受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2018年3月のBooks

 今年、小学校を卒業した人にとって、この春休みはもう小学生ではないようでもあり、そうかといってまだ中学生になった気もしない中途半端な時期。JRの運賃などは3月31日までが子ども扱いで、4月1日からは大人扱いになりますが、「昨日までは子ども、今日からは大人」だなんて不思議な気分がするかもしれません。今月紹介する『よりみち3人修学旅行』は、そんな中途半端な春休みに少年たちが旅をする物語です。人々との出会いのなかで、「ちょっぴり大人」の子どもたちの良さがたくさん出てきます。春休みの読書にいかがですか。

『よりみち3人修学旅行』

  • 市川朔久子=作
  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

春休みに挑戦した 寄せ書き集めの旅は、 はらはら、どきどきの連続!

注目の一冊

 天馬は父の転勤で、6年生の夏に転校しました。それから半年がたち、卒業式を終えた天馬は、親友の柊の頼みで、春休みにクラスメートの風知の旅行につき合うことになります。親が離婚した風知には、遠方に離れて暮らす父親がいます。その父親に会いに行くので、「2人についてきてほしい」と風知は言うのです。天馬は風知のことをよく知りませんでしたが、「3人で修学旅行のリベンジをしようよ」ということばに、心が動きます。実は天馬だけでなく、柊も風知も、それぞれの事情で修学旅行には行っていませんでした。
 とはいえ風知には、「息子の成長ぶりを見たい」という父親と交わした約束がありました。それは目的地に着くまでの間に、見知らぬ人たち10人分の寄せ書きと写真を集めるというものでした。難しいミッションを何とか達成しようとがんばる3人ですが、地元の子どもたちとけんかになったり、怪しい人に連れ去られそうになったり、テレビのロケに参加したり。笑いあり、涙あり、どきどきありの波乱万丈な旅になります。
 間違ったことには真っすぐ立ち向かおうとする天馬。父の望む強い人間になろうとする風知。悩みを抱えつつも冷静な判断力で2人を支える柊。理不尽なことが多い世の中を、窮屈な思いを抱えて生きるなかで、自分らしくあろうとする3人の姿をさわやかに描きます。旅の途中で出会った10人の寄せ書きのひと言ひと言がほろっとします。その作品が中学入試にもよく出題される、注目作家の最新作です。

『あいうえどうぶつえん』

  • 小林純一=詩
  • 和田誠=画
  • 童心社=刊
  • 定価=1,200円+税
  • 対象:幼児向け

自分でもつくってみよう 動物たちが主役の 50音を使ったことば遊び

「はとが そらから
 ひつじの うちへ、
 ふうとう はいたつ
 へんじは こない、
 ほらね むしゃむしゃ、
     はひふへほ」

 「あいうえお」から「わいうえお」まで、動物たちがユーモアたっぷりのイラストとともに、ことば遊びを演じてくれます。

「まんとひひ まんとに
 みしんを かける、
 むしくいだらけで
 めんどうだけど、
 ○○○○〇〇から、
    まみむめも」

 ま行はマントヒヒが登場です。あなたなら〇のところに、「も」で始まるどんなことばを入れますか。動物以外にも何かテーマを決めて、自分たちで考えて詩を作ってみると楽しいでしょう。

『まほうの絵本屋さん』

  • 小手鞠るい=作
  • 高橋克也=絵
  • 出版ワークス=刊
  • 定価=1,600円+税

  • 対象:幼児・小学校低学年向け

黒ネコの店員さんが 選んでくれた 願いが詰まった一冊とは?

 すみれが来たのは、仲良しの友だちとよく遊びに来た公園。どうしているかな? 外国に行ってしまった友だちを思い出して、ちょっと寂しくなりました。そこへフクロウがやってきて、公園の奥にある森に案内してくれました。そこには一軒の絵本屋さんがありました。「いらっしゃいませ」。声を掛けてきたのは、黒ネコの店員さんでした。
 最後の場面を見たときに、想像が一気に膨らみ、豊かな気持ちに包まれます。黒ネコの店員さんは、すみれが友だちにプレゼントするのにぴったりな絵本を選んでくれます。それはすみれの願いが詰まった一冊になります。さて黒ネコさんは、どんな絵本を選んでくれたのでしょう。

『「あかつき」一番星のなぞにせまれ!』

  • 山下美樹=文
  • 中村正人、佐藤毅彦=監修
  • 文溪堂=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け

