受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

※お好きな本のタイトルをクリックして下さい。その本に関する内容が、表示されます。

掲載月一覧 2019年2月|2019年1月2018年12月2018年11月2018年10月2018年9月
2018年8月2018年7月2018年6月2018年5月2018年4月2018年3月
Books目次へ△

2019年2月のBooks

 同じ場所が舞台でも、違う作家が書けば、物語の展開や雰囲気はまったく異なるものになります。そんなおもしろさを形にしたのが「競作」です。競作とは何人かが一つのテーマのもとに競って作品を作ること。今月紹介する『ぎりぎりの本屋さん』は5人の作家による競作です。不思議な本屋さんが登場するところは同じですが、あとはそれぞれの作家が個性を自由に発揮させています。1冊で何冊分も楽しめる競作。友だちと読み合って、どれがいちばん好きか話してみるのも楽しそうですね。

『きみは宇宙飛行士!』

  • ロウイー・ストーウェル=文

  • 竹内薫=監訳 竹内さなみ=訳

  • 偕成社=刊
  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け

超ハードな訓練の中身から 宇宙での一日の生活まで 宇宙飛行士まるごとハンドブック

注目の一冊

 宇宙船ソユーズのドアが閉じられ、カウントダウンがゼロになる。巨大なロケットエンジンが火を吹く。いよいよ発射です。船内はものすごい音と揺れ。管制センターからロシア語が聞こえてきます。「すべて予定どおり」。機体がスピードを上げ始め、重力で乗組員の体が座席に押し付けられます。「バーンッ!」。大きな音とともに、不要になったロケットがソユーズから離れていきます。突然、船内の天井から下げられたぬいぐるみが宙に浮かび始めました。無重量になった証拠です。そう、ここはもう宇宙なのです。
 このあとソユーズは国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングし、乗組員たちのISSでの生活が始まります。無重量状態の生活はどんなでしょう。ふわふわ体が浮いて快適に思えますが、最初の数日間は、床と天井の区別もつかないくらい方向感覚がなくなります。食べたものが口に逆戻りして吐いてしまう乗組員もいます。また無重量のせいで鼻が詰まって、味がわかりにくくなります。そのため、濃い味付けにしようと、宇宙ではチリソースが大人気です。
 そんな細かい情報も含めて、宇宙飛行士になる方法から訓練やミッションの内容、ISSでの生活、帰還の手順まで、楽しいイラストと説明で具体的に教えてくれます。宇宙飛行士になりたい人へ、今からでもできることはあります。著者は言います。「なにをぐずぐずしているんだい。準備を始めなきゃ。健康に気をつけて、一生懸命に勉強して、夢を膨らませるんだ。宇宙が君を待っている」

『エレベーターのふしぎなボタン』

  • 加藤直子=作
  • 杉田比呂美=絵

  • ポプラ社=刊
  • 定価=1,000円+税

  • 対象:小学校低学年向け

エレベーターの 最上階から入る森って どんな森?

 いつものように、学校から帰ってきて、マンションのエレベーターに乗ったサキ。5階のボタンを押そうとして、はっと手を止めました。いちばん上の11階のその上に見慣れない緑色のボタンがあったのです。「こんなのあったかな?」。不思議に思ってそのボタンを押すと、エレベーターはどんどん昇り、11階を通り過ぎました。扉が開いた瞬間、さわやかな風が吹いてきて、木や草や花の香りがしてきました。
 マンションのいちばん上にあったのは、どんな森でしょうか。少女とおばあさんの不思議な交流を通じて、自然を愛する思いを描いた物語です。森林をテーマにした作品に与えられる浜松市の「森林のまち童話大賞」受賞作。

『天からの神火しんか

  • 久保田香里=作
  • 小林葉子=絵

  • 文研出版=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

「何とか役に立ちたい」 身分が違う友のために 少年は立ち上がった

 関東地方の郡司の家に生まれた柚麻呂は、武術が苦手。今日もいとこから弓の腕前を競おうと誘われますが、柚麻呂は自信がありません。そのとき村里に住む一人の少年が現れ、柚麻呂の代わりに弓を引きました。矢は見事に的の真ん中に当たり柚麻呂はびっくり。「すごい。わたしの弓とは思えない」。それが柚麻呂と早矢太との出会いでした。
 奈良時代の関東地方を舞台に、郡司の家に生まれた少年と、貧しい村里の少年の友情を描きます。何をしても不器用な自分に嫌気がさし、早矢太のようになりたいとがんばる柚麻呂。戸籍調べや税の取り立て、東北地方に向かう兵士など、物語を通して奈良時代の人々の暮らしが伝わってきます。

