受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2020年4月のBooks

 「家だと普通に話せるのに、学校だとどきどきして話せない」。家と学校とは違うので、そんなことがあったとしてもおかしなことではありません。今月紹介する『はるかちゃんが、手をあげた』は、人前で話せない恥ずかしがり屋の女の子が主人公のお話です。時間はかかりましたが、伝えたい思いが先に立ったとき、ひょんなことから話せるようになります。4月は入学、進級の季節。新しい環境で緊張することもあるかもしれませんが、焦らずゆっくり慣れていきましょう。

『戦場の秘密図書館 ~シリアに残された希望~

  • マイク・トムソン=著

  • 小国綾子=編訳

  • 文溪堂=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校高学年向け

絶望的な状況のなか 図書館の本が 明日への希望をつないだ

注目の一冊

 内戦下にあるシリアの首都ダマスカス郊外の町、ダラヤ。政府軍の攻撃にさらされ、食料も生活物資も届かなくなったがれきだらけの街の地下に、その図書館はありました。図書館をつくったのは、多くの人がダラヤを去るなか、この地にとどまることを決意した若者たちでした。彼らは本を爆撃から守ろうと、破壊された家から本を持ち出すことを考えました。狙撃兵に見つかったら射殺されてしまう、とても危険な行為でしたが、それでも彼らは何千冊もの本を集めました。
 食料さえ十分に得られない状況のなかで、なぜ彼らは命を懸けて本を守ろうとしたのでしょうか。なぜ人々は危険を冒してまで図書館に来て、本を読みふけったのでしょうか。若者の一人はこう語ります。「体が食べ物を必要とするように、魂には本が必要なんです」と。一方、本が好きな子どもたちのなかには「本を読むと空腹を忘れられる」と言う少女もいます。その少女は「内戦が終わったら将来何になりたい?」という著者の質問にこう答えます。「そういうことはもう考えない。あたしは長く生きないと思うから。ここで死ぬんじゃないかな」。胸が痛む場面です。
 絶望に打ちひしがれた人々を少しでも勇気づけようと、壁に絵を描き続ける若者。図書館で借りた本を持って、前線に赴く反政府派の自由シリア軍兵士。教育を受ける機会を奪われた子どもたちのために、勉強を教え続けた女性。戦場の図書館を愛した人たちの姿を通じて、戦争の悲惨さ、そして人間の強さをイギリスのBBC記者が伝えます。

『あおい むぎわら ぼうし』

  • 武鹿悦子=作

  • 土田義晴=絵

  • すずき出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:幼児・小学校低学年向け

「待っててね、約束だよ」 男の子のことばに 喜ぶこぎつねでしたが…

 山のこぎつねの前を、男の子が自転車に乗って通り過ぎました。チリン、チリン。いいなあ、ぼくも乗りたいなあ。こぎつねがそう思っていると、男の子の青い麦わら帽子が風で飛んできました。帽子を返してあげると、男の子は言いました。「これは兄ちゃんのおふるだけど、誕生日がきたら新しい自転車を買ってもらうの。そしたら乗せてあげるね」。こぎつねは約束の日を心待ちにしました。
 「十三寝たら迎えに行くから待っててね」。男の子のことばがうれしくて、1日、1日と数えながら、その日がくるのを楽しみに待つこぎつね。男の子は本当に来てくれるでしょうか。ことばの大切さ、約束の大切さを伝える心温まる絵本です。

『はるかちゃんが、手をあげた』

  • 服部千春=作

  • さとうあや=絵

  • 童心社=刊

  • 定価=1,000円+税

  • 対象:小学校低学年向け

恥ずかしがり屋の はるかちゃんが初めて しゃべったことばとは?

 2年2組のほとんどの子は、はるかちゃんの声を聞いたことがありません。はるかちゃんは家ではしゃべれますが、学校だと恥ずかしくて話すのが怖くなってしまうのです。入学したときからそうなので、先生もクラスの子どもたちも、そして自分でもしゃべらないことに慣れっこになりました。席替えの日、はるかちゃんは、あきらくんの隣になりました。あきらくんは、元気いっぱいのクラスの人気者でした。
 はるかちゃんはあるとき、思わずことばが出て話せるようになります。いつどんなことばが出たのでしょうか。先生やクラスのみんなが、はるかちゃんに向ける視線が温かく、「学校っていいな」と思えてきます。

『マンボウは上を向いてねむるのか
マンボウ博士の水族館レポート

  • 澤井悦郎=著

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・高学年向け

水族館で観察するだけで マンボウについて これだけのことがわかる!