多くの困難を乗り越え 金星を回る軌道に入った チームの活躍を描く

 ぼくは「あかつき」。2010年5月21日、ぼくを乗せたロケットが種子島宇宙センターから打ち上げられた。ところが、いよいよ金星を回るコースに入るという12月7日、コース変更でエンジンの噴射を開始したぼくは突然、突き飛ばされたような大きな衝撃を受けた。どうしちゃったんだろう。何が起きたのかわからないまま「あかつき」は予定のコースを外れていきました…。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」。打ち上げから最初の軌道投入失敗、軌道投入再挑戦の成功までを、物語形式でわかりやすくたどります。観測システムの説明図や「あかつき」が撮った貴重な映像が数多く掲載され、興味を駆り立てます。

ハルがやってきた』

  • まはら三桃=作
  • 田中寛崇=絵
  • 偕成社=刊
  • 定価=900円+税
  • 対象:小学校高学年向け

サーカスとともにやってきた ちょっと変わった転校生 ハルがかける魔法は本物?

 美央のクラスにやってきた転校生は、話し方も変なら、やることも謎だらけ。「おれの名前はスズキハルなのである。よろしくどーん!」と言って、両手からいきなり青いテープを出したので教室は大騒ぎ。ハルは、苦手な算数のことで悩む美央に言うのでした。「こんなテストなんか、魔法でぱっぱっぱっである」。
 「マジックを超えた魔法をあなたに」をうたい文句にするドリーム・サーカス。その巡業に同行するため各地を転々とするハルの、5か所の土地での出会いと別れを描きます。友だちの願いをかなえるために魔法をかけるハル。それは「マジックを超えた心の魔法」でした。型破りな転校生、ハルの格好良さが光ります。

『雑草はなぜそこに生えているのか』

  • 稲垣栄洋=著
  • 筑摩書房=刊
  • 定価=840円+税
  • 対象:小学校高学年向け

踏まれても立ち上がらない!? 柔軟でたくましい 雑草の生き方を紹介

 抜いても抜いても生えてくる、踏まれても踏まれても立ち上がる。雑草にはそんなイメージがありますが、実は、雑草は弱い植物です。雑草は、光や水や栄養分を奪い合う森の中での生存競争に勝てないので、道端や公園など、人がつくり出した環境で生きているのです。
 雑草の発芽、繁殖、変異など、森では生きられない雑草の柔軟で合理的な生き方を紹介します。雑草ではない植物との比較で説明されるので、植物全般の生態もよくわかります。著者は中学入試でも文章が取り上げられることの多い植物学者。最後の章では、雑草的生き方から人の生き方にまで話が及び、読者に向けたエールも送られています。

『ウニはすごい バッタもすごい デザインの生物学

  • 本川達雄=著
  • 中央公論新社=刊
  • 定価=840円+税

じっとしているだけの変な生き物 「たいしたことない」と あなどっていませんか?


用賀校 校舎責任者

 副題は「デザインの生物学」。動物のからだの形が、いかに効率良く餌を食べるか、いかにうまく身を守るかなど、合理性を考えてつくられたものであることを教えてくれます。取り上げられているのは、ヒトデやナマコなどの棘皮動物、昆虫やエビ・カニなどの節足動物、貝の仲間の軟体動物など、五つのグループの生きものたちです。
 たとえばナマコやヒトデは、ほとんど動かずに、ただぼーっとしているだけのように見えます。でもそうではありません。彼らのからだは、人間が頭で考えるよりすばらしいと思えるほど、合理化されたデザインなのです。昆虫の足や羽のつくり、貝類のらせん形の殻も同じです。皆さんは、動かない生きものや動きが遅い生き物は「たいしたことがない」とあなどっているかもしれません。でもそんな「たいしたことがない」生き物たちが、実は優れた能力の持ち主だったという驚き、それがこの本のおもしろさです。文章の端々から、著者が「こいつはすごいんだぞ、どうだ驚いたろう」と、読者を驚かせ、楽しませようという気持ちで書いていることがわかり、読めば読むほど生き物の進化の魅力が伝わってきます。
 たくさんの生き物が登場しますが、人間のような脊椎動物の話は最後に少し出てくるだけで、ほとんどが無脊椎動物の話です。人間は脊椎動物のほうが優れていると思いがちですが、自分たちとは違う無脊椎動物の世界にも広く目を向けて、生き物のすばらしさを知ってほしいと思います。地球上には多様な生き物がいて、それぞれがすばらしい能力を持っています。この本をきっかけに生き物の世界に興味を持ち、自分でも調べてみようと思ってもらえたらうれしいです。文章量が多いのですが、説明はたとえ話が多くてわかりやすいので、5・6年生ぐらいであれば読めると思います。おもしろいと感じたら、同じ著者の『ゾウの時間 ネズミの時間』(中央公論新社)もお薦めです。

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