受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2018年11月のBooks

 博物館や科学館ではよく子ども向けのイベントが開かれます。今月紹介する『スペース合宿へようこそ』は、宇宙科学館でのイベントに参加した小学生の物語です。天文台で土星を観測したり、パソコンのシミュレーションでオリジナル惑星を作ったり、宇宙科学館での合宿はとても楽しそう。「何もないと思ってもじっくり観察すれば発見があるかもしれない」。指導する先生のことばも心に残ります。おまけに宇宙旅行の特典付きです。あなたも主人公と一緒に参加してみませんか。

『流星と稲妻』

  • 落合由佳=作
  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

後ろでも隣でもない 君の向かい側に 堂々と立てる自分になりたい

注目の一冊

 阿久津善太は剣道を始めて6年目。小学6年生なのに、よく中学生と間違われる熊のような巨体の持ち主です。一方、転校生の蓮見宝も剣道経験者。ただし善太とは対照的に小柄で、気弱でいつもおどおどしているところも善太とは正反対です。
 ある日、2人は特別授業の時間に、みんなの前で剣道の模範試合をすることになります。見るからにひ弱そうな宝を前に、自信満々の善太は得意の「面」で攻めます。ところが一瞬の隙をついて、宝に鮮やかな「抜き胴」を決められてしまいます。ちびで気弱な宝にみんなの前でやられた、こんなのカッコ悪すぎる…。悔しさと敵対心でいっぱいになる善太。ところが宝は意外にも、善太のことを「強い、稲妻みたい」と言うのでした。
 体格も性格も、剣道の戦い方も違う2人が、同じ道場で練習に励むうちに、かけがえのないライバルとなっていく姿を描きます。クラスメートのいじめ、過度な期待で息子を追いつめる父など、悩みを抱える宝は、言いたいことが言えない臆病な性格。そんな宝にいら立ちながら、強がりばかりを言ってしまう善太。お互いに相手から認められたいという思いがあるのに、気持ちが空回りしていきます。
 剣道の対戦の場面は、2人の思いがびりびりぶつかり合って引き込まれます。本当の怖さを知らず、自分が打つことばかりに夢中だった善太。自分の思いをぶつけることも、本気になることもなかった宝。それぞれが自分の殻を破って、新しい一歩を踏み出すラストの場面がさわやかです。

『ライフタイム いきものたちの一生と数字

  • ローラ・M・シェーファー=文

  • クリストファー・サイラス・ニール=絵

  • 福岡伸一=訳
  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

一生の間に何をどれくらいする? 数字が語る生き物の不思議

 一生の間に、キツツキが木に空ける穴の数は30個、アゲハチョウが蜜を吸う花の数は900本、タツノオトシゴがおなかで育てる子どもの数は1000匹。生き物の一生を数字で見ると、その小さなからだからは想像がつかない大きな数字が出てきて、驚かされます。そうかと思えば、一生の間に卵を包む薄い袋を一つだけ作るクモもいます。触って壊したら大変です。
 一生の間に生き物たちは「何をどれくらい」するのか。生き物の命にまつわる数字を集めた絵本です。登場する生き物の生態についての解説もあります。数字で見る生き物の世界は驚きがいっぱい。さて一生の間に人間は、何をどのくらいするのでしょうか。

『おれからもうひとりのぼくへ』

  • 相川郁恵=作
  • 佐藤真紀子=絵

  • 岩崎書店=刊
  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け

見た目は同じなのに いつもと何かが違う 母ちゃんも親友も本物?

 学校から帰り、公園に行こうと自転車で家を出た智。突然、目の前に一台の自転車が現れました。「ぶつかる!」と思った次の瞬間、智はその場に立っていました。相手の自転車もどこにも見当たりません。不思議に思いながら公園に行くと、約束したはずなのに親友の翔平とまさとが来ません。翔平の家に行ってみると、まさともいましたが、2人の態度はどこかぎこちなく、いつもの2人とは微妙に何かが違うのでした。
 家族も友だちも、家も学校も、見た目はいつもと変わらない。でも何かが違う。そんな世界に迷い込んでしまった主人公が、不思議な体験をするなかで、自分と周りの人たちを見つめ直していきます。

『スペース合宿へようこそ』

  • 山田亜友美=作
  • 末崎茂樹=絵

  • 文研出版=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

自分たちが考えた オリジナル惑星で 命を懸けた大冒険!?

