受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

※お好きな本のタイトルをクリックして下さい。その本に関する内容が、表示されます。

掲載月一覧 2020年6月|2020年5月2020年4月2020年3月2020年2月2020年1月
2019年12月2019年11月2019年10月2019年9月2019年8月2019年7月
Books目次へ△

2020年6月のBooks

 皆さんはバナナは好きですか。バナナは産地で収穫された後、病気にならないよう厳重に管理されながら船で運ばれた後、倉庫で保管され、ちょうど食べごろにお店に並びます。今月紹介する『旅でみる 世の中のしくみ大図解』を読むと、食べ物も洋服も、電気や水も、長い旅を経てわたしたちの手元に届けられていることがわかります。チョコレートの旅もあります。おやつでも食べながら読んでみませんか。当たり前にある身の回りのものが、今までと違って見えてきますよ。

『雷のあとに』

  • 中山聖子=作

  • 岡本よしろう=絵

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

「真面目ないい子」? 「真面目なさえない子」? わたしはどっち?

注目の一冊

 睦子は学校帰りにいつも、亡くなったハルおじさんの家に寄ります。その家は建築士だったおじさんが建てた木造平屋の家で、住宅模型や本がたくさん置いてあります。睦子はそこで宿題をしたり、本を読んだりしてから帰ります。特に学校で嫌なことがあった日は、このおじさんの家で、独りで過ごす時間は大切なものでした。
 でもお母さんは、睦子がおじさんの家で過ごすことを快く思っていません。「行くな」とは言いませんが、戸締まりや帰宅時間については口うるさく言ってきます。少し帰りが遅くなるだけでも大騒ぎなのです。兄は睦子に言います。「お母さんが怒っているときは、ダンゴムシになったつもりで丸まっとくといいよ。オレはいつもそうしてるんだ」
 お母さんは睦子のことを「真面目ないい子」と言います。一方で、遊びに行く誘いを断る睦子を、友だちは「むっちゃんは真面目だからね」と言います。大人が言う「真面目」と友だちが言う「真面目」。どう違うのでしょうか。物語にはもう一つの「真面目」が出てきます。自分のことを自分で言う「真面目」です。この「真面目」と出合ったとき、睦子のなかで何かが変わります。
 お互いを思うがゆえに、重くなっていく家族のつながりのなかで、おじさんとの思い出に支えられながら、自分との対話を繰り返す睦子。そんな5年生の女の子の姿を等身大に描きます。物語の最後、おじさんの家を片付ける場面がさわやかな感動を運んでくれます。

『紙ひこうき、きみへ』

  • 野中柊=作

  • 木内達朗=絵

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校低学年向け

いつも思ってるよ 「どうしてきみは ここにいないんだろう」と

 シマリスのキリリが木の枝に座って、日なたぼっこしていると、風に乗って青い紙飛行機が飛んできました。紙を開くと、こう書いてありました。「こんにちは。夕方にはそちらにつきます」。誰からの手紙かわかりません。でもとにかくお客さんがやってくるのです。キリリはとっておきの木の実や粉を使って、パンやビスケットを作りました。そして夕方、キリリの後ろから声がしました。「きみだね?」。振り返るとそこには、ミケリスのミークが立っていました。
 やがてキリリのもとを去っていく旅好きのミーク。「会いたい」という真っすぐな気持ちが、青空色の色彩でさわやかに描かれた友情の物語です。

『ようこそ! ここはみんなのがっこうだよ』

  • アレクザーンドラ・ペンフォールド=作

  • スーザン・カウフマン=絵

  • 吉上恭太=訳

  • すずき出版=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校低学年向け

一緒にやろう! 一人ひとり違っても 心配なんて何もないよ 

 教室には「ようこそ」と書かれた黒板。そして大きな世界地図。お父さんやお母さんに連れられて、子どもたちがやってきます。頭に布を巻いた女の子、おそろいの服を着た双子ちゃん。車椅子の子。髪の色も肌の色もさまざまです。チャイムが鳴りました。さあ学校が始まります。
 国籍・民族・宗教・文化などは違っても、子どもたちは一緒に遊び、一緒に勉強をします。互いに認め合い、教え合い、助け合いながら。そんな学校でのわくわくする一日を描く絵本です。文字は少ないので、「この子は何をしているのかな」「どこの国から来たのかな」などと、親子でいろいろなことを話しながらページをめくってください。

『旅でみる 世の中のしくみ大図解』

  • リビー・ドイチュ=作

  • バルプリ・ケルトゥラ=絵

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,980円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け・小学校高学年向け

