受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2017年5月のBooks

 本、書物、書籍、図書。本を指すことばにもいろいろあります。違うことばなのに同じような意味を持つものは、意外とたくさんあります。たとえば「道」と「道路」。同じ意味のように思えますが、「スターへの道」とはいっても「スターへの道路」とはいいません。今月紹介する『似ている日本語』では、そんな同じようで少し違うことばを集めて解説しています。似ていることばでも使い方を考えると違いがわかり、あらためて日本語表現の豊かさに気づかされる一冊です。

『ノラのボクが、家ネコになるまで』

  • ヤスミン・スロヴェック=作
  • 横山和江=訳
  • 文研出版=刊
  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け

気ままで楽しい ノラネコ暮らし、でも ペットも悪くないかも

注目の一冊

 ネコを飼うとしたらどんなネコがいいですか。人懐っこいネコ? 毛並みがきれいなネコ? ネコから見れば勝手な話ですが、案外ネコのほうでも家族になるならこんな人がいい、と考えているかもしれません。
 たとえばおやつをたくさんくれる人、背中をなでなでしてくれる人、おもしろいことをしてくれる人、段ボール箱で遊ばせてくれる人、ぎゅうぎゅう抱きしめてこない人…。ノラネコの主人公が、家族になる人に求める条件はまだまだあります。なんたって、気ままなノラネコ暮らしがいちばんなのですから。
 ある日、空き家に引っ越してきた一家の偵察に行った主人公。家の中で女の子がおいしそうなものを食べていたので、さっそく得意の「必殺ウルウルおめめ」で甘え、見事に食べ物を手に入れます。女の子がとてもかわいがってくれるので、「人と家族になるのも悪くはないかも」と思うのでした。
 世渡り上手で、束縛されるのが嫌いなノラネコが、人と家族になるまでを描くシンプルな物語です。魅力はなんといっても、主人公の憎めないキャラクターです。その主人公の語りで物語が進行していくので、ネコの立場で読めるところが一つのおもしろさになっています。
 どのページもイラストが中心で文字は少なめ。長い文章が苦手な人でも気軽に読むことができるので、物語を読む楽しさを知るきっかけになるかもしれません。ペットを飼っている人は、今まで以上にペットを大切にしたくなる、ほのぼのとしたお話です。

『ミツバチぎんの おくりもの』

  • 西本鶏介=作
  • おぐらひろかず=絵
  • すずき出版=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:幼児向け

一匹のミツバチと バイオリン弾きの おじいさんの友情物語

 丘の上の家に独りで暮らすバイオリン弾きのおじいさん。ある日、ベランダの窓からミツバチが飛び込んできました。そしてテーブルの上のカップに止まって、羽を震わせました。その音はバイオリンの音にそっくりでした。それ以来、ミツバチは毎日、おじいさんのところにやってきました。ところが突然、ミツバチは姿を見せなくなってしまいます。
 ミツバチとおじいさんの交流を通して、生きていくことの厳しさと、感謝することの大切さを描きます。柔らかな色調で描かれた絵が、物語を優しい空気で包みます。どんなにはかなく小さな命でも、一つひとつが大切な命なのだということが伝わってきます。

『絵詩集 森のおしゃべりー命あふれる屋久島の心』

  • たにけいこ=詩・絵
  • てらいんく=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校低学年・小学校中学年向け

屋久島の大自然から 感じた永遠の命を 生き生きと描く20編

春風にふかれ
とばされた
ひとつぶのタネ
ながい月日が すぎさり
ひとつぶは いくつもの
大きな森になっていた
一億年の 森の夢
それは
ひとつぶから はじまる
─「森のゆめ」より  「屋久島の森にたたずんでいると大自然と一体になって空想の世界が広がり、たくさんの生き物たちの声が語りかけてくる」と作者。川のせせらぎ、鳥たちの声、虫たちのささやき。ページをめくるたびに、屋久島の森にあふれる命のおしゃべりが聞こえます。屋久島の大自然のすばらしさを、20編の詩と、ほのぼのとしたメルヘンタッチの絵が描き出します。

『キャプテン 君は何かができる』

  • ちばあきお=原作
  • 山田明=小説
  • 学研プラス=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校高学年向け

