受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2017年12月のBooks

 全国学校図書館協議会と毎日新聞社が実施した「第63回学校読書調査」によると、小学生のうち、過去1年間で本を読んだ後に「感想文や絵をかいた」ことのある人は42%で、「友だちや家の人と本について話し合った」ことのある人は40%でした。感想文や絵は学校の宿題でかいた人も多いでしょうが、同じくらい、本について人と話をしているのですね。同じ本でも感想は人それぞれ。人の感想を聞くと、その本の別の魅力がわかります。今年もあと少し。この1年間に読んだ本を振り返って、友だちと話してみませんか。

『レイミー・ ナイチンゲール』

  • ケイト・ディカミロ=作
  • 長友恵子=訳
  • 岩波書店=刊
  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校高学年向け

「何があっても あたしがいるし、あなたがいるし あたしたちはいっしょにいる」

注目の一冊

 お父さんが駆け落ちして家を出たため、レイミーはお母さんと2人暮らし。美少女コンテストで優勝して新聞に写真が載れば、それを見てお父さんが帰ってきてくれると考え、コンテストで披露するバトントワリングのレッスンを受け始めます。レッスンには、同じくコンテストの優勝をめざすベバリーとルイジアナも来ていました。2人も父親のいない家庭で育ち、それぞれコンテストに優勝したい複雑な理由がありました。
 レイミーはコンテストの応募用紙に「あなたのした良い行い」を記入するため、老人ホームのお年寄りに本を読んであげようと考えます。選んだ本はナイチンゲールの伝記です。ところが老人ホームに行くと、「慈善家ぶった人間には興味がない。慈善家とはまさにナイチンゲールみたいな人のことだからね」と言われてしまうのでした…。
 母への反発からコンテストをぶち壊そうと考える気の強いベバリー。両親をなくし、養護施設に入れられるのを恐れているルイジアナ。家庭の事情も性格も異なる3人は、次々とトラブルが起きるなか、そのたびに意見がぶつかり合います。それでも次第に、自分には納得できないことであっても相手の気持ちを尊重し、助け合える存在になっていきます。
 ルイジアナが鳥籠から勝手に放ってしまった小鳥を、夜明け前に3人で見つける場面は、美しく感動的で、読む人を幸せな気持ちに包みます。それぞれに心の痛みを抱えながらも、懸命に前に進もうとする3人の姿を描く友情物語です。

『いのちはめぐる』

  • 嶋田泰子=文
  • 佐藤真紀子=絵
  • 童心社=刊
  • 定価=1,600円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

小さな虫から大きな生き物まで 繰り返される命のリレー

 春。葉や花をめざしてたくさんの虫たちがやってきます。ミカンの葉に卵を産んでいるのはアゲハです。ところがアゲハはカマキリに襲われ、そのカマキリにヒキガエルが近づいてぱくり。そのヒキガエルを今度はカラスが狙っています。
 生き物は「食べて食べられて」という関係のなかで生きています。食べられたら終わりではなく、それによってほかの生き物たちの命をつないでいます。ワシやタカ、あるいはシャチのような大きく強い生き物たちも同じです。死ねば分解されて地中や海の栄養になって、小さな命の誕生を助けます。そんな食物連鎖の実際を、子どもたちになじみ深い虫や魚などを例に教えてくれる絵本です。

『きのうえの おうちへ ようこそ!』

  • ドロシア・ウォーレン・フォックス=作
  • おびかゆうこ=訳
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,500円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

人づき合いが苦手だなんて 言ってられない 何が何でも助けるのだ!

 ツイグリーさんは木の上の家で、ニャンコという犬と一緒に暮らす変わり者。家にはソファーもテレビもあり、ツイグリーさんは好きなことをして暮らしています。でも誰かが訪ねてくると隠れてしまいます。ツイグリーさんは、ちょっとだけ人に会うのが苦手なのです。ある日、街に大きな嵐がやってきて、街は一面、海のようになってしまいました。
 ニャンコが街に買い物に行ったり、クマの友だちがいたり。ツイグリーさんの生活はとても愉快です。社会で生きていくうえで、違う考えの人でも受け入れること、いざというときは全力で助け合うことなどがいかに大切かがユーモアたっぷりの物語を通して伝わってきます。

『クリスマスがちかづくと』

  • 斉藤倫=作
  • くりはらたかし=画
  • 福音館書店=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

