受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2018年1月のBooks

 本の歴史のなかで、最も重要な発明の一つがグーテンベルクの活版印刷術です。これによって大量印刷が可能になり、誰でも本を手にできるようになりました。視覚に障害がある人にとって、点字はこれと同じくらい画期的な発明です。幼くして失明したルイ・ブライユは、15歳のときに六つの点だけで文字を表す方法を考えました。生活用品や公共の場で広く使われるようになった点字の表示が、1人の少年が生みだしたものだったとは驚きです。ルイの努力は今月紹介する『6この点』に描かれていますので、読んでみてください。

『オオカミを森へ』

  • キャサリン・ランデル=作
  • ジェルレヴ・オンビーコ=画
  • 原田勝=訳
  • 小峰書店=刊

  • 定価=1,700円+税
  • 対象:小学校高学年向け

母を取り戻すため 少女はオオカミにまたがり 雪原を疾走した

注目の一冊

 ロシアの森で母と暮らす少女フェオ。母は「オオカミ預かり人」です。貴族にペットとして飼われていたオオカミが、人の手に負えなくなったとき、森で暮らせるように訓練して森に帰す。それがオオカミ預かり人の仕事です。フェオもオオカミの傷を治したり、森で訓練をしたりして母の仕事を手伝っています。
 ある日、軍のラーコフ将軍がやってきて、フェオたちが面倒を見ているオオカミが、狩猟場のヘラジカを殺したので、オオカミを殺すように迫ります。抵抗する母は刑務所に送られ、家も焼き払われてしまいます。
 いつもオオカミに話し掛け、オオカミの臭いが体に染み込んでいるフェオ。ことばを覚えるより前に遠吠えができるようになったフェオ。それでも「このオオカミはわたしの言うとおりにするかもしれないし、しないかもしれない」と距離を置いて接するところに、単なる動物との友情物語とは違う厳しさがあります。凍てつくような森の冷気、気高さと闘志が漂うオオカミの美しさ、獣や血の臭い、白い雪原をオオカミにまたがって疾走する赤いマントの少女。五感に訴える情景描写が、読む人を物語の世界に引き込みます。
 ラーコフと戦うことを決めたフェオは、村人たちの前でこう語ります。「ラーコフは、世界でいちばん勇敢で賢いオオカミを殺しました。だから今、わたしはその分だけ勇敢にならなきゃいけない。この世にある勇気の合計が減ってしまわないように」。今から100年以上前、帝政時代のサンクトペテルブルク近くの村を舞台とした、勇気ある少女の冒険物語です。

『みんなの防災えほん』

  • 山村武彦=監修
  • YUU=絵
  • PHP研究所=刊
  • 定価=1,600円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

地震、台風、大雪… 災害から身を守るために これだけは知っておこう

 外を歩いているときに地震が起こったら、どうしますか。電車や車に乗っているときはどうでしょう。家にいるとき、学校にいるときはどうでしょう。竜巻、ゲリラ豪雨、雷、大雪なども同じこと。日ごろからの心の備えが大切です。
 災害が発生したときにどう行動すればいいか、気をつけることは何か、どんな準備をしておけばいいかなどを、絵で示しながら具体的に教えてくれます。いざというとき、大人が近くにいるとは限りません。いつどこにいても、自分の身は自分で守ることができるよう、最低限の対処のしかたは頭に入れておきたいもの。そのためにも、身近に置いて時々目を通すようにしたい一冊です。

『6この点 点字を発明した ルイ・ブライユのおはなし』

  • ジェン・ブライアント=文
  • ボリス・クリコフ=絵
  • 日当陽子=訳
  • 岩崎書店=刊

  • 定価=1,700円+税
  • 対象:小学校低学年向け

ぼくは気の毒だなんて 思ってほしくない 本を読みたいだけなんだ

 5歳のときに失明したルイ。学校では、みんなが声を出して教科書を読むのを聞いて暗記しました。学校にも村にも、目が見えない子が読める本はなかったのです。その後、都会の盲学校に入学したルイ。そこには目が見えない人のための本がありました。でも指でなぞれる大きな文字を使っているため、1ページに文が二つしかありません。これでは勉強なんてできない、とルイは思いました…。
 今から200年ほど前に、15歳で点字を発明したルイ・ブライユの子ども時代を描いています。視覚に障害を持つ人に、読み書きへの門を開いた歴史的な大発明が、1人の少年の強い思いから生まれたことがわかる、感動的な物語です。

『絵物語 古事記』

  • 富安陽子=文
  • 山村浩二=絵
  • 三浦佑之=監修
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

