おしえてピグマはかせ

「ピグマキッズくらぶ」は、小学1年生から4年生のために開発されたサピックスの通信教育です。そのテキストでおなじみのピグマはかせが、皆さんがふだん疑問に思っていること、不思議に思っていることにお答えします。
今回はブラックホールのお話です。宇宙空間にあって、強い重力で光さえも吸い込んでしまうというブラックホール。謎が多いだけに興味をひかれます。ブラックホールとはいったい何なのでしょうか。
ブラックホールってなに?
宇宙にある「黒い穴」ではない!?
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みんなは「ブラックホール」って知ってる? 宇宙の図鑑で見たんだけど、ブラックホールってすごいんだよ。とてつもない重力で、周りのものを何でも吸い込んじゃうんだって。 |
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聞いたことはあるわ。でも、具体的には何も知らないわ。「ホール」っていうんだから、宇宙にある穴みたいなもの? | |
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確かに、ブラックホールっていう名前から穴だと思うよね。けれど違うんだ。地球にいるわたしたちは、重力によって地球の中心に向かって引っ張られているよね。だから地面に立っていられる。でも、その程度の重力じゃなく、その百倍も千倍も強い重力を想像してごらん。 | |
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ぼくらはぺっしゃんこになっちゃう。 |
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もっともっと、重力が強いと、どうだい? | |
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地球の中心に向かって、地面と一緒に吸い込まれちゃう? | |
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そんな感じかな。ブラックホールは、太陽よりもずっと重い星が爆発することでできる、星の一種なんだ。そして、とんでもなく強い重力で、周りのものすべてを引き寄せ、吸い込んでしまうんだよ。光さえ、いったん吸い込まれたら脱出できないので、見ることもできない。だから真っ黒な穴、「ブラックホール」と呼ばれるんだ。わたしたちの目で観測することはできないだけで、ブラックホールは宇宙のあちこちにあるといわれているんだ。 | |
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見えないのに、なぜあるってわかるの? | |
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ブラックホール自体を直接見ることはできないけれど、ブラックホールが周囲のものを吸い込むとき、その物質はブラックホールの周りをぐるぐる回りながら高温になり、X線や光を出す。それで、ブラックホールの存在を知ることができるんだ。 |
ブラックホールは2種類ある
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ブラックホールが実際に存在することもそうやってわかったの? |
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そうだよ。2019年4月に、日本を含む国際的な研究チームがブラックホールの撮影に成功したと発表したよ。正確にはブラックホールの「影」の撮影だけどね。撮影されたのは、おとめ座にある「M87」という楕円銀河の中心にある巨大なブラックホールだよ。質量、つまり重さが太陽の65億倍もあるんだ。しかも、「M87」までの距離は約5500万光年。光ですら、到達するまでに5500万年もかかるくらい遠いんだよ。そんな遠くにあるものが撮影できたなんて、驚くべきことだよね。 | |
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そんなに遠いんだ。すごいなぁ。 | |
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このとき撮影されたのは、銀河の中心にある巨大ブラックホールだけれど、実は、ブラックホールには2種類あることがわかっているんだ。一つは巨大ブラックホールで、ほとんどの銀河には中心に一つだけ、太陽の百万倍以上の質量を持つ巨大ブラックホールがあるといわれているよ。 | |
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太陽系が属している天の川銀河にも、巨大ブラックホールはあるの? |
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天の川銀河の中心には、「いて座A★(エー・スター)」というブラックホールがあるよ。もう一種類のブラックホールはもっと小さい。ブラックホールは、太陽よりも重い星が爆発してできるって最初に言ったよね。そういうものは「恒星質量ブラックホール」という。つまり、星があるところならどこにでも存在する可能性があるんだ。 | |
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銀河の中心にある巨大ブラックホールはどうやってできたの? やっぱり星が爆発してできたの? | |
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実は、それはまだ解明されていないんだ。いくつもの小さなブラックホールが合体してできたともいわれている。とにかく、ブラックホールに関しては、まだまだわからないことだらけ。でも、研究は着実に進んでいて、もっと細かい部分までわかる映像が見られるようになれば、観測データなどと併せて、いろいろなことがわかってくると思うよ。 |
●ブラックホールの構造(M87の場合)
保護者の方へ
ブラックホールはもともと理論上の存在でした。物理学者のアルベルト・アインシュタインは、「一般相対性理論」のなかで、物体の質量や密度が非常に大きくなると、重力が無限に大きくなる領域が現れる、という理論を唱えました。それからおよそ60年後の1970年代に入ってから、飛来するX線の観測によって、はくちょう座の中にこうした領域が存在することが認められました。2000年代に入ると、銀河の中心に巨大なブラックホールがあることも認められ、近年は2019年にブラックホールの撮影成功が発表されるなど、ブラックホールの正体に迫る研究成果が次々と発表されています。理論上の存在だったものが実在する科学に進化する。サイエンスを追究する醍醐味がここにあります。
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