受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2017年5月のBooks

 猛暑が予想される今年の夏。気温が高くなる昼下がりは、熱中症にならないよう、冷房の効いた部屋でミステリーでも読みませんか。今月紹介する『香菜とななつの秘密』と『ナンシー探偵事務所』は、それぞれ学校と商店街を舞台に、身近なところで起こる不思議な事件を主人公が解決していくお話です。どちらも解決のヒントがあちこちに散りばめられています。観察力と推理力をはたらかせて、作者が仕掛けた謎に挑戦してください。

『銀杏堂』

  • 橘春香=作・絵
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,600円+税
  • 対象:小学校高学年向け

不可思議な品物が並ぶ骨董店 そこはおばあさんの 冒険物語の宝庫だった

注目の一冊

 レンちゃんが住んでいる街に、高田さんというおばあさんが経営する小さな骨董店があります。店の名前は「銀杏堂」。お店には、レンちゃんが見たこともない奇妙なものが所狭しと並んでいます。
 たとえば、もじゃもじゃの黒い糸のようなものが入ったびん。見ていると、その黒い糸はかすかに動きました。高田さんによれば、黒い糸の一つひとつはインクでできた文字の虫。びんを開けると、文字がことばどおりに整列して手紙の文面になるしくみになっています。高田さんはレンちゃんに、このびんをパリの古いお店で見つけたときのことを話し始めました。それはとても不思議なお話でした。
 ほかにも大きなニシキゴイのうろこ、稲妻のかけら、四つ葉のクローバーが入ったエメラルド、溶岩で作ったコーヒー等々。銀杏堂にある不思議な商品は、どれも高田さんが長い人生のなかで、さまざまな体験を通して集めたもの。そのときの話をレンちゃんに語って聞かせる形で進む、14のお話が収録されています。
 意志が強く、自分の思った道を突き進む高田さん。幼い頃の武勇伝あり、南極での大冒険物語あり、若き乙女の頃の美しい思い出あり。語られるお話はすべて高田さんの人生の宝物です。「今を生きることも大切だけど、歴史や思い出こそ宝でもあるんだ。その思い出を物に託すと、そのものは輝く」と高田さん。一つひとつがそれぞれ違う味わいを持つ、不思議でどこか懐かしい14の物語を、作者自身によるカラフルでおしゃれな挿絵が彩ります。

『わたり鳥』

  • 鈴木まもる=作・絵
  • 童心社=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

北極から南極に渡る鳥も! 地球スケールで旅する渡り鳥のすごさ

 春には子育てのために、冬には北国の寒さを避けて日本にやってくる渡り鳥。日本だけではありません。世界中には、さまざまな種類の渡り鳥がいます。なかには北極から南極まで旅する鳥や、険しいヒマラヤの山々を越えて北に渡っていく鳥もいます。なぜ鳥たちはそんな厳しく長い旅をするのでしょうか。なぜ目的地への正しいルートがわかるのでしょうか。
 世界の渡り鳥を紹介する絵本です。登場する鳥は113種。どんな鳥がいつ頃どこに渡っていくのか。それが鳥の色や大きさの違いもわかるように描かれ、いかにたくさんの種類の鳥が、それぞれ安心して暮らせる場所をめざして旅をしているか知ることができます。

『ぼく、ちきゅうかんさつたい』

  • 松本聰美=作
  • ひがしちから=絵
  • 出版ワークス=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校低学年向け

身の回りで見つけた 小さな発見を報告する それがぼくの任務

 トモヤは「ちきゅうかんさつたい」の隊員第1号。任務は、身の回りのいろいろなものを観察して、隊長のおじいちゃんに報告することです。たとえば土手にタンポポが咲いたこと、ヒマワリの種をもらったこと、学校の友だちのことなど。ある日、病気のおじいちゃんは、自分はもうすぐ「うちゅうほんぶ」の隊員になるといいます。宇宙から地球隊員を見守る仕事をするというのですが…。
 おじいちゃんとトモヤが、身の回りの小さな発見を大切にして過ごしていく心温まる日々が描かれていきます。小さな虫もきれいな花も、そして人間も。春から夏へと季節が移りゆくなかで、命の輝きも形を変えていきます。

『みてろよ! 父ちゃん!!』

  • くすのきしげのり=作
  • 小泉るみ子=絵
  • 文溪堂=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校低学年向け

父ちゃんが来なくても ぼくは絶対に 1番でゴールする!

