受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回は蚊のお話です。人は蚊に刺されても、かゆくなるまで気づかないことがほとんどです。病院で注射をされるときの針は痛いのに、蚊が血を吸うために刺す針は痛くありません。なぜでしょう。

蚊に刺されても痛くないのはなぜ?

蚊は吸血作業のテクニシャン!?

げんちゃん 腕がかゆいと思ったら蚊に刺されていたよ。 げんちゃんイラスト
さやかちゃん 本当だ、少し膨れているね。涼しくなってきたから、もう蚊はあまりいないはずだけれど、どこで刺されたの?
げんちゃん わからない。今気づいたんだもん。
えりちゃん 蚊って、刺されても痛くないから気づかないよね。注射はあんなに痛いのに、どうして蚊の針は痛くないのかなあ。
ひかるくん 針がとても細いからじゃないの? ひかるくんイラスト
ピグマはかせ 確かに、蚊の針はとても細いよ。直径はわずか0.05ミリくらいしかないんだ。髪の毛の太さが0.1ミリくらいだから、髪の毛の半分の太さってことだよね。
さやかちゃん 注射針は髪の毛より太いの?
ピグマはかせ 医療で使われる金属製の注射針は、現状、細くても0.3ミリ以上はあるよ。人の皮膚の表面には、「痛点」といって、痛さを感じる点が1平方センチ当たり100〜200個分布している。0.3ミリだと、どうしても針が痛点に当たってしまうんだ。でも、蚊の針ぐらい細ければ、痛点に当たらないことが多い。それに蚊の針は、金属でできている注射針と違い、しなやかで滑りやすいから、人に気づかれずに刺すことができるんだよ。
えりちゃん 人に気づかれたら叩かれちゃうもんね。こっそり刺して血を吸わないと。 えりちゃんイラスト
ピグマはかせ そうだね。それに蚊の針は、実は1本じゃないんだ。血を吸うための針、皮膚を切り裂くための針、血を固まりにくくする唾液を注入するための針というように、違う役割を持つ六つの針に分かれているんだ。皮膚を切り裂く針には、のこぎりのようなぎざぎざが付いていて、これを細かく振動させながら、皮膚に針を刺し込んでいくんだよ。血を吸うための針も、この動きに合わせて、上下に、高速で動きながら少しずつ皮膚の中に入り、血管に到達するんだ。このように、細かい動きをしながら刺すほうが、針を真っすぐに刺すよりも、皮膚を傷つけなくて済むんだよ。ちなみに、蚊の唾液に含まれている成分も、痛みを感じにくくするのに役立っている。実は、刺されたところがかゆくなるのは、この唾液に対して、体がアレルギー反応を起こすからなんだ。
ひかるくん へえ。蚊の針には、こっそり血を吸うための機能が詰まっているんだね。
さやかちゃん かゆくなるのだけは余計だけれどね。
ピグマはかせ でも、蚊はマラリアといった病気の感染源になるから、かゆくなる以外にも問題はあるんだよ。ちなみに、蚊で血を吸うのはメスだけ。産卵に備えて、栄養をとらないといけないんだ。子孫を残すために、蚊も必死というわけなんだね。

蚊をヒントに「痛くない注射針」を開発

さやかちゃん 注射針も、蚊の針みたいなものにすれば痛くないんじゃないの? さやかちゃんイラスト
ピグマはかせ そのとおり。実際、蚊の針の構造からヒントを得て、痛みを最小限に抑える注射針が開発されたよ。細くしても折れにくい素材を使っていて、蚊の針のようなぎざぎざを付けた「痛くない」注射針なんだ。予防接種で使われるような針ではないけれど、糖尿病の治療などに用いられているんだよ。
げんちゃん えっ、そうなの!? すごいね。
ピグマはかせ この注射針みたいに、生き物の持つ機能や仕組みを技術開発に役立たせることを、「バイオミメティクス(生物模倣)」というんだ。みんなの身の回りにもたくさんあるよ。たとえば、服にくっ付くオナモミという植物があるでしょ。マジックテープは、オナモミのからだのつくりを参考にして開発されたんだ。それから、スーパーで売られているヨーグルト。ふたを開けたときに、ヨーグルトが付かないものがあるよね。それは、水をはじくハスの葉の構造を上手に生かしているからなんだ。ほかにも、ヤモリの足の仕組みをヒントに開発された接着テープなどがあるよ。
ひかるくん 生き物のからだの機能が、いろいろなものに役立てられているんだね。
ピグマはかせ そうだよ。生き物は長い歴史のなかで、環境に合わせてからだを進化させながら生き延びてきた。そこにはすごい知恵が詰まっているってことだね。

蚊の針は「6本の針」が集まってできている

保護者の方へ

 生き物のからだには、びっくりするような機能が備わっています。ハチドリのホバリング能力を応用した小型ドローン、タコの吸盤にヒントを得た滑りにくい靴、フクロウの翼の構造を応用した騒音の少ないパンタグラフ(電車の架線から電気を取り入れる装置)、水をはじくチョウの羽から着想を得たはっすい材料など、生き物の知恵を借りた技術開発の実例は、数多くあります。数十億年もの生命の歴史のなかで多様化してきた生き物のからだには、新しいモノづくりのヒントが詰まっているのです。バイオミメティクスはさまざまな分野で研究が進んでおり、近年は環境問題の解決に役立つ研究分野としても期待が高まっています。

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