受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

おしえてピグマはかせ

サピックスの通信教育・ビグマキッズくらぶ おしえてピグマはかせ

 「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
 今回は夏の風物詩である花火のお話です。赤・黄・緑と、打ち上げ花火はとても色鮮やかですが、どうやったら、あんなにたくさんの色を出せるのでしょうか。花火の色の秘密を探ってみましょう。

花火はどうしてたくさんの色を出せるの?

色の違いは「金属の違い」

さやかちゃん 去年に続いて、今年も隅田川の花火大会は中止だって。残念だわ。 さやかちゃんイラスト
ひかるくん 仕方ないよ。人が集まるイベントだもん。
さやかちゃん そうね。でも、おととし家族で見に行ったときは感動したなあ。いろいろな色の花火が同時にたくさん打ち上げられて、迫力満点だったわ。
えりちゃん いいなあ。わたしも打ち上げ花火って大好きよ。色がとてもきれいよね。どうしてあんなにたくさんの色を出せるのかしら。
げんちゃん 花火って火薬でできているんだよね。火薬に色を付けているんじゃないの?
ピグマはかせ 確かに、花火は火薬を爆発させて光や音を出すものだよ。でも、花火に色が付いているのは、火薬に色を付けているからではなく、火薬に「色のもと」になる物質を混ぜているからなんだ。
えりちゃん 色のもとって?
ピグマはかせ 「炎色剤」と呼ばれる金属化合物のことで、これを火薬に混ぜているんだよ。炎色剤を燃やすと、その金属化合物に含まれている金属特有の色の光を出すんだ。この現象を「炎色反応」というよ。すべての金属が炎色反応を起こすわけではないけれど、たとえば銅なら青緑色、ナトリウムなら黄色という具合に、燃やすと色の付いた炎を出す金属がいろいろあるんだ。
ひかるくん ふーん。じゃあ黄色の光を出したかったら、火薬にナトリウムが入っている金属化合物を混ぜればいいということだね。 ひかるくんイラスト
ピグマはかせ そのとおり。花火によく使われるのは、青緑色の炎を出す銅、黄色の炎を出すナトリウム、深い赤色の炎を出すストロンチウム、黄緑色の炎を出すバリウムの4種。この四つをうまく組み合わせることで、ピンクなどさまざまな色を出せるんだ。
さやかちゃん でも、打ち上げ花火って緑色から黄色の輪に変化するなど、次々と色が変わるよね。火薬の中で色が混ざらないのかしら。
ピグマはかせ そこが花火師さんの腕の見せどころだよ。花火に使う火薬玉を「星」というんだけれど、「星」は外側から中心部へと燃えていく。だから、緑→黄→赤の順に色を出したければ、外側から、緑色の光を出す金属を混ぜた火薬、黄色の光を出す金属を混ぜた火薬、赤色の光を出す金属を混ぜた火薬の順に包んでいくんだ。大きな「星」の中に、そういう小さな「星」をきれいに並べると、複雑に変化する花火ができるよ。

江戸時代の花火は地味だけれど…

ピグマはかせ 今の花火はすごくカラフルだよね。でも、昔の花火はあまり色を出せなかったんだ。さやかちゃんが見に行きたかったと言う隅田川の花火大会は江戸時代に始まったものだけれど、そのころの花火の色は黒みを帯びた赤だった。当時は、硝石・硫黄・木炭を原料とする黒色火薬しかなかったからなんだ。
げんちゃん 暗い赤だけじゃ、なんだか寂しいね。 げんちゃんイラスト
ピグマはかせ 色とりどりの花火が打ち上げられるようになったのは、明治時代に外国からいろいろな化学薬品が輸入されるようになってから。火薬に混ぜる物質も変わり、鮮やかな花火が作れるようになったよ。
さやかちゃん 明治時代より前の花火は地味だったのね。
ピグマはかせ でも、それはそれで素朴な味わいがあるよ。昔ながらの黒色火薬を使った花火を「和火」、化学薬品を使った鮮やかな花火を「洋火」といって区別するけれど、最近は「和火」の美しさが見直されているんだ。花火大会のなかには、あえて「和火」を打ち上げるところもあるそうだよ。
えりちゃん へえ。昔ながらの花火も見てみたいわね。 えりちゃんイラスト
ピグマはかせ 「洋火」にしても、海外から新しい化学薬品が入ってきたからといって、すぐにカラフルで鮮やかな花火ができたわけじゃない。花火師さんたちが実験を重ねた結果だよ。しかも扱うのが火薬だから、ちょっとした衝撃で爆発してしまう。薬品の調合一つするにも、命がけだったんだよ。
ひかるくん 花火作りは、危険と隣り合わせの化学実験みたいなものだったんだね。
ピグマはかせ 今では、「この化合物を使うとこんな花火ができる」といったことをコンピューターで予測できるから、昔ほどの危険性はないそうだよ。今日学んだことはぜひ覚えておいて、今後の花火大会では、花火の色の変化などに注目してみてね。

花火の「中身」を見てみよう!

保護者の方へ

 物が燃えるには、燃える物質・酸素・熱が必要です。火薬は燃える物質の「可燃剤」と酸素を提供する「酸化剤」からできており、火をつけると激しく燃焼します。花火の火薬は、ここに「炎色剤」を加えます。炎色剤とは金属化合物のこと。燃やすと、ストロンチウムを含む化合物なら赤色の炎が発生し、バリウムなら黄緑色の炎が発生するなど、金属の違いで異なる色を示します。そう考えると、花火の美しさとは、「化学反応の美しさ」であるともいえます。花火の赤い光を見て、「ストロンチウムが燃えているよ」と言う人はよほどの化学好きでしょうが、無機的な金属が美しい色を出し、わたしたちの感情を揺り動かすという事実には興味をかき立てられます。

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