イザナキ、スサノオなど 人間味あふれる 神様たちが大冒険

 この国を生んだ神様、イザナキとイザナミ。海の神、山の神、風の神など、国を守る神々を次々と産んでいきますが、イザナミは火の神を生んだときの大やけどがもとで、死んでしまいます。嘆き悲しんだイザナキは、イザナミに会いに死者が暮らす黄泉の国に出掛けます。ところがイザナミを待つ間、見てはいけないという御殿の中を見たイザナキは、驚きで腰を抜かしそうになるのでした。
 日本最古の歴史書『古事記』の上巻につづられている神話を、絵物語としてまとめています。スサノオとヤマタノオロチの戦い、稲羽(因幡)の白兎など、奇想天外な物語が、迫力ある挿絵とともに生き生きと神話の世界をよみがえらせます。

『介護というお仕事』

  • 小山朝子=著
  • 講談社=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校高学年向け

食事のお世話から 認知症の人への接し方まで 小学生向け介護マニュアル

 食事・入浴・排泄にかかわる介護を「三大介護」といいます。食事の介護といっても、ただスプーンを口に運んであげればいいわけではありません。スプーンには食べ物をどのくらい乗せるか、どのくらいの高さからスプーンを口に入れるか、どのように口からスプーンを抜くか。相手の状態を考えないでやると、むせたり、場合によっては食べ物が気管や肺に入ってしまったりすることもあります。
 祖母を介護した経験を持つ著者が、小学生からでも身につけられる介護の基本的なテクニックを紹介します。「食事も入浴も排泄も人の尊厳にかかわる行為。常に自分がされたらどう思うかを考えることが大切」だと著者は語ります。

『マンボウのひみつ』

  • 澤井悦郎=著
  • 岩波書店=刊
  • 定価=1,000円+税
  • 対象:小学校高学年向け

謎多き魚の研究一筋 生態から都市伝説まで マンボウ愛あふれる一冊

 ユニークな形で人気のマンボウ。でもその生態は謎に包まれています。何しろ体が大きいため、じっくり研究することが難しいからです。日本近海に現れるマンボウは2種類いるとわかったのも、実は最近のこと。そんなマンボウの魅力に取りつかれた著者が、自身やほかの研究者の研究の歩みを紹介しながら、その驚きの形態や生態の秘密を解き明かします。
 本書は写真や図版が豊富で、いかにマンボウが特徴のある魚かがよくわかります。生物学的な側面だけでなく、マンボウと人がかかわってきた歴史から、マンボウに関する都市伝説やマンボウ料理まで、幅広い視点でマンボウの魅力のすべてを語ってくれます。

『ねこのおうち』

  • 柳美里=作
  • 河出書房新社=刊
  • 定価=1,500円+税

つらいことがあっても 必ず救いがある─ 胸を打つ作者のメッセージ


大宮校 校舎責任者
重川 俊夫 先生

 飼い主の身勝手な理由で、公園に捨てられた猫と、その猫が産んだ6匹の子猫が、それぞれの「おうち」に引き取られていった後の物語が4話に分かれて描かれています。
 子猫を引き取った人たちは年齢も境遇も違いますが、妻が重い病気だったり、姉が不登校だったり、両親が離婚したり、それぞれが問題を抱えながら孤独を感じて生きています。でも猫との出会いによって問題との向き合い方が変わり、猫を飼うことによって少しずつ明るく生きられるようになっていきます。
 実は4話のうち第3話以降は、2011年の東日本大震災の後に書かれています。芥川賞作家である著者は、最初は人の心の闇の部分を描こうと思ったそうですが、震災をきっかけに、被災した方たちに読んでもらえる物語にしたいと思うようになったと言っています。第1話は捨て猫と独り暮らしのおばあさんを描いた重い話なのですが、最後の第4話に、第1話とかかわる内容が出てきて、救いのある物語で終わっています。また、第4話のなかには子猫を引き取った一人が教会で、入り口に掲示してある「神にできないことは何一つない」ということばの意味を牧師さんにたずねる場面があります。これに答えて牧師さんが苦難について語る場面には、特に感動しました。ここはまさに、被災した方々への作者からのメッセージなのだとわたしは感じました。
 文章自体は難しい表現もなく読みやすい小説です。ただ第1話が重い話なので、小学生が気楽に読める本ではないかもしれません。でもつらいことがあったときに読むと共感でき、救われる部分が大きいと思います。生徒の皆さんだけではなく、保護者の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
 作者は2年ほど前に家族と共に福島県南相馬市に移住しています。自宅の一部を改装して書店を開く考えがあるそうなので、実現したら、この本を持って話を聞きに行ってみたいなと思っています。

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