受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2020年12月のBooks

 今年も残すところあと1か月あまり。今年は366日あります。江戸時代に目を転じると、当時は1年12か月(約354日)だったり、13か月(約384日)だったり、年によってばらばらでした。暦の日付を決めながらも、日付と季節が大きくずれていかないように調整していたからです。今月の「先生お薦めの一冊」は、そんな江戸時代の生活に密着した単位や文章題の解法を通して、当時の経済や暮らしぶりを知ることができる一冊です。問題文が楽しく、算数が苦手な人にもお薦めです。

『父さんのことば』

  • パトリシア・マクラクラン=作

  • 若林千鶴=訳

  • 石田享子=絵

  • リーブル=刊

  • 定価=1,300円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

みんなのヒーローだった 父さんが亡くなった そのとき家族は…

注目の一冊

 もし、大切な家族が、ある日突然いなくなってしまったら…。悲しいことですが、残された家族がその後の毎日をどう過ごしたらいいのか。これは大きな問題です。物語は、フィオナとフィンの姉弟がこの問題に直面するところから始まります。
 姉弟の父さんは、多くの患者さんに頼りにされている精神科医です。母さんは大学で学位を取る勉強をしているので、朝は父さんがよくオムレツを作ってくれます。ある日、父さんはいつものようにオムレツを作ってから、ばたばたと車に乗ってクリニックに向かいました。でも、それっきり、フィオナたちのところに帰ってくることはありませんでした。父さんの車は、ボールを追いかけて道に飛び出した子どもをよけようとして、トラックと衝突したのです。
 深い悲しみのなかで、フィオナがいちばん心配したのは、幼い弟、フィンのことです。フィンは話をしなくなり、夜は独りで寝られなくなりました。フィンの頭の中には、ずっと一つの疑問が渦巻いていました。どうしてボールを追いかけて車の前に飛び出す子どもを、その子のお母さんは放っておいたのか、と。
 悲しみを癒やすには時間が必要だといわれます。でもそれは悲しい出来事を忘れることではありません。笑顔がなくなった毎日のなかで、折に触れ、父さんが言ったことばを思い返すフィオナとフィン。父さんのことばが、そして周りの人々の支えが、静かな一家の毎日に明かりをともします。命の温かさ、人を思う気持ち、大きなぬくもりが悲しみを包み込んでいきます。

『おとうふ2ちょう』

  • くろだかおる=作

  • たけがみたえ=絵

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

2ちょうのはずが どんどん増えて 全部で何ちょう!?

 おつかいを頼まれたケンちゃん。頼まれたのは、しょう油とごま油と、おとうふ1ちょうです。でも買い物を済ませて帰る途中、お母さんがケータイで、「おとうふは2ちょうにして」と言ってきました。遊ぶ約束があってスーパーに戻りたくないケンちゃんは、「2ちょうは重くて持てない」とうそを言いました。仕方がないのでお母さんは、双子の妹たちにおとうふを頼みました。ところが…。
 ちょっとした行き違いで、同じ物を二重に買ってしまうことはよくあるもの。そんな小さな日常の光景から、奇想天外な楽しいお話が生まれました。最後に、食卓に並ぶたくさんのおとうふ料理がおいしそうで、思わず食べたくなってしまいます。

新装版 そらのうえ うみのそこ』

  • 長沼毅=監修

  • 大橋慶子=絵

  • 303 BOOKS=刊

  • 定価=1,500円+税

  • 対象:小学校低学年向け・小学校中学年向け

38万km離れた宇宙から 深さ1万mの深海まで 高度でたどる神秘の地球

 「こちらタケシです。いま地球から38万km離れた地点にいます」。インディ号に乗ったタケシが博士に報告します。ここは月面近くの宇宙空間。さまざまな人工衛星が飛んでいます。「はやぶさ2」も見えます。国際宇宙ステーションがある地点には、有人宇宙飛行を成功させた「ファルコン9」が見えます。高度を下げていくと、きれいなオーロラが見え、夜行雲という青白い雲も現れました。
 宇宙から深海まで、ページを「縦」にめくりながら、高度で地球をたどります。地上からは見ることができない珍しい気象現象や、深海の変わった生き物もたくさん登場。宇宙側から見ても、深海側から見ても、地球は不思議がいっぱいです。

