受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2020年10月のBooks

 移動図書館を知っていますか。自動車に本を積んで地域を巡回し、貸し出し業務をしてくれる図書館です。今月紹介する『じりじりの移動図書館』は、ミネルヴァ号という移動図書館を舞台にした五つの物語を収めた本です。ミネルヴァ号は本の貸し出しとは別に、重大な任務を担って時空を超えて移動します。さてその任務とは何でしょう。あらためて本の力の大きさが感じられる一冊です。人や動物が主役の本もいいですが、たまには本たちが主役のこんな物語もいかがですか。

『未来の自分に出会える古書店』

  • 齋藤孝=作

  • 文藝春秋=刊

  • 定価=1,450円+税

  • 対象:小学校高学年向け

人生に疑問を感じたとき 答えを与えてくれる本が どこかに必ずある

注目の一冊

 弟の「メッシくん」はサッカーのクラブチームに所属する中学2年生。兄の「ゴッホくん」は絵を描くのが好きな高校2年生。2人の家の近くに古本屋が開店したと聞いて、まんがを読もうとその店を訪ねたメッシくん。ドアを開けて迎えてくれたのは、「サイトウさん」というメガネを掛けたおじさんでした。
 メッシくんはそのあだ名のとおり、サッカーが大好きです。でもチームの期待に応えられず、ベンチ入りさえやっとの状態です。サイトウさんは「ベンチか。それもいいじゃない」と気楽に言うので、メッシくんはむっとします。一方、ゴッホくんは美術大学をめざしていますが、絵に関係のない英語や国語を勉強するのが苦痛です。そんなゴッホくんはサイトウさんから「絵を描く以外に何もしたくないなら、なぜ大学に行きたいの?」と言われて考え込んでしまいます。
 日本語に関する著作の多い著者が、初めて小説スタイルに挑戦した一冊です。コンプレックス・進路・いじめ・恋愛など、2人の兄弟が抱える悩みに、店主のサイトウさんが本を紹介することを通じて、さりげなくアドバイスをします。登場する本は名著といわれる哲学書から、有名な小説、スポーツ選手や芸術家のエッセイ、話題になったコミックスなどさまざま。本はいつだって、人生の悩みに答えを出すヒントを与えてくれます。サイトウさんが薦める本のなかのことばが、またサイトウさんが2人に書き送った手紙のなかのひと言に、読む人それぞれの、その時々の気持ちに響くのではないでしょうか。

『ホッキョクグマ なんきょくにいく』

  • まつみやけいじ=作

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,300円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

ペンギンに会うために ホッキョクグマが 氷を背負って大旅行

 ぼくは北極にすむホッキョクグマ。じいちゃんには、南極にすむペンギンの友だちがいます。そのペンギンさんから手紙が届いて「会いに来てほしい」と言ってきました。そこで年をとって長旅ができないじいちゃんの代わりに、ぼくが南極まで行くことになりました。でも北極から南極まで旅するなんて大変。途中でとても暑いところを通らなくてはならないのです。大丈夫かなあ!?
 ホッキョクグマがその土地土地の人たちに助けてもらいながら、地球の北の端から南の端まで旅するお話です。いつどこを通ったか、旅の行程が描かれているので、ホッキョクグマと一緒に旅をしているような、わくわくした気分になります。

『わっしょい 深川八幡ふかがわはちまん 水かけ祭り

  • やじまますみ=作

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校低学年向け

掛け声を合図に 53基のおみこしが 上に下にとびはねる!

 もうすぐ3年に1度の深川八幡の本祭り。町内は準備で大忙しです。職人さんは祭壇を置くお神酒所を建てたり、おみこしにかつぎ棒を縛りつけたり。町内会の人々が、通り道にちょうちんやのぼり旗を取り付けていきます。神様の前で、みんなでおはらいを受けたら、いよいよ祭りの始まりです。
 江戸三大祭りの一つ、東京都江東区にある富岡八幡宮の「深川八幡祭り」の様子を、地元出身の作者が熱く描き出します。担ぎ手たちによって、上に持ち上げられたり、高く放り上げられたり。53基ものおみこしが、ホースやバケツで水を掛けられたりしながら練り歩く様子は迫力満点。「わっしょい、わっしょい」の掛け声が聞こえてくるようです。

『氷室のなぞと秘密基地』

  • 中谷詩子=作

  • よこやまようへい=絵

  • 国土社=刊

  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け

とけなかったのはなぜ? 冷蔵庫がなかった時代の 氷作りの謎を探れ!

