受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2017年9月のBooks

 何か楽しいことがあったとき、人に話したくなりませんか。わくわくする映画を見たとき、すてきな音楽を聴いたとき、そしておもしろい本を読んだときも同じです。「どきどきして一気に読んだ」「自分にも同じようなことがあった」「主人公のことばが忘れられない」など、人に伝えたい、教えたいと思うことが出てきます。そんな思いをぶつけるのが読書感想文です。「さぴあ作文コンクール」の締め切りは9月9日(土)。あなたも挑戦してみませんか。

『ラブリィ!』

  • 吉田桃子=作
  • 講談社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校高学年向け

人は見た目じゃない、 わかってはいるけれど 気にするのはなぜ?

注目の一冊

 拓郎は映画を作るのが趣味の中学生。映画といっても、家庭用ビデオで数分の映像を撮るくらいですが、なんと落選続きだったコンクールで審査員特別賞に選ばれます。ところが、毒舌で知られる審査員の講評を読んで、拓郎はがくぜんとします。「主演のブス女優がすばらしかった」と書いてあったのです。
 こんな講評を読んだら、主役になってくれた涼子が傷ついてしまう。そうでなくても涼子はふだん、クラスの男子からブス呼ばわりされているのです。拓郎は、受賞のことは秘密にしようと決めます。でも教室に入った途端、クラスメートの亜美奈が声をかけてきました。「拓郎くん、おめでとう!」
 人は見た目じゃない。誰もがわかっていることですが、世の中でかわいい子がちやほやされるのも事実です。男子も女子も痩せようと努力したり、おしゃれをしたりして外見を少しでも良くしたいと思います。「俺たちってどうして見た目を気にするんだろう」。悩む拓郎は涼子をさりげなくかばう心優しい男子ですが、涼子を主役にした理由を問い詰められ、つい涼子を傷つけることを言ってしまいます。
 思春期最大の関心事に、疑問の答えを探しながら正面からぶつかっていく主人公の日常が、ユーモラスな語り口で描かれていきます。悪口を言われながらも、いつも堂々としている涼子。自分のずるさを告白する美人の亜美奈。格好いい女子の存在が悩む拓郎の背中を押してくれます。こんなとき自分ならどうするだろう。拓郎と一緒に考えながら読んでみてください。

『もののけの家』

  • ほりかわりまこ=作
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

“怪かしの者”続々登場 絵本で楽しむ 「今昔物語集」の世界

 今は昔、京の都に恐ろしい妖怪が出るとうわさされる古い屋敷がありました。その家に、国の大事な仕事をしている宰相が引っ越してきました。周りが止めても「そんなうわさは何でもない」と聞かないのです。ところが住み始めると、さっそく庭に怪しい者が姿を見せました…。
 平安時代末期に成立したとされる説話集『今昔物語集』には、偉い人の失敗談や不思議な出来事などの短い物語が多数収められています。それをもとに、新たに創作された絵本です。庭をうろつく小男、老人の姿をした水の精、天井の格子からのぞくたくさんの顔など、夜な夜な登場する怪しい者たち。暑い夏の夜がひんやり過ごせます。

『世界恐竜発見地図』

  • ヒサクニヒコ=絵・文
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,850円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け・小学校高学年向け

かつて地球は 恐竜だらけだった 地図で見る化石の産地

 かつて地球にはたくさんの恐竜が暮らしていました。世界中で発見されている恐竜の化石は、そのごく一部にすぎませんが、あらためて化石が発見された場所を見ると、いかに世界中が恐竜だらけだったかがわかります。ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、アジア、そして北極や南極でも化石が発見されています。
 世界のどこでどんな化石が発見されたのかがわかる、恐竜地図です。登場する恐竜は約600種。各恐竜の特徴だけでなく、研究者や化石ハンターの紹介、化石発掘競争の話、進化の説明なども書き込まれています。約1億6000万年の間、恐竜の星だった地球。それなのになぜ恐竜は突然、滅びたのか。興味は尽きません。