クリスマスには いつも留守のお父さん その秘密を知った少年は…

 セロはクリスマスが嫌いです。お父さんはいつも留守で、お母さんはデパートのお仕事に行くからです。プレゼントを買いに来るお客さんで、デパートが大忙しになるのはわかります。でもお父さんはなぜいつも、クリスマスの日に家にいないのでしょうか。お母さんに聞いてもはぐらかされてばかりでしたが、10歳になった年、お母さんは内緒にする約束で教えてくれました。その話はセロにとって信じがたいものでした。
 クリスマスが嫌いだった少年が、クリスマスを大切にしている少女と出会ったことから、人の気持ちを考えられるように変わっていきます。クリスマスプレゼントにぴったりの一冊。心温まる物語です。

『つくえの下のとおい国』

  • 石井睦美=著
  • にしざかひろみ=絵
  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

祖父の古い机、それは トホウ・モナイ国へ 通じる門だった

 モナとリオの姉妹は、おじいちゃんの机が大好き。どこかの国の門のようにどっしりした机で、机の下で遊ぶと魔法にかかったみたいに楽しいのです。ある日、机の下で遊んでいると、トホウ・モナイ国からやって来たモモジョという、毛糸の塊のようなものが現れました。壁の向こうに吸い込まれていくモモジョを追って壁に向かうと、壁はぐにゃりとして、2人はもやに包まれました。
 モモジョ、姿を持たないフムフムさん、大きな目玉のアルール姫など、壁の向こうは奇妙な住人だらけ。トホウ・モナイ国とはいったい何なのでしょう。遠くにあるようで実は身近なところにある、トホウ・モナイ国の不思議な物語です。

『ツシマヤマネコ飼育員物語』

  • キム・ファン=著
  • タカギナオコ=絵
  • 坂本英房=解説
  • くもん出版=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

生息数はわずか100頭 絶滅から救うための 取り組みと奮闘ぶりを紹介

 2017年5月11日、京都市動物園のツシマヤマネコ、メイが2頭の赤ちゃんを産みました。帝王切開での出産でしたが、手術は無事に終わり、2頭はすくすく育っています。前年の出産では残念ながら赤ちゃんが育たなかったので、飼育員の高木直子さんほか動物園のスタッフは、この日が来るのを心待ちにしていました。
 ツシマヤマネコは長崎県の対馬だけに生息する小型のネコ科の動物で、最近の調査では生息数は100頭程度。絶滅が心配されているため、動物園で飼育、訓練してから対馬に放す取り組みが進められています。その拠点の一つ、京都市動物園の活動を通じて、絶滅危惧種の繁殖や野生復帰事業の実際を紹介します。

『あん』

  • ドリアン助川=著
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,500円+税

幅広く物事を考えるためにも 知っておいてほしい この過酷な人生の現実を


松戸校 校舎責任者

 小さなどら焼き店で働く千太郎と、店でアルバイトをすることになった70代の女性、吉井さんとの交流を軸に描く物語です。
 前半は、千太郎と吉井さんがどら焼き店で働く日々を中心につづられていますが、後半になると2人の手紙のやり取りが出てきます。吉井さんはそのなかで自分が歩んできた過酷な人生をつづりながら、人は何のために生きるのかについて結論を見いだしていきます。悲しい過去があるからこそ出てきた結論です。重いテーマを扱った作品は疑問を投げ掛けるだけで終わるものが多いですが、本書は、はっきりした結論を書いてくれています。そこがほかの作品と違うすばらしいところだと思います。
 この本を読んでいて、萩原朔太郎の詩集『月に吠える』の序文に出ていたことばを思い出しました。そこに、「どうことばを駆使しても説明し切れない感情があるときは、詩をつくればいい」といったことが書かれていました。吉井さんはどれほどの思いをめぐらして生きてきたのでしょうか。それが美しい表現で語られています。植物や鳥など、登場人物のせりふに出てくる自然について語ることばもとても美しく、感銘を受けます。
 皆さんはこれからいろいろなことを学び、知っていくと思います。「知りたいから学ぶ」ことも大切ですが、幅広い視野で物事を考えるとき、「知っておかなくてはならないこと」もたくさんあります。吉井さんが歩いた過酷な人生は、人権がないがしろにされた歴史的な事実によるものです。戦争のこともそうですが、こうした事実を知らないままでいてはいけないと思います。
 映画化されたことで話題になった小説で、文庫版も発売されています。映画もすばらしい作品です。映画のほうがわかりやすく表現されているので、先に映画を見て、後で原作を読んでもいいでしょう。小学生にはやや難しいかもしれませんが、中学生になってからでもぜひ読んでください。

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