『AIロボット、ひと月貸します!』

  • 木内南緒=作

  • 丸山ゆき=絵

  • 岩崎書店=刊

  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け

ぼくそっくりの AIロボットは 優秀な召し使い、でも…

 未来科学研究所を見学に来た栄太。たまたま10万人目のお客さんだったことから、所長に館内を案内してもらうことに。ゲームの中に入ったような感覚で楽しめるバーチャルリアリティーゴーグル、女の子の姿をしたスーパーコンピューターなど、館内はびっくりするような楽しいものばかり。帰りに所長さんは栄太に、ひと月だけAIロボットを貸してくれました。
 自分そっくりのロボットが、自分の代わりに嫌なことを何でもやってくれる。そんな夢のような生活を手に入れた栄太。でも、分身との生活は、思っていたほど楽なものではありませんでした。少年とロボットとの交流を描く、楽しくてちょっと切ない物語です。

『猫町ふしぎ事件簿 猫神さまはお怒りです

  • 廣嶋玲子=作

  • 森野きこり=絵

  • 童心社=刊

  • 定価=900円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

ひらりひらり 身軽に走れる屋根の上 ネコになるのもいいかも!?

 遠矢の楽しみは、学校帰りにおんぼろ屋敷の庭をのぞくこと。その庭には背の高い立派なネコじゃらしが1本生えていて、近所のネコたちが入れ替わり立ち代わり集まってくるのです。ある日、通りかかった幼なじみの真理恵から、飼いネコにあげたいからネコじゃらしを取ってきて、と頼まれた遠矢。真理恵に弱みを握られていることから、仕方なく庭に入ってネコじゃらしの茎を折って持ち帰りましたが…。
 ネコの姿になった主人公が、猫神様の呪いを解くために冒険します。ネコの目線で見る世界は新鮮そのもの。小さなことにも気づくようになって、遠矢は成長していきます。個性的なネコたちが登場して、ネコ好きでない人も楽しめます。

星空をつくる プラネタリウム・クリエーター 大平貴之』

  • 楠章子=作

  • 文研出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

本物に近い星空を より多くの人に 見てもらうために

 1998年、国際プラネタリウム協会のロンドン大会で、人々を驚かせたプラネタリウムがありました。大平貴之さんが開発した「メガスター」です。当時としてはありえない100万個もの星を映し出すことができ、それでいて軽量でコンパクト。以後、メガスターの名は世界中に広まりました。
 世界的なプラネタリウムクリエイター、大平貴之さんのプラネタリウム開発の歩みを描きます。高価なレンズが買えなかった小学生時代、レンズ会社に電話をかけまくって安く売ってくれるところを探した貴之さん。子どものころからものづくりが大好きだった彼は、失敗してもあきらめずに挑戦を続けました。困難に直面するたびに協力者に出会えたことが、夢への道を広げました。

親子で楽しむ 和算の図鑑』

  • 谷津綱一=著

  • 技術評論社=刊

  • 定価=2,680円+税

問題を通して伝わってくる 江戸時代の人々の 暮らしと豊かな知恵


仙川校 校舎責任者

 「和算」とは江戸時代に発達した日本独自の数学です。この本は江戸時代に使われていた数字から始まり、重さ、長さ、お金などの単位やその換算法、割合や面積の問題などまで幅広く紹介しています。
 なかでもお薦めなのは、最後の章にある「江戸の算術パズル」です。「薬師算」や「油分け算」などの問題がパズルを解くように楽しめておもしろいです。薬師算や油分け算の問題は、中学入試でも取り上げられることがあります。サピックスの教材にも旅人算などが出てくるのでわかると思いますが、皆さんが勉強している算数は、江戸時代の算術の流れの上にあるものです。昔の人もがんばって勉強していたのですね。昔は「読み・書き・そろばん」といって、そろばんも練習しなければならなかったので、大変だったと思います。「読み・書く・計算する」という学習するための三つの要素は、今も昔も変わらないですね。
 江戸時代の単位のなかには、今でも使われているものがたくさんあります。たとえばお米などの量を量るときに使う「一升」や「一合」。それが実際にどのくらいの量なのかがわかりやすく説明されています。また、畳敷きを使った図形の問題では、「畳のヘリが十字になる敷き方をしてはいけない」といった当時の常識も教えてくれます。生活に密着した題材を扱った問題が多いので、昔の人の暮らしやその使っていたことばについてよくわかり、算数だけではなく、国語・社会の学習にもつながります。今とは違う問題の解き方を通して、当時の人々の知恵の豊かさ、発想の柔軟さを知ることもできます。
 問題は江戸時代に刊行された算術書から取り上げられていますが、現代風にアレンジしているのでわかりやすく、ことばの説明もていねいです。またすべての漢字にルビが付いているので、低学年の生徒でも読めます。イラストや図が多いので、算数が苦手な人も取り組みやすいと思います。大人が読んでも興味をひかれますし、「親子で楽しむ」とあるように、親子で一緒に読むと、楽しさがより膨らむと思います。

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