 アキヨシの父ちゃんは大工さん。今も学校の近くの家を建てています。その大事な仕事があるので、アキヨシの運動会を見に行くことができません。がっかりするアキヨシ。駆けっこの練習のとき、クラスでいちばん速い子に勝ったので、今年は絶対に1番になれると思ったのに。父ちゃんは仕事のほうが大切なんだ。いじけるアキヨシを見て、母ちゃんはアキヨシをあるところに連れて行きました。
 たとえ運動会に行くことができなくても、いつもアキヨシのことを思っているお父さん。アキヨシはお父さんの後ろ姿を見ることによって、その深い愛情や生き方、考え方を感じ取っていきます。親子の心温まるお話です。

『香菜とななつの秘密』

  • 福田隆浩=作
  • 講談社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校高学年向け

引っ込み思案の主人公が 抜群の観察力で謎を解く 学校ミステリー

 5年生の香菜は幼い頃から引っ込み思案で、人前で話すことが苦手です。ある日、香菜は仲良しの梨花ちゃんから、自分の荷物のなかに、学年文庫の本が知らないうちに紛れ込んでいるという話を聞きます。本を返すとまた別の本が入っているというのです。香菜たちは、梨花ちゃんの荷物を見張ることにしました。
 恥ずかしがり屋の香菜ですが、観察力は人一倍鋭く、いつも物事を注意深く見ては、小さな発見をしています。そんな香菜が学校で起こった事件を、友だちと一緒に解決していきます。勇気を出してみんなの前で話をする香菜。その姿を見守る周囲の視線が温かく、自分らしく生きる香菜を見ていると元気がもらえます。

『ナンシー探偵事務所 呪いの幽霊屋敷』

  • 小路すず=作
  • カタノトモコ=絵
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校高学年向け

幽霊の正体とは? 祖母と孫の探偵コンビが 危機を乗り越え大活躍

 ママの留学中、おばあちゃんの家で暮らすことになった椎菜。近所でナンシーと呼ばれているおばあちゃんは、さびれた商店街で探偵事務所を開いています。そこへ近所の不動産屋さんから、あるお屋敷の幽霊退治をしてほしいという依頼が入ります。探偵小説が好きな椎菜は、張り切っておばあちゃんと一緒にお屋敷の張り込みに出かけますが…。
 初めておばあちゃんの家に来た椎菜を、死体のふりをして出迎える茶目っ気たっぷりのナンシーが魅力的です。小さな事件に思えた幽霊事件には、大きな秘密がありました。一件落着に見えた事件が予想外の方向に動き、椎菜たちは絶体絶命の危機に。二転三転する展開にわくわくします。

『吾輩は猫である』

  • 夏目漱石=作
  • 新潮社=刊
  • 定価=630円+税

繰り返し読むたびに 成長した自分と出会える 普遍的な名作


たまプラーザ校 校舎責任者

 「吾輩は猫である。名前はまだ無い」。
 有名な一節で始まるこの本を、わたしが最初に読んだのは小学生のときです。猫が主人公だから簡単に読めるだろうと思ったのが大間違い。難しいことばが多く、親に聞いたり辞書を引いたりしながら苦労して読みました。2回目に読んだのは学生のとき、3回目に読んだのは社会人になって間もないときです。そのころは知識も増えていたので、猫の目線で人間観察したことが皮肉っぽく書かれた作品であることがわかりました。また、夏目漱石のほかの作品と比べることもできました。
 そして今回あらためて読み直してみました。これで4回目ですが、違う本かと思うほど新しい発見がいくつもありました。
 物語は、ネコの目線から見た人間社会の滑稽味あふれる風刺が中心になっています。魚なんてそのまま食べればいいのに、なんで人間はいろいろ手を加えて食べるのか。地球上の土地は誰のものでもないのに、なんで人間は「この土地は自分の土地だ」なんて言うのか。猫から見た人間の論理はおかしなことばかりです。主人公の飼い主は、いつも友人たちとくだらない話で時間を浪費していて、彼らのことを猫は「太平の逸民」と表現します。子どものときはわかりませんでしたが、大人になって読んでみると、そう表現した意味がわかります。また、以前は出来事の表面しかとらえていなかったものに物悲しさを感じたり、人間を客観視して読んだりできるようにもなりました。
 同じ本を繰り返し読んで、そのたびに新しい発見ができるのは幸せなことだと思います。本は待ってくれます。読み手の成長が追いつくまで。それが100年以上前に書かれた本なのに、いまだに読み続けられている理由の一つなのかもしれません。小学生にはわかりにくい部分が多いかもしれませんが、たまにはこんな歯応えのある本をがんばって読んでみませんか。5年後、10年後に読み直したとき、以前とは変わった自分を感じながら、おもしろく読めるのではないでしょうか。

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