受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2019年3月のBooks

 皆さんはふだん手紙を書いていますか。電子メールやSNSの普及で郵便の利用は減りましたが、今月紹介する『知ってる? 郵便のおもしろい歴史』によれば、今も、日本国内で年間166億通の郵便物が扱われているとのこと。郵便の歴史をたどってみると、瞬時に届くメールと違い、人の手を介して時間をかけて届けられる郵便物は逆にぜいたくなものに思えてきます。暦の上では春ですが、まだ寒い日が続きます。寒い日は暖かい部屋で大切なあの人に手紙を書いてみませんか。

『開成をつくった男、佐野かなえ

  • 柳原三佳=著

  • 講談社=刊
  • 定価=1,800円+税

  • 対象:小学校高学年向け・一般向け

砲術の専門家から教育者へ 「人の仕立て方こそが肝要」 との信念がそこにはあった

注目の一冊

 1871(明治4)年、現在の御茶ノ水駅にほど近い地にある学校が誕生しました。共立学校です。当時の数ある私塾とは一線を画し、英語や英文学の授業を外国人教師が受け持つ「正則英語」を学べる学校です。創立者の佐野鼎は妻にこう語ります。「共立学校で学んだ者たちがこの先、どのような国をつくりあげていくのか、考えるだけで胸が躍るではないか」と。この共立学校は後に総理大臣を務めた高橋是清が受け継ぎ、その後、校名は「開成」と改められました。
 鼎が教育に目覚めたのは2度の海外渡航の経験からでした。加賀藩の下級武士だった鼎は、西洋砲術を学んだ経験を買われ、1860年に幕府の遣米使節団に、翌年には遣欧使節団に随行します。欧米では機械技術の発達もさることながら、身分を問わず庶民が学べる環境が整っていることに鼎は驚きます。
 それに引き換え、当時の日本は教育どころか、攘夷派と開国派が激しく対立する不安定な時代。戦いで命を落とす多くの人々を見て、「何のための攘夷なのか。今、最も必要なのは教育。何を為すにも人の仕立て方こそ肝要なのだ」と強く思うのでした。
 日本が近代化へと大きく動き始めた幕末期。武士の時代は終わりを迎えようとしていました。そんな時代のなかで信念を貫いた人もいれば、自分の信念だけではどうにもできずに散っていった人たち、故国への思いを胸に異国で生涯を終えた人たちの生きざまも心に残ります。教育への夢を実現させるまでの鼎の物語を軸に、激動の時代を生き抜いた人々の思いが強く伝わってくる歴史小説です。

『小学生になったら図鑑』

  • 長谷川康男=監修
  • ポプラ社=刊

  • 定価=2,700円+税

  • 対象:幼児向け・保護者向け

小学校ってどんなところ? 知っておけば安心 小学校のすべてがわかる一冊

 お友だちができるだろうか、学校生活に慣れるだろうか、勉強についていけるだろうか…。小学校入学が近づくと、何かと心配なことが出てくるもの。そんなときに役立つよう、小学校生活のすべてを図鑑形式で網羅しています。学校とはどんなところか、何を勉強するのか、入学までにどんなことをできるようにしておけばよいかなど、生活面と勉強面の両方にわたって幅広く取り上げられています。
 各ページの下には先輩ママ、先輩パパからのお役立ち情報や失敗談など、貴重なアドバイスを掲載。写真が豊富で入学後の生活がイメージしやすく、親子で話しながら一緒にページをめくれば、1年生になる楽しみがより膨らむでしょう。

『さるのてぶくろ』

  • 花岡大学=作
  • 野村たかあき=絵

  • 鈴木出版=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

お地蔵さまの前で うそをつくと ばちがあたる?

 木枯らしの吹く寒い日。こざるが畑のおいもを取ってきて、峠の頂までやってきました。そこには大きなクスノキがあり、そばにお地蔵さまがいます。そのとき、女の子がきたので、こざるは慌ててクスノキの上に隠れました。女の子はお地蔵さまのそばに、赤い手袋が落ちているのに気づき、落とし主が見つけやすいよう、手袋をお地蔵さまの手にはめて去っていきました。それを見ていたこざるは、その手袋がほしくなって…。
 うそをついて手袋を手に入れたこざる。でも悪いことはできないもの。お地蔵さまは何も言いませんが、すべてお見通しです。美しい日本語表現が心に残る、シンプルなお話です。

