受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2018年3月のBooks

 本を読んでいると、別の本の名前が出てくることがあります。著者が影響を受けた本や参考図書、物語なら主人公の愛読書として登場することも。今月紹介する『ぼくたち負け組クラブ』は本好きの少年の物語。さまざまな児童書が登場し、それについて主人公や仲間たちが目を輝かせて話すので、どれも読みたくなります。登場人物たちが読んでいた43冊の本が、巻末のブックリストに紹介されています。この物語もお薦めですが、読み終えたら彼らのお薦め本も読んでみませんか。

地球の危機をさけぶ生きものたち① 海が泣いている』

  • 藤原幸一=写真・文
  • 少年写真新聞社=刊
  • 定価=2,500円+税

  • 対象:小学校中学年・小学校高学年向け

温暖化、プラスチックのごみ オーバーフィッシング… 海の命が訴える環境破壊の実態

注目の一冊

 「混獲」ということばを聞いたことがありますか。混獲とは、漁船が使う巨大な網に、海鳥やオットセイなどの野生動物たちが掛かってしまうこと。混獲の犠牲になる動物の総重量は全世界で1年当たり730万トンといわれます。その大きな原因はオーバーフィッシング、つまり魚の捕り過ぎです。今、世界では、海の資源が回復しないうちにまた漁業が行われ、マグロやカジキなどは絶滅が心配されています。
 命を脅かしているのは、漁船の網だけではありません。世界では毎年、800万トンものプラスチックのごみが海に捨てられているという発表があります。これを餌と間違えて、クジラ、ウミガメ、海鳥、魚などが食べています。プラスチックのごみには、ダイオキシンや有機水銀などの有害な物質が付着していることがあります。それを食べている魚を人間は食べています。「みんなが思っているよりずっと深刻な問題が海で起きている」と著者は言います。
 地球における海流の役割、海の生き物たちの暮らし、人と海のかかわりの話から始まり、魚を捕り過ぎる無秩序な漁業、海を覆う大量のプラスチックのごみ、地球温暖化により絶滅の危機にある生き物たち、食の安全の話まで。海の環境破壊の実態を、生物ジャーナリストの著者がみずから撮影した写真とともに伝えます。プラスチックのキャップを背中に乗せたまま動くヤドカリ、油まみれのペリカン、浜に打ち上げられたクジラ。崩れつつある生態系のなかで戸惑う生き物たちの姿が、問題の深刻さを訴えます。
 なお、第2弾として同じ著者による『森が泣いている』もすでに刊行されています。

わくわく発見! 世界のお祭り』

  • 竹永絵里=画
  • 河出書房新社=刊
  • 定価=1,800円+税
  • 対象:小学校低学年・小学校中学年向け

びっくりするお祭り ちょっと変わったお祭り 46か国のお祭り大集合!

 南アメリカ大陸のコロンビアでは、1月5日は「黒の日」。この日は町で出会った人の顔を墨で黒く塗ります。翌6日の「白の日」には、白い粉をかけます。昔、肌の色の違いで休日が分かれていたとき、互いに肌を塗ってどちらの休日も楽しんだという習慣から生まれたお祭りです。ユニークなお祭りも由来を知れば納得です。
 男性がお化粧をするニジェールのお祭り、トマトを投げ合うスペインのお祭り、針を体に刺して歩くシンガポールのお祭りなど、世界46か国のお祭りをイラストで楽しく紹介。お祭りには国や民族の歴史や文化がよく表れています。お祭りを知ると、そこで暮らす人々が大切にしているものがわかります。

『髪がつなぐ物語』

  • 別司芳子=著
  • 文研出版=刊
  • 定価=1,300円+税
  • 対象:小学校中学年・小学校高学年向け

髪の長い少年は言った 「ぼくも誰かの サンタになる!」

 小学5年生の仁くんは長い髪がトレードマーク。人からじろじろ見られても、「女の子みたい」と言われても、髪を切ろうとしません。なぜなら髪を伸ばして、病気やその治療で髪を失った人にプレゼントしたいからです。仁くんは2年生のときからすでに2回、「ヘアドネーション」をしています。
 髪の毛でウィッグ(かつら)を作って、髪を失った人に寄付する「ヘアドネーション」を、NPOの活動を中心に紹介します。この活動は献血などと違い、子どもでも男女を問わず参加できます。髪を寄付する子どもたちの活動とともに、ウィッグを受け取る子どもたちの思いもていねいにすくい上げ、人と人とが髪によってつながっていく姿を伝えます。

『ぼくたち負け組クラブ』

  • アンドリュー・クレメンツ=著
  • 田中奈津子=訳
  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

静かに本を読むための 読書クラブなのに、 次々と事件が発生!