できなければ できるまで練習すればいい 弱小野球部の努力と挑戦

 野球の名門、青葉学院から墨谷二中に転校してきた谷口タカオ。野球部に見学に行くと、青葉学院の野球部にいたということで注目を集めます。でも試しに部長がノックを受けさせるとエラーばかり。実はタカオは、青葉学院の野球部では2軍の補欠だったのです。大恥をかいて野球部に入るのをやめようと思うタカオに、父さんは一緒に野球の練習を始めようと誘います。
 野球漫画の金字塔といわれた人気作品の小説版です。タカオのほか野球部の同級生や後輩たちの語りによって、物語は進行していきます。時には悩み、ぶつかり合いながらも、打倒青葉学院に向けて努力を重ねていく、墨谷二中野球部の挑戦をさわやかに描きます。

『見えない大気を見る
身近な天気から、未来の気候まで』

  • 日下博幸=著
  • くもん出版=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

手軽にできる実験が満載 空と天気の不思議を わかりやすく解説

 空気は透明で目に見えないはずなのに、どうして昼の空は青く、夕焼けの空は赤く見えるんだろう。風はどこから来て、どこに行くんだろう。雲は水滴の集まりなのに、なぜ雨のように空から落ちてこないんだろう。空を見ているとさまざまな疑問が湧いてきます。
 身近な風や雨の話から、ヒートアイランド現象やスーパーコンピューターによる未来の気象予測まで、大気現象の不思議や気象学のおもしろさを、気象学の研究者がわかりやすく教えてくれます。ペットボトルなど、身近なものを使ってできる実験も数多く紹介され、身の回りの現象と空で起こっている現象が、同じ自然法則に基づいていることがよくわかります。

『何がちがう? どうちがう?
似ている日本語』

  • 佐々木瑞枝=著
  • 東京堂出版=刊
  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け・一般向け

「傷」と「怪我」 「そっくり」と「瓜二つ」 どこがどう違う?

 「傷」と「怪我」、「無料」と「タダ」、「そっくり」と「瓜二つ」、「取り戻す」と「取り返す」。日本語には、同じような意味なのに、微妙な違いがあることばがたくさんあります。でも違いを説明するとなると、意外に難しいものです。
 そんなときは、使い方を考えればわかります。たとえば「心の傷」とはいいますが「心の怪我」とはいいません。「声がそっくり」とはいいますが、「声が瓜二つ」とはいいません。「落ち着きを取り戻した」とはいいますが、「落ち着きを取り返した」とはいいません。そんな似ていることばを集めて、意味の違いや使い方の違いを説明しています。楽しいクイズにできるねたもたくさん入っています。

『精霊の守り人』

  • 上橋菜穂子=作
  • 新潮社=刊
  • 定価=590円+税

創造の産物なのに 鮮やかに目に浮かぶ 壮大な世界観


宮前平校 校舎責任者
大澤 塁 先生

 わが家は親子で読書の楽しさを共有する習慣があり、わたしが息子に本を薦めることもあれば、息子がわたしに薦めてくれることもあります。この本も、当時、中学生だった息子に薦められたことがきっかけで読みました。バルサという主人公が、皇国の幼い皇子を刺客や魔物から守るために戦っていく物語で、歴史ものが好きな人でも、戦記ものが好きな人でも楽しめる和製冒険ファンタジーです。
 冒険ファンタジーというと、主人公は少年剣士のような男性をイメージしますが、バルサは30歳の女用心棒です。そんなバルサが幼い皇子と出会って、時には母性を感じさせながら皇子の命を守るために戦う。そうした設定自体がおもしろく、また皇子がバルサと困難を共にしながら成長していく、成長物語になっているところも魅力です。
 描かれている世界観は現実のものではなく、完全に作者が生み出した創造の産物です。にもかかわらず、無理なく物語が展開し、違和感なく読み進むことができます。物語のなかでは「サグ」という人間の世界と、「ナユグ」という精霊の世界が出てきます。ナユグは誰も見たことのない世界なので、頭の中で思い描くことはできないはずですが、読む人には何となく「こんな世界ではないか」というものが「見えて」きます。読む人によって違う、それぞれのナユグが「見える」のは、作者の文章の力によるものでしょう。
 バルサとチャグムの物語は全10巻のシリーズになっており、本書に続く『闇の守り人』もわたしの大好きな作品です。シリーズの最後は青年となったチャグムが、この世界全体を救うために敵に立ち向かうクライマックスを迎え、終わりまで読むと、今まで〝点〟だったものがきれいに〝線〟につながります。その壮大なストーリーの入り口に当たるのが本書です。読み始めたら、ぜひ10巻すべてを読み通してほしいと思います。

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