受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回は絹のお話です。カイコの繭から作られる天然繊維、絹。和服やドレス、下着、寝具などに広く利用されていますが、最近はその成分を生かして、繊維以外の分野の商品開発にも生かされています。絹とはどんな繊維なのでしょうか。その秘密を探ってみましょう。

絹ってどんな繊維?

絹のなめらかさは肌と同じ!?

えりちゃん 見て。おばあちゃんがお手玉を作ってくれたのよ。 えりちゃんイラスト
さやかちゃん きれいね。つやつやして着物の布みたい。
えりちゃん 着物の端切れで作ってくれたのよ。絹なんだって。
ピグマはかせ 絹は光沢があって肌触りがいいよね。絹は人間の肌の成分に近いタンパク質でできているんだ。だから「第二の肌」ともいわれているんだよ。
さやかちゃん お母さんのスカーフも、さらさらして気持ちいいわ。シルクって言ってたけど、シルクって絹のことでしょ?
ピグマはかせ そう。英語でシルクだね。繊維にはナイロンやレーヨンのように石油や石炭などを原材料とする化学繊維と、植物や動物などからとった天然繊維がある。綿や麻は植物からとった植物繊維、絹や羊毛は、動物からとった動物繊維なんだよ。このうち絹には綿の1.5倍の吸湿性がある。夏の暑いときや夜寝ているときに汗をかいても、さらっとしているから、下着やパジャマなどに最適。しかも保温性もあり、冬でも温かいんだよ。
ひかるくん へえー。夏は涼しく、冬は暖かい、優れた繊維なんだね。 ひかるくんイラスト
げんちゃん でも、「動物からとった」って、絹はどんな動物の毛なの?
ピグマはかせ いや。毛じゃないよ。羊毛はヒツジの体毛だけど、絹はカイコという、カイコガの幼虫が作った繭からとるんだよ。
さやかちゃん 繭って?
ピグマはかせ カイコが吐き出した糸がからみ合った繊維の塊みたいなものだよ。
ひかるくん 博物館で見たことがあるよ。長さが3センチくらいの俵の形をした白い玉だよね。
ピグマはかせ カイコは成虫になる前に、細い繊維を吐き出して、自分の体を包む繭を作るんだ。その繭の中で幼虫はさなぎになって、成虫になる準備をするんだよ。この繭を煮て取り出したものが「生糸」。それをアルカリ性の薬品で精錬し、外側のタンパク質を取り除いたものが「絹糸」になるんだよ。

衣類だけでなく医療にも大活躍

げんちゃん 虫が作る繭から糸を取り出そうなんて、よく思いついたよね。 げんちゃんイラスト
ピグマはかせ カイコは中国で5000年以上も前から飼われていたらしい。当時の中国の遺跡から絹織物が見つかっているんだ。
えりちゃん そんなに昔からカイコを飼って、糸を取り出す方法を知っていたのね。
ピグマはかせ 生糸をとるカイコは家畜化された昆虫で、クワコという野生の虫を飼い慣らして品種改良を重ね、今のようなカイコになったといわれているよ。カイコを飼って生糸をとる産業を「養蚕」というんだけど、中国からその技術が伝えられた日本では、江戸時代になってからカイコを飼う農家が増えて、養蚕と製糸が盛んになったんだ。明治・大正から昭和の初期にかけて、生糸は日本の経済を支える重要な輸出品だったんだよ。
ひかるくん 世界遺産になった「富岡製糸場」ではその生糸を作っていたんだね。
ピグマはかせ そう。日本の生糸は世界中から最高級品と認められていたんだよ。でもその後、安価な化学繊維の登場などで生糸の生産は少なくなっていったんだ。
さやかちゃん 日本ではもうあまり作られていないのね。 さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ でも、日本では今、絹を粉末やスポンジなどさまざまに加工したものを、医療用の素材や電子部品の材料などに利用する研究が進んでいるよ。
えりちゃん 絹って、織って布にして使うだけじゃないのね。
ピグマはかせ 病院では、絹は手術で切ったところを縫い合わせる糸として長く使われているけど、人工血管や再生医療の素材としても期待されているんだ。絹は良質なタンパク質からできているので、人の体に使っても安全性が高いからだよ。
げんちゃん それもみんなカイコのおかげだね。
ピグマはかせ もともとは昆虫がつくるものだけど、それを人間の病気の治療に役立つよう研究していることがすごいよね。

保護者の方へ

 絹は昔からドレスや着物などの高級素材として世界の人々に愛されてきました。中央アジアの砂漠地帯を経て、中国とヨーロッパを結んだ交易路が「シルクロード」と名付けられたように、古代から人類の文明のなかで重要な役割を占めていたのも、ほかの繊維にはない特別な魅力があったからです。そんな絹が新素材の開発によって、衣類だけでなく、健康食品や化粧品、医療用の素材、電子部品など、さまざまな分野に応用されています。特にその生体適合性の高さから、軟骨、血管、皮膚、角膜などの再生医療への応用が期待されています。かつては世界有数の絹の生産量を誇っていた日本。絹の加工技術の蓄積が、最先端の研究開発の土台になっています。

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