 アレックは本を読むのが大好き。誰にも邪魔されずに本を読んでいたいだけなので、立ち上げた読書クラブを「負け組クラブ」と名付けます。こうすれば部員はあまり集まらず、うるさくなるのを避けられるからです。
 でもこの名前のせいでからかわれたり、部員のニーナとスポーツ万能のケントの仲が気になったりで、静かに本を読めなくなるアレックなのでした。
 知っている本の名前を聞くと、誰しもぱっと顔が輝くもの。本が人と人とをつなぐ心温まるシーンがたくさんあります。クラブ活動を通じて、心に変化が生まれていくアレックが、今まで感動したどんな本より、最高の時間が現実にあることを知るすてきなお話です。

『街角には物語が…』

  • 高楼方子=作
  • 出久根育=絵
  • 偕成社=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

石畳の古い街が 彩り豊かに紡ぎ出す 八つの物語

 子守りのアルバイトをしているピッパは、子どものお昼寝の時間に、窓から街の通りを眺めるのが好きです。石畳の通りには古い建物が並び、道行く人を観察していると想像が膨らみます。あの人、横丁を通れば近道なのに、なんで通らなかったのかしら。きっと横丁を通りたくない事情があるのね。そうよ、横丁には昔、あこがれの人が住んでいて、その青年は本屋の店員で…などと果てしなく想像は続くのでした。
 石畳がある古い街には「ツグミ小路」があり、レストランの「緑のオウム亭」があり、占いの「アウルおばさんの館」もあります。そんな街角で生まれた、不思議な雰囲気が漂う八つの物語を集めた短編集です。

『13歳からの「学問のすすめ」』

  • 福澤諭吉=著
  • 齋藤孝=訳・解説
  • 筑摩書房=刊
  • 定価=840円+税
  • 対象:小学校高学年向け

今こそ読むべき 日本最強の教育書を 若い読者向けに解説

 福澤諭吉が著した『学問のすすめ』は文字どおり、学ぶことの大切さを語った本です。なぜ学ばなければならないかというと、一人ひとりが独立し、みずから学ぶ人間になれば、外国の圧力に屈しない、本当の意味での独立した国をつくることができるからです。この主張は今の時代にもほぼそのまま当てはまる、と解説者は言います。
 明治初期から読み継がれている日本最強の教育書『学問のすすめ』の全17編を、編ごとに分けて解説しています。内容は学問の目的、人間の権利、国をリードする人材、判断力の鍛え方、人づき合いなど。若い読者に、民主主義を支える立派な主権者になってほしいとの願いを込め、わかりやすく解き明かします。

『バッタを倒しにアフリカへ』

  • 前野ウルド浩太郎=著
  • 光文社=刊
  • 定価=920円+税

夢を語ることを 恥ずかしがるな 語ることで道は開ける!


大井町校 校舎責任者
正木 敦 先生

 バッタ研究者である著者が、バッタの大発生による農業被害を食い止めるため、アフリカに行ったときの体験をつづっています。
 著者はバッタ研究で博士号を取りましたが、その程度では、研究者として大学に残ることができないため、バッタの論文を書いて研究者への道を開こうと、アフリカ北西部のモーリタニアでバッタのフィールドワークをすることになります。ところがモーリタニアに行ったものの、バッタがなかなか大発生せず、貯金も底をついてきたため著者は焦ります。同期の研究者は論文を発表して就職しているのに、自分は何もしていない。アフリカに残るか、それとも日本に戻り別の昆虫を研究するか、夢と生活を天秤にかけて悩みます。
 そんなとき、現地の研究所の所長が励まします。つらいときこそ自分より恵まれていない人に目を向け、自分がいかに恵まれているかに感謝するのだ、おまえは必ず成功する、と。「夢を語ることは恥ずかしいけれど、夢を周りに打ち明けると、思わぬかたちで流れがいい方向に向かっていく。夢をかなえる最大の秘訣は夢を語ることだ」と著者。実際に行動して夢を実現させてきた人のことばだけに深く心に響きます。
 最近、あるアンケート調査で、小学生の男の子が将来就きたい職業の1位が「学者」だったという発表がありました。でも、学者ってそんなに甘くない、研究だけで食べていくのは大変なことなのだということが、この本を読むとよくわかります。一方で好きな研究を続けて生きていくことの喜びが伝わってきて、自分も夢をあきらめずにがんばってみようという気持ちが生まれてくると思います。
 ふだん聞くことができない話が詰まっていて、世界が広がるきっかけになる本です。モーリタニアでのおもしろいエピソードが満載されており、虫嫌いの人でも、珍しいアフリカの国の旅行記のようなつもりで楽しく読むことができると思います。

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