受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

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2018年6月のBooks

 経験もないのに、いきなり俳句を作るように言われたらどうしますか。あせりますね。「あせってる どうしようもなく あせってる」。真ん中の字余りを直すと「あせってる どうにもならぬ あせってる」。昔のことばにすると「あせりをり どうにもならぬ あせりをり」。雰囲気が変わりますね。季語を入れると「あせっても どうにもならない 春うらら」。句がぐんと膨らみました。以上、今月紹介する『わたしの空と五・七・五』から。興味が湧いたら読んでみませんか。

『わたしの空と五・七・五』

  • 森埜こみち=作
  • 山田和明=絵
  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税
  • 対象:小学校高学年向け

初めて知った俳句の世界 17文字に思いを込めて 希望よ、届け、あの人に

注目の一冊

 中学生になったばかりの空良。クラスでは友だちづくりが着々と進むなか、おしゃべりが苦手な空良は、人の輪に入っていく自信が持てません。ある日、チラシの文句に誘われて文芸部の見学に行った空良。たまたま開催が決まった新入生歓迎句会に参加することになってしまいます。俳句など作ったことのない空良は戸惑うばかりでした…。
 俳句を題材とした青春小説、といってしまえば簡単ですが、物語のおもしろさと、俳句の奥深さが見事に溶け合った、すがすがしい読後感のある作品です。特に圧巻なのは句会のシーン。部員が作った俳句を発表し、それぞれが講評し合っていくもので、どの句も中学生の息苦しいような複雑な思い、だからこそ求める優しさが表れていて見事です。俳句を見ただけではわからなくても、部長と副部長のわかりやすい講評で、「そうか、この句はそういう意味だったのか」と納得します。
 傷つくことを恐れて、他人とあまりかかわろうとしなかった空良が、俳句作りを通して少しずつ心を開いていく様子を描きます。人は嫉妬や劣等感など、うじうじした本音を隠して生きています。でも「こういうどうしようもないうじ虫をしっかり握って離さないこと。美しい物語って美しい成分からできているんじゃないから。美しい物語はうじ虫からできているのよ!」。そう言い放つ副部長にほれぼれします。未経験者の空良が部長や副部長に俳句作りを教えてもらう場面も多く、読めば自分でも俳句を作ってみたくなるのではないでしょうか。

『さやかちゃん』

  • くすのきしげのり=作
  • こばようこ=絵
  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

わざとじゃないのに 友だちを傷つけてしまった あなたならどうする?

 「わかばしょうがっこうはどこですか」。女の子に突然聞かれて、しゅうとはどきんとしました。目の前の女の子が、お日さまのような笑顔をしていたからです。女の子の名前はさやかちゃんといい、しゅうとのクラスに転校生としてやってきました。さやかちゃんは徳島県に住んでいたので、話し方が少し違っていました。そのことをクラスの男子から言われ、泣き出してしまうさやかちゃん。その泣き顔が、しゅうとの頭を離れませんでした。
 仲良くなりたいのに、思わぬ形で相手の気持ちを傷つけてしまう。誰にでもあるそんな出来事を描きながら、人を好きになったときの揺れ動く気持ちを、温かな目線で描きます。

『さいごの海賊かいぞく妖怪牛鬼ようかいうしおに

  • 野田道子=作
  • 藤田ひおこ=絵
  • 文研出版=刊
  • 定価=1,200円+税
  • 対象:小学校中学年向け

現代から戦国時代へ 村上水軍のおひざ元で 妖怪相手の大冒険

 瀬戸内海にある因島に住む少年、海斗。ある日、お父さんが、極楽島に住む村上直吉さんという人を連れてきます。村上さんには吉茂という息子がいて、なんと牛鬼という妖怪のせいで白いオウムに姿を変えられたとか。「なんのこっちゃ? この人、とんでもないうそこきちゃうか?」。そう思う海斗でしたが、ひょんなことから極楽島に帰る直吉さんに同行することになってしまいます。
 戦国時代の海賊の話と西日本に伝わる妖怪の物語が錯綜しながら、白いオウムに姿を変えられた少年、シゲと海斗の冒険物語が展開していきます。堂々と牛鬼と渡り合って、海斗や家族を守ろうとするシゲの勇ましさが光ります。

