受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2018年1月のBooks

 いよいよ入試本番。受験生の皆さんの努力が報われるのももうすぐです。本誌3月号では、毎年「みんなの笑顔が輝いた!」を掲載しています。そのなかで受験勉強が終わったらやりたいこととして、「読書」を挙げる人は少なくありません。中学校に入れば忙しい毎日が始まり、好きな本を好きなだけ読むというぜいたくな時間は取りにくいかもしれません。入学するまでの間にぜひ、このぜいたくな時間を楽しんでください。

『ぼくはO・C・ダニエル』

  • ウェスリー・キング=作
  • 大西昧=訳
  • 鈴木出版=刊
  • 定価=1,600円
  • 対象:小学校高学年向け

苦しければ 助けを求めていい 一人ぼっちじゃないんだから

注目の一冊

 13歳のダニエルはアメフトのチームに入っています。といっても試合ではいつも控え選手。練習では給水係です。嫌いなアメフトを続けているのは、父さんも兄さんも親友もアメフトが好きだからです。
 ダニエルは運動より勉強のほうが得意です。でも書けない数字があります。たとえば「9」。9は不吉な数字なので、書くと必ず悪いことが起きると思ってしまいます。いつもはトイレまで10歩で行くところを9歩で行ったり、床のタイルの継ぎ目を踏んだりしても同じ。最悪の事態が起きると思ってパニックになるのです。でも変なやつだと思われたくないので、誰にも知られないよう気をつけています。
 ある日、学校で思いもよらないことが起きます。「サイコ・サラ」と呼ばれ、周囲から変わり者と思われている女の子、サラが、いつもは曇った目をしてけっして誰ともしゃべらないのに、ダニエルとすれ違いざま、目を輝かせて言ったのです。「ハーイ、ダニエル」。
 ダニエルの希望はみんなと同じように「普通」になること。でも思いがけずアメフトの試合で活躍できたり、好きな女の子と親しくなれたり、うれしいことがあるときほど、失敗したくないというプレッシャーで、「普通」でない自分に押しつぶされそうになります。そんなダニエルが、悩みを打ち明けられる相手を見つけることで、その存在が力となり、希望を見いだしていきます。「人は一人ぼっちではない、助けを求めていい」。作者からのメッセージが温かく伝わってきます。

『すまーとぞうさん』

  • 赤川明=作
  • 文研出版=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:幼児向け

「みちゃおれん!」 手助けにきた動物たち さてうまくいくのかな?

 すまーとぞうさんは、足が長くてほっそりしています。歩くとよく足がこんがらがります。でも大丈夫。自分で考えながらゆっくりほどくのが好きだから。いつものように足がこんがらがったぞうさん。そこに女の子がやってきて、「ほどいてあげる」と言いました。でも、足はますますこんがらがるばかり。「長いものなら任せろ」とヘビたちもやってきますが、一緒にこんがらがってしまいました。
 「みちゃおれん!」と言いながら、次々に動物がやってきて助けようとしてくれる、ほのぼのとするお話です。次は誰が出てくるのかなと、ページをめくるのがわくわくします。さて、最後にほどいてくれたのは誰なのでしょうか。

おしごとのおはなし パイロットのたまご』

  • 吉野万理子=作
  • 黒須高嶺=絵
  • 講談社=刊
  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

勉強や訓練で大忙し パイロットになるのって 思った以上に大変

 飛行機が大好きな雄大のあこがれは、いとこの幸也兄ちゃん。その幸也兄ちゃんはパイロットになるために航空会社に入り、今は研修中です。「勉強することが多くて頭がパンクしそう」という幸也兄ちゃんからのメールに、「パイロットになるのって、思ったより大変なんだな」と、雄大は思うのでした。
 雄大が2年生のときに航空会社に入った幸也兄ちゃんが、たくさんの勉強と訓練を重ねて副操縦士になったのは、雄大が5年生になってから。2人の交流を通して、パイロットの仕事内容や一人前になるまでの道のりをわかりやすく教えてくれます。物語を通して職業がわかる「おしごとのおはなし」シリーズの一作です。

『西郷隆盛 明治維新をなしとげた薩摩隼人

  • 泉田もと=著
  • 十々夜=絵
  • 岩崎書店=刊
  • 定価=650円+税
  • 対象:小学校高学年向け

新しい日本をつくるため 激動の時代を駆け抜けた 波乱万丈の生涯を描く

 薩摩藩の貧しい武士の家に生まれた吉之助。生まれたときから体が大きく、相撲をとれば負け知らず。でも剣術は上達しません。落ち込む吉之助に、幼なじみの正助はこう励まします。「剣ができんでも学問がある。兵を使いこなす知恵のあるもんがおらんでは戦に勝てん。うんと学問をして兵を使うほうになればよか」。それから吉之助は、人が変わったように学問に打ち込みました。この正助こそ、後の大久保利通でした。
 島津家のお家騒動から島流し、薩長同盟、江戸城無血開城、戊辰戦争、そして西南戦争で果てるまで。新しい日本をつくるために奔走し続けたなかで、人には常に誠実であった西郷隆盛の人間味あふれる物語です。