『タイガー・ボーイ』

  • ミタリ・パーキンス=作
  • ジェイミー・ホーガン=絵
  • 永瀬比奈=訳
  • すずき出版=刊

  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

少年は言った 「人生にはお金より 大事なことがある」と

 インドの村に住むニールは学校で一番の成績。校長先生は、ニールが奨学金を得るための試験に受かって、都会の中学に進むことを期待しています。
 ある日、父は保護区から逃げたトラの子探しに出掛けます。捕まえて悪い商人に渡せば、報奨金でニールに家庭教師をつけられるからです。でも、そうなればトラの子は売られ、やがては薬や毛皮にされてしまいます。それを知ったニールは、その前に自分がトラを見つけて、保護区に返したいと思いますが…。
 貧しくても正しい道を生きようとする家族の物語です。多くの問題を浮き彫りにしながら、村を良くするためにも自分はもっと学ばなければならないと気づくニールの姿がさわやかに描かれています。

『花あかりともして』

  • 服部千春=作
  • 紅木春=絵
  • 出版ワークス=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

花禁止令の戦時下 平和への願いを込めて 母子は花を育てた

 小学5年生の花は両親とおばあちゃんの4人暮らし。花の名付け親は、草花が大好きなおばあちゃんです。ある日、花は入院したおばあちゃんのお見舞いに行きます。おばあちゃんの手を握って目を閉じる花。気がつくと花は古い家の前にいました。「静江」と、見知らぬ男の人が自分を呼びます。「静江」は、おばあちゃんの名前でした。
 かつて日本に、花を育てることが禁じられた時代があったことを知っていますか。「花を植えるくらいならイモを植えろ」。戦時中の食糧難の時代、花は「不要不急の作物」として栽培が禁じられていた地域もあったのです。そんな時代に、なんとか明るく生きようと、平和への祈りを込めて花を育て続けた家族の物語です。

『人間はだまされる』

  • 三浦準司=著
  • 理論社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校高学年向け

操作される情報 何が本当で何がうそか 見分けるにはどうする?

 アメリカ大統領選挙の前も、イギリスのEU離脱をめぐる国民投票の前も、イラクが大量破壊兵器を保有しているとして始められたイラク戦争の前も、まことしやかに流されたデマ情報がありました。また東日本大震災のときは、特に原発事故をめぐる報道の信頼性が揺らぎました。ほかにもいかに情報が不確かなものか、いかに操作されやすいものかを語る事例が多く登場します。
 新聞、テレビ、SNSなど、さまざまなメディアの情報が行き交うなかで、どう情報とつき合っていけばよいかを、ベテランジャーナリストが教えてくれます。客観報道の難しさがわかり、情報を無自覚に受け取ってしまうことの怖さが伝わってきます。

『サマーレスキュー ~天空の診療所~』

  • 秦建日子=著
  • 河出書房新社=刊
  • 定価=520円+税

「自分にできる人助け」と、 信念を持ってがんばる 山の医師たちの姿に感銘


新越谷校 校舎責任者

 この作家の別のタイトルの本を読んで、ほかにどんな本を書いているのかなと調べたときに見つけた本です。皆さんもこのような経験があるのではないでしょうか。
 標高2500メートルの地点にある山の診療所を舞台にした物語です。もともとテレビドラマの脚本として書かれたフィクションですが、モデルになった人物やシーンは存在し、しかもかなり現実に基づいて書かれています。その詳細についてはあとがきを読んでもらえればと思います。
 登山事故の報道はよく耳にします。でもそのとき、現地での医療体制がどのようになっているのかを意識する人は少ないのではないでしょうか。標高の高い山に診療所があること自体、考えてみれば不自然ですが、逆にいえば、必要性はより一層高いことは容易に理解できます。商業的な意味合いからか、都会などの人口密集地域の医療体制はどんどん整備されていく一方、取り残された地域は間違いなく存在します。その一部であるこのような山岳診療所は、若い医師たちがボランティアで運営しているといってよい状況です。医師のほとんどが大学医学部の登山部員などから構成され、それを支える看護師、さらにはバックアップをしてくれる医療関係の企業があって成り立っているようです。なかには、大学を卒業してから長くこのような山での診療に携わっている方もいます。
 この話を通して、人を助ける技術を持っている医師にしかできないことがあると、その重要性を再認識すると同時に、その生かし方についても考えさせられました。「自分にできる人助け」と言って誠心誠意、医療に取り組む医師を中心とする多くのスタッフには、敬意の念しかありません。余談ですが、長野県松本市に涸沢診療所という山岳診療所があって、その数年前の所長が昔の教え子だったということが、この本をきっかけにわかりました。今も信念を持って医師としてがんばっている姿が目に浮かび、すがすがしい気持ちになりました。

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