 宇宙が大好きな美織は、夏休みに宇宙科学館での「スペース合宿」に行けることになって大喜び。1週間、宇宙科学館に泊まりながら自由研究ができるのです。美織と同じグループになったのは初対面の由衣、幼なじみの岳、そしてアシスタントの黒星先生。黒星先生は自分を「ブラックホールからやってきた宇宙人」と語る変な先生でした。
 ひょんなことから、自分たちが考えたオリジナル惑星上で大冒険をすることになってしまった4人の物語です。夜空に浮かぶ三つの衛星、ぐるぐる渦巻く海、竜のようなオーロラ…。宇宙での冒険を通して、一つの星の上で自分たちが生きている奇跡を感じる美織が、夢に向けて新たな一歩を踏み出します。

『ぼくのわがまま宣言!』

  • 今井恭子=作
  • PHP研究所=刊

  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

大人の都合で ぼくだけ田舎暮らし!? そんなの、ないよ!

 5年生から新しい小学校に通うことになった翔。パパが海外勤務になり、ママも仕事で忙しくなるため、田舎のおばあちゃんの家に預けられることになったからです。泣いて抵抗した翔ですが、犬を飼ってもいいという交換条件で渋々承諾したのでした。ところが田舎に行ってみると、おばあちゃんは「犬は駄目」と言うのです。犬さえいれば我慢できる気がしたのに…。
 大人の都合が優先で、いつも自分だけが犠牲になって損をする。そう思っていた翔が田舎で暮らすうちに、周囲の人の気持ちを考えられるようになっていきます。5年生の春から秋にかけて、主人公を大きく成長させたかけがえのない日々を、明るいタッチで描きます。

『10代に語る平成史』

  • 後藤謙次=著
  • 岩波書店=刊

  • 定価=900円+税

  • 対象:小学校高学年向け

激動の30年間を 現場を知る記者の目で リアルに振り返る

 1989年1月8日から始まり、間もなく終わりを迎える平成の時代。「平成」という元号はもともと「内平らかにして外成る。地平らかにして天成る」という中国の古典をもとに決められたもの。平穏な時代であってほしいという願いが込められていました。現実の平成は激動の時代でした。
 消費税導入、バブル経済の崩壊、テロとの戦い、問題が山積みの日中・日韓・日朝関係、頻発する自然災害など。政治ジャーナリストとして活躍してきた著者が、平成の歴史をわかりやすく解説します。現場を見てきた記者が語るリアルな史実が、未解決のまま新しい時代に持ち越されることになったさまざまな問題を、浮き彫りにします。

『われはロボット』

  • アイザック・アシモフ=作

  • 小尾芙佐=訳
  • 早川書房=刊

  • 定価=840円+税

国語好きも理科好きも 想像力も論理性も 満足できるSFの魅力


住吉校 校舎責任者
岡田 政幸 先生

 「ロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない」。これは本書の作者、アイザック・アシモフが考えた「ロボット工学の三原則」の中の第一条です。実は以前、5年生のある生徒から「先生、ロボット工学の三原則って知ってる?」と聞かれたことがあります。その生徒はアシモフの作品やほかのSFも数多く読んでいて、わたしもSFが好きなのでそこから話が膨らみました。
 現代のSFは難しいものが多いですが、1940~60年代のSFは牧歌的でわかりやすいものが多く、なかでもロボットを題材とした作品が多いアシモフの作品は読みやすいと思います。本書もロボットが登場する九つの話で構成されていて、「ロボット三原則」が重要なテーマとして出てきます。この三原則が作品に登場したのは1940年代の初めですが、AI(人工知能)が注目されている今、現実性がある重要なテーマといえます。
 国語や社会が好きな子も、理科や算数が好きな子も、どちらも楽しめるのがSFだとわたしは思います。国語好きの人は科学の読みものを読まない、理科好きの人は小説を読まない、そんな人もいるかもしれません。でもこの作品を読むと、理科好きの人なら「こんなふうに論理的整合性を持って書かれた小説があるのだ」とわかり、国語好きの人なら「こんなふうに想像力豊かでおもしろく書かれた科学の読み物があるのだ」とわかると思います。
 SFは入試問題ではあまり見かけません。だからというわけではありませんが、いつも読んでいるものとは目先を変えてSFのこんな作品も読んでみませんか。理科好きは国語が苦手、国語好きは理科が苦手になりがちですが、双方が歩み寄って、理科もおもしろい、国語もおもしろいと思ってもらえるのがこの作品であり、SFであると思います。この作品をきっかけに、いろいろなSFを読んでもらえるとうれしいです。

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