 奈良県の氷元町は標高の高い高原にありますが、夏は毎日30度を超す暑さです。この町に住む春馬の夏の楽しみは、駄菓子屋のかき氷を食べること。ところが店に行くと、「冷蔵庫が壊れて作れない」と聞いてがっかり。店主の話では、昔は近所に天然氷をたくわえる「氷室」があったとか。今も氷室跡が残っていると聞いて、春馬は親友と氷室跡の探検に出かけることにしました。
 電気製品がなかった昔、農民たちは苦労して冬に氷を作り、氷室という特別な場所で保存して、身分の高い人に献上していました。冷蔵庫が当たり前にある今では信じられないような歴史の一端が、少年少女たちの冒険を通して伝わってきます。

完司かんじさんの戦争』

  • 越智典子=著

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校高学年向け

明日死ぬかもしれない、 そんな毎日でも 人は笑って生きていく

 新潟県生まれで満州(現在の中国東北地方)で働いていた完司さんが陸軍への入隊命令を受けたのは、1943年12月。21歳のときです。翌年、戦地のグアム島に赴いた完司さんは、機銃掃射で左足を失います。トカゲやヒキガエルを食べ、切ったままの足を川で洗う。そんなジャングルでの生活が始まりました。
 太平洋戦争を体験した若者の体験記です。といっても悲壮感はなく、ジャングルでのサバイバル生活も冒険小説のようです。それでも「ほっとするところだなと感じる場所には、必ず死体がありました」と完司さん。非情な日常のなかに放り出されたとき、人はいかに生きていくのか。淡々と事実を語る完司さんのことばが、戦争の恐ろしさを浮き彫りにします。

『じりじりの移動図書館ブックカー

  • 廣嶋玲子、まはら三桃、濱野京子、
    工藤純子、菅野雪虫=作

  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校高学年向け

乗ったが最後、 どこに着くかわからない 移動図書館の正体は?

 今日も車にたくさんの本を積んで、坂尻公園に移動図書館がやってきました。本好きの文香が、いつものように中に入って本を読んでいると、車が急に動き出しました。次の巡回場所は家の近くの沼尻広場なので、文香は乗っていたままでいることにしました。ところが停車したのは、確かに沼尻広場でしたが、いつもとどこか様子が違っていました。
 館長はスーツを着た白いひげのおじいさん。運転手は髪の長い黒い制服姿の女の人。彼らを乗せた移動図書館「ミネルヴァ号」を舞台に、児童文学の名手5人が五つの物語を紡ぎます。失われたものを取り戻すために、大切なものを守るために、ミネルヴァ号は時空を超えて移動を続けます。

『北欧式 眠くならない数学の本』

  • クリスティン・ダール=著

  • スヴェン・ノードクヴィスト=絵

  • 枇谷玲子=訳

  • 三省堂=刊

  • 定価=1,400円+税

「どうしてだろう?」 考えれば考えるほど 算数はおもしろい


成城校 校舎責任者

 算数(数学)が「つまらない」と思っている人のために、スウェーデン人の作家が数学のおもしろさを教えてくれます。「フィボナッチ数列」「ピタゴラスの定理」など、算数が好きな人ならよく知っている題材が多く出てきます。しかし、難解な定理を知らなくても、ほとんどが「四則計算」がわかっていれば理解できる内容になっています。
 各章には「やってみよう」というコーナーがあり、色を塗ったり紙を折ったり、手を動かしながら楽しく調べられる題材が掲載されています。たとえば「メビウスの帯」と呼ばれる図形があります。これは、細長い紙を1回ひねって両端を貼り合わせて輪にしたものです。ひねらずにそのまま貼り合わせるとただの輪になり、裏と表で二つの面ができます。でもメビウスの帯には面が一つしかありません。帯に色をつけてみると、全体が同じ色になるのでわかるでしょう。わたしも小学生のときに初めて知って、おもしろいなと思って作ってみました。紙を輪にするときに1回ひねってつなげるのが基本ですが、「では2回ひねったらどうなるんだろう」「3回ひねったらどうなるんだろう」と一日中遊んだ記憶があります。
 算数の勉強はただ答えを出して終わりではありません。正解を出す以外に、「これってどういうことなんだろう」と、自分で考えたり調べたりする経験を積むことが大事です。問題を見たとき、式を立てて計算をして答えを出すことも必要ですが、自分で調べたり考えたりするうちに発見したことが答えにつながる、そういうことができる場面も多いものです。
 ふだんの授業のなかでも「どうして?」という疑問の視点を大事にして、自分なりに考え、突き詰めてほしいと思います。この本には、「どうして?」のタネがたくさん詰まっています。今まで算数に興味が持てなかった人、ただやらされているだけの退屈な勉強だと感じていた人が、「算数っておもしろいな」と思うきっかけになったらうれしいです。

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