受験ライフをサポートする 進学情報誌 さぴあ

さぴあは、進学教室サピックス小学部が発行し、内部生に配布している月刊誌です。

Booksコーナー

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2021年3月のBooks

 世の中の動きや社会のしくみは、小学生でも知っておきたいものです。でもニュースや新聞記事は難しく感じる場合もあるかもしれません。そんなときにお薦めなのが、社会問題を扱った物語です。今月紹介する『すし屋のすてきな春原さん』はSDGs(持続可能な開発目標)について、『ガリガリ君ができるまで』は新商品の開発について、実際はどうなのかを、一つの物語を通じて教えてくれます。お話としても楽しめる、こうした本を利用して、社会にも目を向けてみませんか。

『カラスのいいぶん 人と生きることをえらんだ鳥

  • 嶋田泰子=著

  • 岡本順=絵

  • 童心社=刊

  • 定価=1,200円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

嫌われものだけど やるときはやる できるやつなのだ

注目の一冊

 ゴミ置き場でゴミ袋をあさったり、突然飛んできて人が手にしている食べ物をかっさらったり。カラスにはあまり良いイメージがありません。著者も、ゴミ置き場に来たカラスが、いくら追い払っても居座ろうとするので腹を立てていました。ところがあることをきっかけに、カラスの見方が変わります。それは「卵泥棒事件」です。近所の人と共同で注文した卵が、玄関前の置き場からなくなるというできごとが、毎週のように続いたのです。最初は、まさかカラスが犯人だとは思いませんでした。
 都会で懸命に生きるハシブトガラスの姿を、実生活のなかからレポートします。著者にとっては腹立たしい敵だったはずのハシブトガラス。でも気になって観察するうちに、生態を語る口調が誇らしげになっていき、最後は完全にカラスの味方になっています。それだけ著者自身が、「カラスがいかに賢く、いかに人間をよく見ているかに驚かされた」ということがわかります。鳥の解説書とは違い、著者はカラスの専門家ではありません。それだけに読む人は同じ目線でカラスを観察できます。たとえばカラスと思わず目が合ってしまった場面など、自分がカラスに遭遇したかのようにリアルに感じられるのです。
 カラスに限らず、身近な生き物を観察するのに役立つ一冊です。ふだんの生活のなかで不思議なことがあっても、気づかずに通り過ぎることは多いもの。物事を少しだけよく見るようにすれば、「あれ?いつもと違う、おかしいな」と立ち止まることがあるはずです。そんな気づきの大切さも教えてくれます。

『おにの おふろや』

  • 苅田澄子=作

  • りとうようい=絵

  • 鈴木出版=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

生まれて初めての お風呂屋さんは どきどきしっぱなし

 家のお風呂が壊れたので、そうたはじいちゃんとお風呂屋さんに行きます。お風呂屋さんは初めてなので楽しみです。お風呂屋さんの名前は「おにの湯」。その名のとおり、服を脱いで中に入ると、洗い場にも湯船にも赤鬼がたくさんいました。そうたはびっくりですが、でもじいちゃんは平気な顔で、赤鬼とおしゃべりを始めるのでした。
 ページからはみ出しそうな勢いで、たくさんの赤鬼たちが登場します。生まれて初めてのお風呂屋さんで、怖そうな鬼たちに囲まれたそうたは、大丈夫なのでしょうか。お風呂の湯気と真っ赤にほてった鬼たちの体。寒い夜に読めば、見ているだけで温まってきそうな絵本です。

『ぼくはケンちゃん』

  • はしもとえつよ=作

  • 偕成社=刊

  • 定価=1,300円+税

  • 対象:幼児向け・小学校低学年向け

腹話術のお人形、 ケンちゃんが 悪党相手に大活躍!

 ケンちゃんは腹話術のお人形。ゴネットさんと一緒に旅をしています。「ケンちゃん、ごあいさつは?」。ゴネットさんが言うと、ケンちゃんは口をぱくぱく、目をきょろきょろさせて「みなさん、こんにちバア」。お客さんは大笑いです。2人はいつでもどこでも一緒なのです。ところがある朝、ゴネットさんが起きると、隣にいるはずのケンちゃんがいませんでした。
 怖くないようで怖いような、口をがばっと開けたケンちゃんの表情が迫力満点です。ゴネットさんにとってケンちゃんは、血の通った相棒と同じ。「ケンちゃんとわたしは、いっしんどうたいなんだぞ!」というゴネットさんの叫びとともに、2人が悪に立ち向かいます。

『トップラン』

  • つげみさお=作

  • 森川泉=絵

  • 国土社=刊

  • 定価=1,400円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

このトップランは そこらの運動靴とは違う 奇跡の一足なのだ!