電気もガラスびんも チョコレートも、みんな 長い旅をしてここにきた

 スーパーに並ぶバナナは、どこから、どのようにして運ばれてきたのでしょうか。どうしてスイッチを押すと電気がつくのでしょうか。蛇口をひねると水が出るのは、どうしてでしょうか。あらためて聞かれると、大人でもなかなか答えられません。
 電気・水・ガソリン・バナナなど、いつも使ったり食べたりしているものが、どんなしくみで自分のところに届いているのか、楽しいイラストを使ってわかりやすく説明しています。ふだん当たり前のように手にしているものが、どれだけ遠くから、どれだけ多くの人たちの手を経て、どれだけ姿を変えながら届いているのか。その旅の長さとスケールの大きさにびっくりさせられます。

さくあき

  • いとうみく=作

  • 講談社=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校高学年向け

心が行き違ったままの 兄弟のブラインドマラソン 2人の絆はつなげるのか?

 高速バスの事故で視力を失った朔。自分が予定を変えなかったら、兄はあのバスに乗ることも事故に遭うこともなかった。その思いに苦しむ新は、好きな陸上競技をやめ、高校のスポーツ推薦も断ってしまいます。一方、盲学校での寄宿舎生活を終えて家に戻った朔は突然、新に「ブラインドマラソンの伴走者になってほしい」と頼むのでした。
 ブラインドマラソンは、2人をつなぐロープが長すぎても、短すぎてもうまく走れません。兄弟であるがゆえに、適度な距離を保って走る難しさを感じる朔と新。気持ちのすれ違いがつくるもやもやした空気を、友だちのひと言が一掃します。「きれいなんだよ、滝本君たち2人の走りって」

『主人公はきみだ ライツのランプをともそうよ

  • 中山千夏=著

  • 出版ワークス=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校高学年向け

未来を担う子どもたちに 知ってほしい ライツを守る大切さを

 「すべての人間は生まれながらにして自由であり、その尊さとライツにおいて平等である」。1948年に国際連合総会で採択された「世界人権宣言」の第1条の前半です。この本の出発点はここにあります。
 著者は「人権」という訳語が本来の意味を表していないとして、「ライツ」と表現しています。ライツとは何か、いかに守るべき大切なものか。ライツが生まれた歴史と、「世界人権宣言」「子どもの権利宣言」「日本国憲法」などから、子どもたちに向けて易しく説き明かします。「日本国憲法はライツの心強い見方なのよ」と著者。日本の憲法に、ライツに関する条文がいかに細かく設けられているかに気づかされます。

『最果てアーケード』

  • 小川洋子=作

  • 講談社=刊

  • 定価=600円+税

「命って何だろう」 大切なことを考える きっかけになる作品


王子校 校舎責任者

 小学校の中・高学年になると「死ぬってどういうことだろう」「生きるってどういうことだろう」と考える時期があると思います。それまでは感覚的にとらえていた「生」「死」、あるいは「命」について、ことばにできるような答えがほしい。そんなことを考え始めたら、夜、眠れなくなるかもしれません。でもそのように思い悩むことはとても大切です。本書は、生や死を正面から論じる本ではありませんが、物語を読み進めていくうちに、そういう大切なことを考えるきっかけを与えてくれる作品です。
 舞台は古い小さなお店が集まる小さなアーケード街です。そこの大家さんの娘さんが、店主やお客さんについて語っていく物語です。お話の内容はここでは触れませんが、文章は読みやすく、ユーモラスなところもあるので、5~6年生なら無理なく読めるでしょう。独立したいくつかのお話で構成されていますが、すべてはアーケード街でのことなので、全体的につながりがあり、読み進むにつれて「ああそうだったのか」と少しずつ明らかになっていきます。そんな読書の醍醐味が味わえます。文章表現の美しさも魅力です。
 作者が伝えたい思いは明確にあります。でも何事も言い切ってはいません。そこからどんな結論を引き出すのか、どう判断するのかは、すべて読む人に委ねられています。
 子どものころに一度読んで、大人になってからまた読み返すのもいいでしょう。違う読み方ができると思います。名作とはそういうものではないでしょうか。親子でそれぞれ読んで感想を話し合ってみてもいいでしょう。話題がいろいろな方向に膨らんでいくと思います。おもしろいと思ったら、同じ作家の作品を次々と読みたくなるかもしれません。そんなときは『猫を抱いて象と泳ぐ』もお薦めです。

ページトップ このページTopへ