『夢とき師ファナ 黄泉よみの国の腕輪うでわ

  • 小森香折=作
  • 問七・うぐいす祥子=絵
  • 偕成社=刊
  • 定価=900円+税
  • 対象:小学校高学年向け

陰謀うずまく王宮 怪しい黄泉の国 少女は生きて帰れるのか

 メッシナ王国。ここでは夢は神のお告げにも等しいもの。夢の意味は夢とき師にしかわかりません。少女、ファナの夢は夢とき師になることです。でも夢とき師になるには、聖地ラルーサで修行する必要があります。ある日、ファナは知り合いのアマンさんから、金色の腕輪をラルーサにいるある人に渡してほしいと頼まれます。その夜、アマンさんの家が火事になり、赤い甲冑の騎士たちが腕輪を探していることを知ります。
 身に着ければ死者の国へ行くことができ、死んでしまった者をよみがえらせる力を持つ。そんな金の腕輪をめぐって、国を揺るがす陰謀の渦に巻き込まれていく少女の活躍を描くファンタジーです。

『ロボットが家にやってきたら…人間とAIの未来

  • 遠藤薫=著
  • 岩波書店=刊
  • 定価=800円+税
  • 対象:小学校高学年向け

ロボットや人工知能と うまく共生するには どうしたらいいのだろう

 おそうじロボット、ドローン、自動運転車など、生活のなかにさまざまな形で入り込みつつあるロボットや人工知能(AI)。ロボット実用化への期待度は高く、著者が行った意識調査によると、特に「危険な作業を行う」ロボットや「産業を高度化する」ロボット、「介護・看護」や「医療」をサポートするロボットへの期待が高いという結果が出ています。
 ロボットやAIの普及によってわたしたちの生活はどのように変わるのでしょうか。ロボットが暴走して人間の敵になることはないのでしょうか。ロボット開発の歩みと社会的背景、日本と外国の文化的背景による違いなどの話題を盛り込みながら、ロボットと人間が共生する明日の社会を考えます。

『世界一美しい人体の教科書』

  • 坂井建雄=著
  • 筑摩書房=刊
  • 定価=1,000円+税
  • 対象:小学校高学年向け・一般向け

これが自分の体の中!? 超ミクロカラー写真が 見せる驚異のメカニズム

 細胞数約37兆個。血管全長約105km。神経の情報伝達スピード最大秒速120m。驚くべき人体の精緻なメカニズムを器官ごとにわかりやすく解説します。最大の特徴は、豊かな質感を持つ多数の超ミクロカラー写真です。
 たとえば何層もの膜から成ることが見て取れる動脈の横断面、歯のエナメル質と象牙質の断面、止血のために突起を伸ばし始めた血小板、体液をろ過することがわかる細かな穴が空いた腎臓の毛細血管の断面、その名の通りカタツムリの形をしている内耳の蝸牛…。消化器、呼吸器、循環器・血管、脳・神経など全8章すべてに興味深い写真が掲載され、体内のミクロの世界を見せてくれます。

『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』

  • 高橋源一郎=著
  • 集英社=刊
  • 定価=860円+税

「国とは何だろう」 「憲法とは何だろう」 「そもそも」の話をしよう


南浦和校 校舎責任者
梅田 伸宏 先生

 普通の小学校とはかなり違う、自由な学校に通う主人公と仲間たちが、自分たちの「くに」を造り始めるお話です。6年生の社会科の授業ではちょうど今、公民分野で日本国憲法を扱っています。民主主義、国民主権、立憲主義など難しいことばが多く出てくるので、できるだけわかりやすく生徒たちに伝えられるように工夫しています。ただ「そもそも国とは何なのか」といった本質的なことまでは、授業では考えてもらう余裕がありません。この本ではそうした「国」にかかわる本質的なテーマを、物語を通して子どもたちが身近な問題として考えられるようにしています。
 憲法の話題も扱われています。最近は世の中に合わせて憲法改正が中学入試の題材として多く見られるようになりました。高校3年生のときに、憲法改正の国民投票があったとしたら、誕生日が早く来る人は、実際に投票することになるかもしれません。そうしたことも踏まえ、中学校の社会科の先生方は、生徒がやがて有権者の一人になることを意識して授業を行い、入試問題にも取り上げているのだと思います。この本では憲法とは何か、国とは何か、国旗とはどういうものか、あるいは天皇制や自衛隊、領土問題などの話題が、子どもの語りや子ども同士の会話のなかでさりげなく出てきます。知識を覚える本ではないので、社会科は苦手だけど読書は好きという人などにとって、社会科に興味を持ってもらうきっかけにもなると思います。
 最近の中学入試問題では、たとえば「あなたが内閣総理大臣だったらどうしますか」「原発に賛成か反対か、どちらか選んで、その理由を述べなさい」といった、自分の考えを書かせるような踏み込んだ判断を求める問題が増えています。そうした傾向に対するフォローにもなる本です。大人でも「憲法って何?」「立憲主義って何?」と聞かれるとすぐには答えられないものです。保護者の方にも読んでいただければ、そういう難しい内容を子どもたちはがんばって取り組んでいることがおわかりいただけるのではないかと思います。

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