『咸臨丸にかけた夢 幕末の数学者・小野友五郎の挑戦

  • 鳴海風=作
  • 関屋敏隆=画
  • くもん出版=刊
  • 定価=1,500円+税
  • 対象:小学校高学年向け

歴史の転換期に 航海技術で貢献した 和算の数学者がいた

 「算術を学べ」。友五郎が兄に言われて算術塾に入ったのは15歳のとき。常陸の国、笠間藩に仕える武家の四男に生まれた友五郎は、他家に養子に行くために学問を身につける必要があったのです。最初は気が進まなかったものの、塾に入ると、友五郎は算術の魅力にとりつかれていきました。
 咸臨丸は、日本人の操縦で初めて太平洋を横断した江戸幕府の軍艦です。その航海長だったのが小野友五郎です。航海は苦難の連続で、嵐のなか、命懸けでサンフランシスコをめざす船内の場面は迫力満点です。鎖国から開国へ。歴史が大きく動いた時期、日本独自の数学、「和算」を学び、技術者として近代化に貢献した数学者の生涯を描きます。

『名門校の「人生を学ぶ」授業』

  • おおたとしまさ=著
  • SBクリエイティブ=刊
  • 定価=800円+税
  • 対象:保護者向け

これって何のため? ユニークな授業には、 後々わかる意味がある

 「うさぎおいしかの山」で始まる唱歌「故郷」。歌詞は3番までですが、麻布高校の「教養総合」には、その4番の歌詞を作るというユニークな授業があります。今の高校生の考え方、社会の価値観、唱歌の特徴などを踏まえた総合学習です。
 鉱物を顕微鏡で観察するために、自分で岩石を砕くところから始める武蔵中の地学。検定方式でハイレベルな縄跳びの技を身につける桐朋中の体育。体だけを使って即興劇を演じる海城中のドラマエデュケーションなど。16校のユニークな授業を紹介します。各校に共通するのは、中高生のうちにはその時期にしかできないことをすべきだというスタンス。本来あるべき教育の姿が見えてきます。

『世界あちこち ゆかいな家めぐり』

  • 小松義夫=文・写真
  • 西山晶=絵
  • 福音館書店=刊
  • 定価=1,300円+税

穴の家、泥の家、砂漠の家 家が語る暮らしの違いが 異文化理解のきっかけに


千葉校 校舎責任者
上野 哲 先生

 写真家の著者が、子ども向けに自分で撮影した世界のおもしろい家を紹介しています。モンゴル、中国、インドネシア、チュニジアなど、取り上げられているのは10地域の家。たとえばチュニジアのマトマタ地方では、地面に巨大な穴を掘って暮らしています。穴の底が中庭で、その周囲に掘られた穴が部屋になっています。夏は50度近く、冬は0度以下になる地域ですが、地面の下は一年中20度から28度くらいに保たれているそうです。すごいと思いませんか。家族が増えれば穴を掘って新しい部屋をつくればいいなんて、日本の住宅事情では考えられないことです。
 家の外観は写真で紹介し、内部はイラストで細かく描かれているので、そこに暮らす人たちの生活や風習がよくわかります。たとえば、アフリカのトーゴにある、泥でできた家には、家の前に狩りの道具を持つお父さんがいて、屋上に豆やトウガラシを干す子ども、その下の部屋に昼寝をするおばあさん、1階の部屋にトウモロコシの粉をこねているお母さん、そしてニワトリやヤギもいます。皆さんは自分と家畜が同じ屋根の下で暮らしたり、牛や馬のフンを家の壁や燃料に使ったりする生活は想像できないかもしれませんが、それが実際にどういうことなのか、この本を見るとよくわかると思います。トーゴの家には、壁に魔よけの骨が架けられています。のろいやたたりを信じる風習は昔の日本でもあったので、家族とそういう話をしながら一緒にページをめくってもいいと思います。
 それぞれの国には独自の文化があり、その文化のなかで生活をしています。日本も同じです。独自の文化のなかから独自の考え方も生まれてきます。世界には、自国の利益だけを考えて他国と対立している国もありますが、お互いに相手の文化、生活、考え方を理解し合うことはとても大切なことです。著者はほかにも世界の家の写真集を出しているので、興味が湧いたら見てください。

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