 航平がどうしてもほしいもの、それは小学生の間で大人気の運動靴、トップランです。走るのが苦手な航平は、トップランをはけば速く走れる気がしたのです。両親に必死に頼み、ついに夏休みに走る練習をがんばれば買ってもいいと言われた航平。張り切って早朝ランニングを始めましたが…。
 早朝ランニングでの新しい出会いを通じて、自分の世界を広げた航平が、両親や姉、弟の愛情のなかで成長していく姿を描きます。「さあ風を切って大地をかけろ。かけぬけたその先で、新しい自分と出会えるはず。きみの明日へ、トップラン」。新しいトップランのコマーシャルコピーそのままに、心優しい航平少年が新しい自分に向かって走り抜けます。

おはなしSDGs ジェンダー平等を実現しよう すし屋のすてきな春原すのはらさん』

  • 戸森しるこ=作

  • しんやゆう子=絵

  • 講談社=刊

  • 定価=1,350円+税

  • 対象:小学校中学年向け・小学校高学年向け

女だから、男だから ○○にはなれないの? 物語で知るSDGs

 ある日、5年生の伝はお父さんと「寿司春」というお店に行きました。店主の春原さんという女の人は、おすしを握るだけでなく、魚についてのおもしろい話も聞かせてくれました。伝はそれまで女性のすし職人を見たことがありませんでした。「なぜ男の人ばかりだと思う?」。お父さんの問い掛けに考え込む伝でした。
 物語を通じてSDGs(持続可能な開発目標)を知るシリーズ「おはなしSDGs」の一冊です。テーマは「ジェンダー平等を実現しよう」。性別を理由に夢をあきらめてしまっている人が少なくない現状について考えていきます。このシリーズにはほかに貧困、環境、エネルギーなどのテーマを扱ったものがあり、物語を通してSDGsへの理解を深めます。

『エカシの森と子馬のポンコ』

  • 加藤多一=作

  • 大野八生=絵

  • ポプラ社=刊

  • 定価=1,600円+税

  • 対象:小学校高学年向け

めぐる季節のなかで 悩みながらポンコは 大人になっていく

 ポンコは北海道の乳牛牧場で生まれた馬の女の子。牧場が嫌いで逃げ出し、森で生きています。ポンコがいちばん好きな場所は、大きな川と小さな川が出合うところ。朝の光が射すときに、いつもここに来るのです。でも今日はいつもと違って、日の光も川の水も元気がありません。「何か変だな」ポンコは森の長老である、ハルニレの木のエカシに聞いてみることにしました。
 「自由な森を離れたくない。でもからだがどこかへ行きたがっている」。そんなことを感じ始めた子馬のポンコに、エカシや森の生き物たちが大人になることを教えてくれます。北海道の大自然を舞台に、めぐる季節のなかで成長していくポンコの姿を詩情豊かに描きます。

『ガリガリ君ができるまで』

  • 岩貞るみこ=文

  • 黒須高嶺=絵

  • 講談社=刊

  • 定価=1,400円+税

好きなことをとことん 突き詰めてみれば、 そこから夢が生まれることもある


巣鴨校 校舎責任者
社会科副教科責任者

 主人公は赤城乳業の商品開発部で働くナナミ。ナナミは幼いとき、祖母に買ってもらって食べて以来、アイス菓子のガリガリ君が大好きになり、自分で新商品を作りたいと赤城乳業に入社。失敗と苦労を重ねて、自分が考えた梅ジュース味のガリガリ君を世に送り出します。そこまでの物語です。
 梅ジュース味の原点にあるのは、祖母が昔作ってくれた梅ジュースです。その味を思い出しながら、みんなを笑顔にするガリガリ君を作ることを目標に、ナナミはがんばります。ある日、試作品の味見をしてくれた先輩から「酸味を足したほうがいい」と言われたナナミは、「先輩が言うならやってみます」と答えます。でも先輩は言います。「言われたからやるのではなく、自分で考えて納得したものを作りなさい。自分が作った味だと胸を張って言えるものを作りなさい」
 自分が作った味だと胸を張って言う。それは自分に目標があってこそできることです。最近は「夢は何なの?」と聞かれても、はっきり答えられる子が少なくなっているような気がします。大きな夢でなくてもいいのです。自分の好きなもの、得意なものを見つけたらとことん突き詰める。ナナミのように、そこから夢や目標が生まれることもあります。
 勉強をしていると、苦手なものを得意にしようと考えます。確かに苦手なものをがんばって克服することは大切ですが、そればかりに目を向けすぎず、好きなものに没頭することも大切だと思います。また、主人公が勤めるのは、失敗を恐れずに挑戦させてくれる会社です。言われるままに動くのではなく、試行錯誤して失敗を重ねたからこそ、ナナミは夢が実現できました。そういう姿勢を忘れずに、何事にもチャレンジしていきたいものですね。
 とても読みやすく、日々の生活において、勉強において、ヒントとなる大切なことを子どもにも大人にも教えてくれる本です。ガリガリ君の当たり棒はたくさんは入れられないそうですが、ガリガリ君で当たり棒は出なくても、この本は当たりです。

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