『君だけのシネマ』

  • 高田由紀子=作
  • pon-marsh=絵

  • PHP研究所=刊
  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校高学年向け

居場所がなければ 自分の中に作ればいい 自分が強くなれる場所を

 小学校の教師をしている父が佐渡島に転勤になり、一緒に佐渡島に住むことにした史織。不登校気味の史織は、今の学校からも、そして母のいる家からも離れたかったのです。佐渡では、祖母が小さな映画館を始める準備に追われていました。映画館がなくなった佐渡島に映画館を再びつくることは、祖母の夢でした。
 母の言うなりに生きてきた史織が、祖母の夢を手伝いながら、クラスメートや島の人々と触れ合うなかで、大切なものに気づき、少しずつ自分を表現できるようになります。映画が終わると、どこからともなく起こる拍手。すすり泣く声。ゆっくり席を立つ人。笑顔の人。小さな映画館の温かな雰囲気が伝わってきます。

『ぎりぎりの本屋さん』

  • まはら三桃、菅野雪虫、濱野京子、工藤純子、廣嶋玲子=作

  • 講談社=刊
  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

すべてを知るかのように 不思議な店員は言った 「ぎりぎりでしたね」

 商店街を抜けた路地に、小さな古びた本屋さんがあります。外観からは想像できないほど中は広く、天井にまで届く書棚には本がぎっしり。やって来るお客さんには共通点があります。どの人も「ぎりぎり」の状態だということです。時間がぎりぎり、お金がぎりぎり、そして気持ちがぎりぎり。店番をするのはエプロン姿の男の子です。小学生ぐらいに見えますが、「三百年ぐらい生きてるかな」なんて言って、お客さんを不思議がらせます。
 児童文学の名手5人が、小さな書店を舞台につむぐ五つの物語。それぞれに悩みを抱える主人公の小学生たちが、不思議な本屋さんとの出合いをきっかけに、笑顔を取り戻します。

『女の子の「自己肯定感」を高める育て方』

  • 吉野明=著
  • 実務教育出版=刊

  • 定価=1,300円+税
  • 対象:保護者向け

親の接し方一つで 娘の自己肯定感は 高くも低くもなる

 日本の若者の自己肯定感は世界的に見ても低く、「自分自身に満足している」若者の割合はアメリカの半分。国際化時代、外国の人々と協働をしていくには、物おじせずにチャレンジしていく力を育てる必要があります。
 そのとき重要になるのは親の接し方です。「親の生き方、働き掛けの仕方しだいで子どもの自己肯定感は大きく変化します」。こう語るのは著者で、長年にわたり鷗友学園女子中学高等学校で自己肯定感を高める教育に注力してきた、名誉校長の吉野明先生。男子に対しては効果のある声の掛け方も、女子に対しては逆効果になってしまうことがあります。本書には、44年間にわたる教員経験に基づくアドバイスが詰まっています。

『科学のなぜ? 新事典』

  • 川村康文=監修
  • 受験研究社=刊

  • 定価=2,700円+税

身の回りにある 不思議を探って 科学の目を養おう


国立校校舎責任者

 「地球・宇宙のふしぎ」「植物のふしぎ」「動物のふしぎ」「私たちのからだのふしぎ」「身近なふしぎ」の五つの分野に分けて、さまざまな科学の「なぜ?」という疑問に答えてくれます。疑問はどれも身近なところから出てきたものばかりです。この本をきっかけに、理科は身近なものだということを知ってほしいと思って選びました。
 五つの分野にわたってさまざまな疑問が取り上げられ、物理・化学・生物・地学の理科の全分野が網羅されています。テーマごとに「なぜ?」という疑問と、それに対する答えが出ていますが、説明は短く、オールカラーで図や写真が多いので、高学年はもちろん、3年生以上なら興味を持って読めると思います。掲載されている図は中学入試に出てくるようなものも多く、紹介されている実験も、そのまま入試問題に出てもおかしくないものなので、受験勉強にも役立ちます。一つのテーマが1ページまたは見開き2ページでまとめられているので、勉強の合間などのちょっとした時間に読むことができます。
 ここ数年、地震や水害などの自然災害が多く、小学生も無関心ではいられません。「地球・宇宙のふしぎ」には、地震や津波、台風、火山噴火などの疑問も取り上げられているので、どうしてこういう災害が起こるんだろうという原因がわかると思います。また最終章の「身近なふしぎ」では、「投げたボールが落ちてくるのはなぜ?」「テレビがうつるしくみはどうなっているの?」「鏡の中ではなぜ左右が反対なの?」「カイロがあたたかくなるのはなぜ?」など、ふだんの生活のなかで感じるたくさんの不思議を取り上げています。こういうところから科学への興味が湧いて、疑問に思ったら調べるという習慣ができたらうれしいです。
 何かあったときに「どうしてだろう?」と疑問を持つことは、理科ではとても大切なことです。こういう本をきっかけに、日ごろから科学の目を養ってほしいと思います。

ページトップ このページTopへ