『知ってる? 郵便のおもしろい歴史』

  • 郵政博物館=編著
  • 少年写真新聞社=刊

  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校中学年向け

のろし、飛脚の時代から SNSの現代まで 人は何をどう伝えてきたか

 「駅」は鉄道の列車が止まる場所ですが、実は「駅」は鉄道がつくられる前からありました。中国には、中央と地方をつなぐ道に一定区間ごとに人と馬を置き、重要な文書を駅伝のたすきのように送っていくしくみが紀元前からあり、その中継場所を「駅」と呼んだのです。
 こうした通信システムは、もともとは権力者の必要から生まれたもので、一般の人が気軽に利用できるようなものではありません。誰もが利用できる郵便制度が確立されたのは、歴史的にみればつい最近のことなのです。そういう意味では、通信・郵便は社会を映す鏡であることがよくわかります。明治時代の郵便配達夫はピストルを所持していたなど、興味深いエピソードも満載です。

『星空の人形芝居』

  • 熊谷千世子=作

  • 国土社=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

かがり火揺らめく舞台 演じ手の心が一つになって 人形に命が吹き込まれる

 父が家業を継ぐことにしたため、両親と共に長野県飯田市に移り住むことになった樹。父は樹の転校を心配しましたが、樹は内心、「これで嫌な思い出ともお別れできる」と喜びました。新しい学校に初めて行った日、樹は昇降口でガラスケースに入った人形を目にします。先生の話では、「今田人形」といって、300年前から地域で守り伝えられてきたあやつり人形でした。
 3人で一体の人形を動かす人形浄瑠璃「今田人形」。その伝統を守ることに誇りを持つ地域の子どもたち。新しい出会いを通じて自信を取り戻していく樹の姿から、人はいつでも変わることができる、変わる勇気を持つことができる、というメッセージが伝わります。

『落語ねこ』

  • 赤羽じゅんこ=作
  • 大島妙子=絵

  • 文溪堂=刊
  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

成仏できずに 猫に乗り移った落語家 その「心のこり」とは?

 おじいちゃんの入院中、おじいちゃんが飼っているクマハチというデブネコを預かることになった七海。ネコを引き取りに行った帰り道、公園のベンチで休んでいると、どこからか不思議な声がしました。七海はぎょっとして見回しましたが、近くには誰もいません。クマハチ以外は…。
 友だち関係に悩む少女と、ネコに乗り移った落語家の幽霊との、笑いと涙の物語です。交通事故で急死した落語家は、この世に「心のこり」があって成仏できません。一方、七海は親友との関係がこじれ、何とかしたいと思っています。お互いに悩み事の相談に乗るうちに大事なことに気づいていく2人を、ユーモアたっぷりに描きます。

『昆虫はすごい』

  • 丸山宗利=著
  • 光文社=刊

  • 定価=780円+税

たった数センチのからだで 人間を怖がらせる、 驚きに満ちた虫の世界を冒険しよう


東戸塚校 校舎責任者

 「虫」と聞いただけで、「気持ち悪い」「怖い」と思う人は少なくないでしょう。正直なところ、虫が好きなわたしでさえそう感じるときがあります。でもそれは、虫のすごさを実感していることの裏返しかもしれません。虫たちは、小さなからだで、生き残るためにさまざまな工夫を凝らしています。その代表的なものの一つが相手を怖がらせることなのです。そうはいっても、虫によってその方法はさまざまです。天敵を撃退する方法を身につけたり、からだの中に毒を蓄えたり、恐ろしい仲間に見た目を似せて襲われにくくしたりする虫もいます。似た防御方法を身につけたいくつかの種が、天敵に覚えられやすいように見た目を似せ合うこともあるそうです。
 生き残るための戦略は相手を怖がらせることだけではありません。葉や枝にからだを似せて敵から見つかりにくくしたり、自分のクローンを生んだり、アリの巣に居候をしたり、ほかの種のからだを乗っ取ったり、メスに獲物をプレゼントするときに、糸で外側の包装だけ作って中はカラという虫までいます。まるで「結婚詐欺」です。このように、それぞれの種が暮らしぶりにあった生き残り戦術を磨いています。
 特に社会を営むアリは、ほかの生き物とのかかわり方も複雑かつ多様です。“農業”や“牧畜”をする、ほかの巣のアリを奴隷にする、単独でクーデターを起こす、自爆攻撃をする、ほかの種の仲間になりすますなど、さまざまな例がこの本では紹介されています。なかには、なぜそのような暮らしぶりや見た目をしているのか、人間の解釈が及ばないような虫さえいて、奥が深いです。
 「怖いもの見たさ」でも構いません。虫が嫌いな人にこそ、この本をお薦めします。ふだん目を背けがちなものにあえて目を向けてみれば、新しい発見につながることは多いはずです。ぜひ、不思議と驚きに満ちた虫たちの世界を冒険してみてください。考えてみれば、たった数センチしかない虫が、目の前に登場しただけで人間のような大きな生き物をのけぞらせることができるなんて、すごいことですよね。本当に虫はすごい。

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