 水族館のマンボウを見ていると、口を上に向けた姿勢になっていることがあります。特に夜に多く、からだがだんだん沈んできて底につくと、びっくりしたように震えて浮上するそうです。まるで寝ぼけているかのようです。このときマンボウは眠っているのでしょうか。
 マンボウといっても1種類ではなく、世界に3種いることを突き止めた著者が、マンボウ研究を続ける日々の喜びや苦しみを楽しく語ります。特に水族館での観察の様子がおもしろく、ひれが動く回数を数えたり、からだの色の変化を調べたり。熱心に水族館に通えば小学生でもできそうです。生き物を研究することのおもしろさを教えてくれる、驚きいっぱいのレポートです。

『地図で見る日本の地震』

  • 山川徹=文

  • 寒川旭=監修

  • 偕成社=刊

  • 定価=2,000円+税

  • 対象:小学校中学年向け・高学年向け

自分の住むこの場所で どんな地震が起きたのか 過去を知って次に備えよう

 地震に備えるうえで大切なのは、過去の地震を知ることです。自分が暮らす地域で、今までにどんな地震が起こったかは知っておかなければなりません。地震は同じ地域で同じようなタイプのものが繰り返し発生し、似たような被害を出すからです。
 古くは679年の筑紫地震から、最近では2019年の山形県沖地震まで、全国各地で起きた地震を取り上げています。いつどこでどれくらいの規模の地震が起き、どんな被害をもたらしたのか。そのとき人々はどう行動し、どう復興していったのか。地域ごとに地図や図を使ってわかりやすく説明しています。遠い昔から地震が繰り返され、たくさんの犠牲者を出してきた日本。歴史から教訓をくみ取らなければなりません。

『あした、また学校で』

  • 工藤純子=著

  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

先生は問い掛けた 「学校は誰のものか、 考えたことはないですか」

 弟がみんなの前で先生に怒られて泣いていた、と知らされた一将。弟の将人は実は運動が苦手なのに、自由参加の大縄跳び大会に自分から「出る」と言ったので、一将は心配していたのです。怒られたことが原因で学校を休むようになった将人。納得ができない一将は、この件を代表委員会で話し合うことにしますが…。
 「学校は誰のものかって、考えたことはありませんか」。ある先生に言われたことばが引っかかる一将。「学校は本当に自分たちのためのものになっているのだろうか」「そうでないとしたらどうしたらいいのだろうか」と思い悩む子どもたちだけでなく、親や先生も、それぞれの視点から学校というものに向き合っていく物語です。

『ガラスの地球を救え 21世紀の君たちへ

  • 手塚治虫=著

  • 光文社=刊

  • 定価=480円+税

「未来を思って考えよう」 今も色あせない 子どもたちへのメッセージ


所沢校 校舎責任者

 漫画家、手塚治虫の幼少期の思い出から創作の秘密、作品に込められたメッセージ、そして未来の子どもたちへの思いまでがつづられています。
 手塚治虫は昭和の時代に活躍し、平成が始まって間もなく、1989年2月に亡くなりました。作品には未来を想定したものが多く、いかに彼が先の時代を見通していたかということは、この本の「地球は死にかかっている」「科学の進歩は何のためか」「情報の洪水に流されるな」といった各章のタイトルを見るだけでもわかります。
 この本が最初に出版されたのは1989年4月、つまり彼の死後でした。「21世紀の君たちへ」という副題のとおり、全体が子どもたちに向けてのメッセージです。たとえば「時間の無駄遣いが想像力を育む」という章を読むと、平成だけではなく、令和の時代の子どもたちにも読んでもらいたいメッセージになっています。今の子どもたちは忙しい生活を送っていて、無駄な時間というものはあまりないかもしれません。でも集中して一生懸命に勉強したり、逆にだらだら過ごしてしまったり、いろいろな時間の使い方があって、一つひとつの時間に意味があるからこそさまざまな発想が生まれてきます。教科の学習に関係ないと思うようなことでも、広く見渡して物事を考え、いろいろな経験をすることを無駄なことだと思わないでほしい、ここにはそんなメッセージが込められているように思います。
 文章は過去の中学入試問題でも取り上げられたことがあります。そのときは再生医療をテーマにした深い内容でした。最近の入試問題では、未来志向の問題がよく出題されます。たとえば核兵器を廃絶するためにどんな取り組みができるかを考えさせたり、SDGsの17の目標を18に増やすとしたらどんな目標を加えるかを書かせたり。小学生の視点で未来を考える力が求められています。
 目先のことにとらわれず、未来を見据え想像力をもって日々過ごす。そんな姿勢を養ううえでぜひ読んでほしい一冊です。

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