して投げているんだよ。
えりちゃん ストレートって、直球、つまり真っすぐ前に進む速いボールでしょ。変化球ではない場合も、ボールを回転させるの? えりちゃんイラスト
ピグマはかせ ボールが前から後ろに回転するように、バックスピンをかけて投げると、ボールの上側を流れる空気はボールの回転と同じ向きになるから速く流れる。ボールの下側を流れる空気はボールの回転と逆向きになるから遅く流れる。空気の流れが速いところでは圧力は弱まるから、圧力の強いほうから弱いほうに、つまり下から上に向かう力をボールは受けるんだ。それでボールはすぐに落ちず、直線に近い進み方をするんだよ。
げんちゃん サッカーの無回転シュートはどうなの? ボールは回転していないのに、突然変な方向に曲がるよ。急にすとんと落ちてゴール! あれはどうしてなの?
ピグマはかせ ボールが回転していないときは、ボールの周りの空気にあまり圧力の差ができないんだ。その代わりにボールは、それ自身の動きと関係なく発生した周りの空気の流れの影響を受けやすくなるよ。空気の流れは不安定だから、ボールは上下左右に不規則に揺れて、落ちるところが予測できないんだ。 げんちゃんイラスト
げんちゃん ゴールキーパーにしてみれば、飛んでくるボールが揺れてどっちにいくかわからないから、無回転シュートは取りにくいんだよね。やってみたいなあ、無回転シュート。
ピグマはかせ 選手によって蹴り方はさまざまだけど、足の甲の足首に近い部分で、前に押し出すようにボールの中心(芯)を正確に蹴ると回転しないよ。ただ、プロの選手でも成功させるのはかなり難しいみたいだね。

サッカーのコーナーキックで、右に曲がる場合

保護者の方へ

 回転しながら移動している物体は、片側では空気の流れが物体の回転方向と同じなので速くなり、反対側では空気の流れが物体の回転方向と逆なので遅くなります。このとき、流れが速いほうでは圧力が弱くなり、流れが遅いほうでは圧力が強くなりますが、これを「ベルヌーイの定理」といいます。これにより、物体は進行方向に対して垂直の力を受け、圧力の強いほうから弱いほうに曲がることになりますが、これを「マグヌス効果」といいます。サッカーの曲がるフリーキックや野球の変化球などは、この現象を利用しています。このように、スポーツと科学は切っても切れない関係にあります。神業的なプレーの秘密に目を向けながら観戦すると、スポーツの楽しみがより増してくるのではないでしょうか。

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