受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回はスケートのお話です。フィギュアスケートではダイナミックなジャンプと並んで、高速でくるくる回るスピンもハイライトの一つです。なぜあんなに速く回ることができるのでしょうか。

スケート選手はなぜ速く回れるの?

高速の秘密は手足の動きにある!?

えりちゃん テレビでフィギュアスケートの大会を見たけど、すごいわよね。ジャンプして4回も回るなんて。よくできると思うわ。
さやかちゃん くるくる回る演技もきれいよね。初めはゆっくり回っていたかと思うと、急に速く回り出して、高速スピンになるのよね。 さやかちゃんイラスト
ひかるくん 最初に勢いをつけて速く回るならわかるけど、途中から速く回るんだよね。氷を蹴るわけでもないのに、不思議だなぁ。
げんちゃん 足腰の鍛え方が特別なんじゃないの?
ピグマはかせ 確かにすごい技だよね。フィギュアスケートでは、氷の上の一定の場所で回ることを「スピン」というよ。演技をするとき、選手たちはどうやってスピンをしているか思い出してみよう。
えりちゃん 最初は腕を横に広げて、少しゆっくり回っているわ。 えりちゃんイラスト
ピグマはかせ そうだね。いろんな形があるけど、初めは腕を広げて回ることが多いよね。そして両腕と片足の膝を曲げて回り出すと、回転が速くなってくる。最後に両腕を上にまっすぐ伸ばして、体を1本の線みたいにしたり、腕を胸の前に密着させたりすると、ものすごい高速スピンになるよね。
さやかちゃん 確かに、両腕を横に広げたり、片足を手で持ち上げたりするときは、ゆっくり回っているわ。すごい速さで回っているときは、手も足も広げていないよね。
ひかるくん 手足を伸ばしたり曲げたりするところに、回転の速さを変える秘密があるのかな?

半径が変わると速さも変わる

ピグマはかせ いいところに気がついたね。振り子時計を想像するといいかもしれないね。
げんちゃん 振り子時計って、文字盤の下に、左右に揺れる振り子が付いた時計のこと? げんちゃんイラスト
ピグマはかせ そう。振り子は、一定の周期で揺れる「等時性」という性質をもっているんだ。これはガリレオ・ガリレイが発見した、振り子の性質なんだけど、振り子時計はその性質を利用して時を刻んでいるんだ。だけど、時々、揺れが速くなったり遅くなったりして、正確に時を刻めなくなる。そんなとき、どうやって調整するか知っているかい?
えりちゃん どうやるんだろう? 知らないわ。
ピグマはかせ 振り子の先に付いている重りを上下させて、振り子の長さを変えることで、揺れのスピードを調節するんだよ。時間の進みを速くしたければ、重りを上に動かして振り子の長さを短くする。逆に時間の進みを遅くしたければ、重りを下に動かして振り子を長くする。実は、スピンも同じ仕組みなんだ。
げんちゃん どういうこと?
ピグマはかせ ものの回転には、半径が小さくなると速度が上がるという性質があるんだ。振り子時計の場合、振り子を速く揺らしたいときは、重りを上げて振り子を短くする。スケートのスピンの場合も、手足を広げず、体をまっすぐにして回転半径を小さくすることで、回転スピードを上げることができるんだ。
ひかるくん 手足を横に伸ばしたり、体をくっつけたりすることで、回る速さが変わるんだね。 ひかるくんイラスト
ピグマはかせ もちろん、回転速度の変化にはスケート靴のエッジ(刃)の使い方など、ほかにもいろいろな要素が関係してくるけれど、やはり回転するときの姿勢が大きく影響しているんだ。わかりやすい例が回転椅子。両手と両足を広げた状態で回転椅子に座り、誰かに椅子を回してもらうとするよ。やってみるとわかるけど、回り始めてから途中で足と腕を下ろすとスピードが速くなるよ。
げんちゃん へえー。それにしてもすごい技だよね。あんなにくるくる回って、よく目が回らないな。目が回らないこつでもあるのかな。
ピグマはかせ 特別な方法はないそうだよ。バレリーナの場合は、頭の回転と体の回転をずらしているよね。あれは遠くの一点を見つめて、頭を素早く一気に回してまた同じ点を見つめることで、目が回らないようにしているんだ。でもスケートのスピンはもっと回転が速いから、そのやり方はできないよ。最初は誰でも目が回るけど、繰り返し練習しているうちに慣れるんだ。でもケガなどで練習を休むと、また目が回るようになるんだって。
えりちゃん 選手は大変なのね。
ピグマはかせ そうだね。スピンには高度な技術が必要だから、あのすばらしい演技は毎日の練習と努力のたまものだと思うよ。

回転スピードを調節する仕組み

保護者の方へ

 あらためて力をかけないのに、どうして途中からスピンが速くなるのでしょうか。その秘密は、物理学の「角運動量」にあります。回転運動をしている物体は、その物体の「質量」「回転半径」「速さ」の三つをかけた角運動量という量、いわば回転の勢いを持っています。この量は、摩擦や空気抵抗を含め外部から力を受けない限り、一定に保たれます。これが「角運動量保存の法則」です。これをフィギュアスケートのスピンに当てはめると、「質量」(スケート選手の体重)は一定ですから、「回転半径」を小さくする(腕を畳み、体に引き寄せ、体をまっすぐ伸ばす)と、必然的に「速さ」(スピンのスピード)はアップします。選手は腕を伸ばしたり曲げたりすることで、角運動量保存の法則を使ってスピンのスピードを速くしたり遅くしたりしているのです。スポーツを見ていると、「どうしてこうなるのだろう」と思うことがよくありますが、そんな疑問を調べていくと、その先に物理学の面白さが潜んでいます。

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